第193話 ぐんぐん進め空の旅
中国は広い!!
山にぶつからないようにちょこちょこ停止してるのだが、日本の十倍以上の回数が必要かも知れない。
ちょっと慎重過ぎるか……?
いやいや。
生死が掛かってるのに大胆に行く意味が分からない。
ということで、何十回も停止しながらようやく中国を横断したのだった。
いやー。
全土がダンジョン化してるねこれ!!
これだけの大国がまるごとダンジョンに落とされてるの、やばくない?
迷宮省に送付した枚数がかなりの数になってるんだけど。
向こうからも、「な、なんだこれはー!!」みたいな連絡が来てる。
そして中国を抜ける頃合い。
なんか空を飛んでくる人がいる。
なんだなんだ!
人って着物みたいなのを着たままで飛べるのか!
「そこのお方ー!」
「はーいー」
「わしのような天仙か、あるいは魔法使いではないかとお見受けする。その電子機器……もしや配信者?」
「いかにもそうですー。仙人でしたか」
「ああ、その通り」
見た目はおじいちゃんなのだが、肌がつやつやしてるし声にも張りがある。
仙人って本当にいたんだなあ。
崑崙山の仙人の、普賢真人さん。
中国がこういう信仰的なものを重んじなくなった結果、神秘の力が薄れたと。
それで崑崙山はいわゆるファンタジー世界みたいなところに移動して、ゆったりと暮らしてたらしいのだが……。
覗きにやって来たら国そのものがなくなっていたわけだ。
「まさかこんな侵略が行われていたとは……。ほんの三十年ほどの間に」
「ちょうど三十年前くらいにダンジョン化が始まったんですよー」
「な、なんたることー。今や世界の神秘度は我らが地を闊歩していた頃に等しい。このような世界で神秘を失えばどうなるか……この国が体現してしまうとはな……」
普賢真人が悲しそうだ。
「一応うちの国のそういう部署に連絡したんで、遠からず助けに来ると思いますよー」
「ほう? 大和の国か。かの国は未だに神秘を捨てることなく存在していたのだな……。頼むぞ。今やこの国を覆う魔性の存在は、我ら仙人といえど手出しが困難な次元に達している……」
「そんなに!」
貴重なお話を聞けてしまった。
今回の話はあちこちの仙郷に共有し、みんなで若手の仙人を派遣して人間と共闘、中国を取り戻す方針で動くそうだ。
頑張ってほしい!
ってことで普賢真人と別れたのだ。
なんか御札をもらった。
「お主の行く先に強い妖物の気配があるから、この札を使って回避せよ」
「ありがとー!」
これで古き魔女の護符と合わせて、身を守る道具が二枚だ。
心強い~!
『かなり強い力を持つ人でしたねー。人でありながら人を超越するなんて人、この世界にもいたんですねー! 魔女とは別のアプローチですかね』
フロータも興味深そう。
仙人の知り合いができちゃったな。
ちなみにこの人、日本だと普賢菩薩とも呼ばれる事があるんだとか。
偉い人だなあ。
スパイスも聞いたことあるぞ。
こうして中国からモンゴル上空へ。
もう山を気にする必要がない!
ステップから砂漠に掛けてを、一気に飛翔したぞ!
もうモンゴルも普通の都市になってて、遊牧民~ってイメージじゃないんだねえ。
モンゴルを抜けるといよいよ中央アジア。
山が多いぞー!!
小刻みに止まりながら移動する。
「なんだかんだでもう三時間も飛んでるよ! お弁当にしよう……」
空中で停止し、持ってきたおにぎりなどを食べるのだ。
お茶うまーい。
『三時間でここまで来れたっていうのはフライトの威力ですからね! 飛行機なら迂回したり気流に乗ったりで一日掛かりますし』
「それはほんとにね! おー、なんか山登りしてる人に見つかった。やっほー!」
スパイスが手を振ったら、向こうも手を振り返してきた。
山でみた幻か何かだと思われているかも知れない。
「スパイスはこんな風に移動できてるけどさ、ウィンディは大丈夫かな? いや、アメリカだからこっちよりは全然マシかあ」
『飛ぶことに掛けては、スノーホワイトは私に並ぶ専門家ですからね! 性格はあれですけど、実力は確かです!』
『空中戦をやるとフロータも負けるでやんすからね』
『負けてませんよムキーッ!!』
空中で暴れない!
どうやらウィンディは心配いらないということが分かり、一安心。
お弁当を終えて、スパイスはまた移動を開始するのだった。
なにせ、地球を半周だからね!
そりゃあ時間も掛かるよ!
ジグザグに移動し続ける。
山脈を回避して、なるべく町の上空を飛ぶ。
多分、ちょこちょこフライトレーダーに発見されてると思うんだけど、飛び始めた瞬間に見失うと思うんで全く迎撃されない。
「そう言えばかれこれ4時間半飛んでるのに、ずっと朝だなあ」
『太陽と同じような進行方向ですからね! その土地の時間が変わってないどころか、むしろ巻き戻ってますよ!』
「そっかー! そう言えば太陽が出発したときより低いところにいる!」
そろそろ、朝から明け方に変わりそう。
時間感覚がおかしくなる~。
『主様、中央アジアを抜けたでやんすよー』
「えー、ほんと!? 思ったより早かった!」
フロッピーと一緒に地図を確認していたメンタリス。
こういう仕事をしてくれるのはありがたいなー。
『ここから東欧でやんす』
『色彩の魔女の拠点近しですねえ。気をつけて下さい~』
『うおー! ここからバトルですよー!!』
『んん~! うでがぁ鳴るぜぇい!!』
一気に騒ぎ出す魔導書たちなのだった。
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