第191話 二月末は旅立ちの準備だ
二月の大きなイベントもあらかた終わった。
大きなイベント……?
二月は休息の月だったのではないのか……?
まあいい。
心は休まった。
ということで、ショウゴとして必要な旅のアイテムを買い揃えていくのだ。
旅行用のキャリーバッグ……いやいや、恐らく移動はフライトで行くから必要ない。
ボストンバッグでいい。
向こうは寒いだろうから、上着を揃えて……。
あれ?
あっちに到着したら基本モードはスパイスにして、イグナイトで暖を取ればいいのでは?
『おーぅ! 俺がいればぁ! 南極だろうとぉ! ぽっかぽかだぞぉ!』
「心強い!!」
荷物にならない程度に暖かい服を持っていくことにした。
「先輩、無理しないでね。絶対に帰って来るッスよ!」
「もちろん! 二世誕生に立ち会うからな」
マシロのお腹をつんつんしたら、「でりかしー!」とか言われてポカポカされた。
ハハハ、かわいいかわいい。
さて、スパイスは一人旅で行くつもりだったのだが……。
フロータが何やら、別の魔導書とザッコで連絡を取り合っていたらしい。
『主様! 現地でウィンディが合流しますよ!』
「な、なんだってー!!」
「あの女がー!!」
ショックを受けるマシロ。
「いやいや、俺は女子大生に手を出さないから。というかマシロ一筋だから」
「信じるッス!!」
自分一筋だと言われて、マシロが目をキラキラさせている。
言葉に嘘はないのだが、なんというかマシロは騙されやすそうで心配である。
実家で過ごしてもらうのと、何かあったらシノさんにお願いするように言っておく。
これでマシロ関係はよし、と。
義実家には、長期の出張だと伝えておく。
実際にオーストリアで配信もするから、仕事で間違いはない。
なお、リアルタイムだと場所を特定されるので、動画配信中心かな……。
だがリアルタイムでやってあえて敵をおびき寄せる手もある。
魔導書全部を持っていっての総力戦だし、風と氷の魔導書も参戦だ。
「色彩の魔女って、ウィンディに俺を攻撃するよう言ってたやつ?」
『そうみたいですねー。彼女の中にたくさんの人格がいて、攻撃的な人格が幾つもウィンディをけしかけようとしてたみたいですね! めんどくさいやつですねー!』
「古き魔女も言ってたし、実体験したところでも、色彩の魔女は色々な意味でヤバイみたいだな!」
本当に慎重に行きたいところだ。
『精神方面はあっしが担当でやんすけど、色彩の魔導書はそういうバランスを考えないでデタラメに持ち主に影響を与えるでやんすからねー。あいつは何言ってるか全然分からない事が多くてー』
『いやー、こわいですよねー。私もちょっと色彩の魔導書は何言ってるか分からなくてー』
「ええー!? メンタリスはともかく、マリンナに意味わからないって言われるの怖いなあ」
そういう意味で、色彩の魔女も魔導書も要注意、と。
まあ、どうも今までのパターンを見ると、魔女は魔導書におかしくさせられてたりするので、犠牲者でもあるっぽいんだが!
さて、三月からはしばらく旅行して、旅行先から動画アップというのを告知だ。
ツブヤキックスと、メンバー限定掲示板と、ファン箱と……。
そして夜には、旅立つよ!
という報告配信だ。
「どーもー! こんちゃー!!」
※『どーもー!』『こんばんはー!』『今日もかわいい』
「かわいいありがとー! えー、みんなにスパイスは連絡があります! ツブヤキックスとか他で知った人も多いと思うんだけどー。三月はスパイス、旅行に行きます! 行き先は秘密だけど、旅先から動画を配信するので推理して当ててみてー!」
※『旅行!』『旅行楽しみー!』『動画で当てるのかー!』『楽しんできてね!』『魔女と戦いに行くのでは?』
「あっ」
※『あっ』『あっ』『あっ』『言うてはいかんことを』
「察しの良いお肉どもは……」
ちょっとお決まりっぽいやり取りをした後、スパイスの旅行は報告完了なのだ!
その後、もしかしたら配信にちょっとしたサプライズがあるかもということ。
それから向こうでグルメ配信などもする予定があることなどを告げた。
よしよし、完璧。
その後、朝にはウィンディからも連絡が来た。
ほうほう、向こうの大学はかなり忙しいと思ってたんだけど、旅行先についてレポートを提出することで教授によってはOKを貰えるわけか。
案外自由なんだなあ。
「向こうで一緒に遊びましょうって言ってる。色彩の魔女との対決なんだけどなあ! まあ、何事も楽しんでいくっていう考え方はありだと思う」
『スノーホワイトもいい娘を選びましたねー。ああいう前向きな人の方が魔女になっても呑まれませんからねー。でも、面白いことに魔導書を受け入れようとする人の殆どは陰の者で、魔導書の力に侵食されて化け物になるんですよねー』
「おお怖い怖い」
『主様は陽の者だったのでセーフだったんですかねー』
「まあ、スパイスになってすぐに自撮りをしちゃう程度には美少女化を受け入れていたね……。なんかこう、秘めていたものが解放されるようで大変気持ちいい」
『いいことですよー! 今後もその方向でガンガン行きましょう!』
「父親にならんとする男が、幼女に変身して喜んでていいものなのかどうか……」
『いいに決まってるじゃないですかー!』
フロータが能天気に言うのだった。
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