第184話 第2回に向けて、もみじスパイラル会議
「大型コラボ企画、第2回もみじスパイラルについてだけど……」
『今度はうちでやるのはどうですかー? みんなでパンを焼きましょ! 焼き上がるまでは時間かかるから、動画で撮るとかしてー』
「いいねー!」
『イラ、パン作ったことないよー。初挑戦だなこりゃ』
『イラちゃんは自分で作ったりするんですか?』
『イラはねー、ユーバーイーツが多いねー。自分で作る時は簡単なおつまみだねー』
おお、溢れ出すおじさんの気配!
『おつまみって何作ってるんですか?』
全く動じないもみじちゃん!
『ええとね、イラは基本炒め物かな。最近はモツとニラとキャベツをコチュジャンで味付けして炒めてる。ご飯にも合うよ』
「本格的に食べるメニューじゃん!」
意外!
家庭的幼女おじさんイラ!
「さて、いきなり会議の内容に決着がついてしまったわけだけどー」
『パンを焼くのはちょっと楽しみだなー。でももみじちゃん大丈夫? いきなりイラとかスパイスちゃんとか、おじさんが二人押しかけて親御さんは心配しない?』
『うちは平気ですけどー、色々心配はされるかも。世知辛い世の中ですよねー』
うんうんと頷く、スパイスとイラなのだ。
「やっぱりスパイスたちは変身したままで行くことにしよう!」
『そうしようそうしよう。ま、おじさんもピシッとした服着てりゃいいんだけどね、相手が女子高生ともなるとここは気を使いまくって使いすぎる事は無いからね』
「いい事言うなあ。スパイスも最近、高校生配信者グループにコーチングとかしてるけど、超気を使うよ!」
『あー、見てました! シェイクストライカーズですよねー! フレッシュでいいですよねー!』
「もみじちゃんも同い年でしょ?」
『そうですけどー! なんかこう、同い年にうちの先輩もいるんでー、あまり自分自身にもフレッシュ感が無いって言うかー』
『もみじちゃん、既にベテランの風格だもんな。というかもみじちゃんの先輩が世界最強の配信者だもんな』
『リアルで会うと全然全くそんな感じじゃないんですけどー』
「そうそう。普通のおとなしい娘だよねー」
『スパイスちゃんも会ったことあんの!? いいなー。イラはあれよ。同じ大罪能力者同士、会いたいなーとも思うけど、もしもゴボウで突かれたら浄化されるんじゃないかって恐怖もあるからねー』
『あー! でも大丈夫じゃないですかー? 傲慢のルシファーさんとか、怠惰のベルフェゴルさんとか、先輩と仲良くやってますしー』
大罪同士が仲良し!!
実に不思議な話なのだ。
というか、大罪の能力者はこれを克服することで、七つの美徳に反転するとスパイスは見てる。
表裏一体なんだね。
怠惰のベルフェゴルだけ忠実に大罪のアイデンティティを守ってるけど。
『ではそゆことで、うち、何のパンを作ったらいいかの計画を練ってますねー!』
「ほいほーい! よろしくー!」
『それじゃあおやすみなさーい!』
ザッコから抜けるもみじちゃん。
『いい娘だねー』
「だねー」
『イラも設定的には何千年も生きてるけど、それまで見てきた中ではトップクラスにいい娘だねー。聖人みたいにちょっと突き抜けちゃってる感じじゃなくて人間の域であそこまでいい娘は珍しいねー。守りたくなるお客さんの気持ちわかるー』
「やっぱ分かるよねえ。庇護欲を刺激される……」
基本、もみじスパイラルは女子高生+おじさん2なので、おじさんたちが保護者目線なのだ!
この組み合わせで生まれる奇跡のマリアージュを楽しんでもらいたい。
「生まれてくるならああいう娘がいいねー」
『おっ、家族計画順調?』
「順調順調。いやー、奥さんには世話を掛けちゃうよねえー」
とか言ってたら、配信部屋の扉がちょっと空いててマシロが覗いているではないか。
「うちの奥さんはとても優秀だけど、ちゃんとちょこちょこ労わないとねー」
フォローの言葉を口にしたら、マシロがニコニコしながら去って行った。
とても分かりやすい。
きっと今頃、魔導書にのろけていることだろう。
『奥さんの気配したねー』
「ザッコ越しでよく分かるねー」
『もうね、イラくらいになると気配でね。わかるからね。スパイスちゃんいきなり不自然な物言いしたからね。覗かれてたでしょー』
「さっすがベテラン! ってことで、第2回はこの内容で詰めとくねー。もみじちゃんから企画書来たらブラッシュアップして回すから。よろしくー」
『よろしくー。社会人スキルが高いスパイスちゃんがいてホント助かるわ~。それじゃおやすみー。て言っても、イラは朝までゲーム配信するけどね』
「うい、おやすみ~」
チェックしたら、本当にイラちゃんがゲーム配信を始めるところだった。
そろそろ日付が変わるぞ。
俺はスパイスから元の姿に戻り……。
「さて、三月からの欧州旅行の準備準備っと……」
今度は今後の情報収集のため、ネットの世界に潜るのだった。
いやあ、休むと決めた今月だけど、ダメだね!
全く休めてない!
いや、体力はどんどん回復しているのが分かるし、気力も充実している。
俺はきっと、配信の仕事をやりながら休むタイプなんだろうな。
配信者には、マイペース型と鉄人型がいて、多分自分は後者になるんじゃないかと思う。
配信の疲れを配信で癒やす。
これ。
企画書が完成するまでの間、別の配信をして休憩しよう。
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




