第173話 修行の結果、大決算!
※『それで結局、一月度の修行編はどうだったのさ』『スパイスちゃんは成長したのだろうか!』『やめて! スパイスちゃんはずっと小さいままでいて欲しいの!』
「お肉どもの話が紛糾してるぞー」
二月頭の雑談枠なのだ。
なんか一月、盛りだくさん過ぎてめちゃくちゃ長かった気がするなあ。
「そうだなー。割と成長したんじゃないかと思うよ? 魔法は使いまくってて、腕自体は上がってたっぽいし」
『主様の場合、横着して詠唱してなかったのが一番大きいですからね! 魔法の基礎構造を理解しないで使用しようというのがそもそもですね!』
「あー、フロータが説教してくる~!」
だが、確かにその通り、呪文詠唱をするようになってから、魔法のイメージが頭の中で広がるようになった。
無詠唱だと決まった形でしか発現しなかった魔法が、詠唱をするとその内容によって自由自在に変わることが分かったわけだ。
まあ、発現のしかたが一定である精神の魔法は変わらないんだけど。
無詠唱で威力変わらないんだから、そりゃあ横着して一番強力なの使うよなあと実感するスパイスなのだよ!
ま、スパイス的には精神支配とか好みじゃないので、ショックとドランクばっかり使ってるけど。
『あっしは初歩魔法だけで十分でやんすねえー。そこに精神魔法の深奥が詰まってるでやんすからねー』
言えてるー。
初歩魔法だけで本当に戦況を左右するくらい使えるもんなあ。
そもそも高度な魔法、相手の記憶をふっとばすやつとか洗脳するやつとか、思考を読むやつとか色々あるんだけど……。
スパイスの場合、一番戦わないといけない相手がほとんど格上なんで、通じないんだよねえ。
初歩魔法の方が魔法への抵抗がしづらい雑なやつなんで、効果が高い。
『ん今回はぁ、俺が大活躍だったなぁ』
『イグナイトはフレイヤ戦で観戦モードじゃありませんでしたかぁ?』
『うっ、それを言われるとぉぉぉぉ! 炎にぃ、炎はぁ、通用しないのだぁ。今の主の実力だとぉ!!』
「それってつまり、炎の魔法を極めれば炎で炎を征することができるってコト!?」
『んできるぅ!!』
「すげー!!」
※『炎で炎を駆逐できるってマ!?』『炎の魔法って一番普通っぽい感じなのに奥深かった!』『みたーい!』
『ふっふっふぅー! 主よぉ、リスナーもこう言っているぅ』
「そっかあ、じゃあ極めるか、炎の魔法」
『んイェーッス!!』
『私は最上位の魔法の一つがアンロックされましたからねぇ~』
「マリンナのそれはさ、なんか水のモンスターだった人がリスナーになって、眷属パワーを借りてる感じじゃない? 一発でスパイスぶっ倒れるし!」
『それはもう、主様の実力が全然足りてませんからねぇ』
でもボルテックスはすごかった!
フレイヤを一撃死させたもんなー。
「じゃあ、スパイスはこれからも要特訓ということで……」
『総括すると、魔法を使い始めて1年半の割には目覚ましい成長をしていると思いますよ! これまでは奥行きを増していく成長だったのが、今月からは容量を広げて魔法そのものを理解する成長に変わってますからねー。そして!! おめでたいお知らせがあります!』
「なんだなんだ」
※『フロータちゃんからのお知らせだぞ!』『スパイスちゃんも知らないの草』『なんだと言うんだ!』
『フライトの魔法が!! アンロックされました! これから主様は自在に飛べまぁす!! まあ、レビテーションがフライトに置き換わったわけですけど』
「な、なんだってー!! ついに飛べるのかー!」
というか、なかなかフライトが出てこなかった理由って、浮遊の魔法を使う実力が一定にならないと、レビテーションの進化条件を満たさなかったみたいな事だったのか。
奥深いぜ、魔導書。
「ほんじゃあ! ここからはフライト実践配信になりまぁす! ついてこれるか、スパイスのスピードに」
※『ぶっつけ本番で!?』『いきなりやるの草なんだ』『スパイスちゃん気をつけるのよ!』
まずは一端映像を切って、音声のみに。
「身バレしないように異世界に移動しまーす! あっ、シノさんどーもー」
「スパイスさん、これから異世界ですのん? でしたらこれ、持ってってくださいな」
「なあにこれ」
「異世界から電波で通信できる目処が立ちましたんで、携帯型アンテナなんです。これでこちらから電話を掛けることができますー」
「ほえー」
※『久々のシノちゃん!』『映像出してくれー!!』
「出したらスパイスの家まで見えちゃうだろー! じゃあ異世界に通じる部屋の中でだけ」
パッとアップで映るシノ。
「みなさーん! お久しぶりです~。シノです~!」
※『うおおおおおシノちゃああああああん』『狐耳巫女幼女~!!』『スパイスちゃんの配信は色々な幼女が出てくるから退屈しないぜ』
レアキャラだから凄い人気だな!
ここでスパイスは、無情にも映像をまたストップだぞ。
「はいはい、ここでシノさんの出番は終わり! 行くぞ行くぞ」
※『ええ~』『そのうちコラボとかしてください』
「シノさんは一般人だからね、あくまで。常識的な範囲でね……! ということで! 異世界に降り立ったのでまた映像を戻します!」
異世界はなんぼ見られてもいいですからね。
「じゃあ、ステータス画面を展開するね。これは実は工夫して、みんなにもある程度見えるようにしたんだよね。フロータとフロッピーがこういう技術を開発してくれました! 有能!」
※『すげー!』『うおっ! ほんとにゲームの成長システムみたいな画面になってる!』『スロット式なのね』『魔法を差し込んでいって使うのを決めると』
「そういうこと! おっと、ずっと差し込んでたレビテーションのスロットが、光り輝く新しい魔法に変わってますねー! これがフライト……!!」
※『傍目から分かる、明らかなレア魔法!!』『魔法もレアリティあるんだ……』
「あるよー。これがマリンナのに切り替えると……。フォームチェーンジ! アクアスパイス!」
パッと水着のスパイスになる。
※『真冬のアクアスパイスは体にいい』『ありがとう、ありがとう』『不意打ちうれしい』
「注目するのはそっちじゃなーい! ほらほら、ボルテックスのスロット見て。虹色の光沢があるでしょ。これがSSR。最高レベルの魔法ね。フライトは金色だったからSRかなあ」
※マルチョウ『段々カードゲームとかソシャゲめいてきた……』ランプ『URもあるのかな……?』
『ありまあす!!』
何故かカードゲームのレアリティ概念を理解していたフロータは元気に宣言するのだった。
あるのかあ。
さあさあ、それよりも、飛ぶぞ飛ぶぞ!!
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