第172話 風と氷の魔女、秋葉原を堪能する
「いっぱい買うわけ?」
「そうデスネー。あっちはそういうのへの偏見が凄いので持ち帰れないんデスよね。だからウインドウショッピングと食べ歩きデスネー」
「アメリカは窮屈だねえ」
「ソウなんデス! でも、メインストリームに乗ってればまあまあ暮らしやすいデスヨ? ただーし、お金がいりマス!」
話を聞いてると、ウィンディはいいとこのお嬢さんだよねえ。
あっちだと、同性同士で歩いてるだけで白眼視されるそうで。
だからスパイスと二人で歩くのが新鮮で楽しいらしい。
「ま、そっちは女子なら全然マシデスケドネ!」
「そっかー。おっ、富良野メロンパン! 食べよう食べよう!」
「イエー!」
二人でメロンパンをパクパク食べた。
むちゃくちゃメロンの味がする。
「甘くないデスケド、メロンの香りがとってもいいデスネー」
「甘いじゃん!?」
溶け切らない砂糖がジャリジャリした上に、さらに粉砂糖を振りかける国から来た女子だ。
甘味への厳しさが違う。
「ウィンディ、若いうちはいいけど、年を取ってくるとあんま砂糖ジャリジャリ食べてると太るよー」
「スポーツするし、ジムにも行くし、平気デース。それにワタシ、ジャンクなスイーツ大好きなのデ!」
強い!
ってことで、駅前のラジオ会館を見て回る。
たくさん買い込んでる外人さんが多いなあ。
「彼らはガッツがありマスネー! 偏見の目よりも、自分のラブを優先してマス!! 尊敬シマス!」
「ウィンディも気にしなくていいじゃん?」
「家柄があるノデ~」
この人、絶対にいいところのお嬢さんだぞ!!
「ねえ、ちょっとウィンディの向こうでの写真見せて?」
「面白くないデスヨ!」
「いいからいいから!」
見せてもらった。
やっぱり!!
パーティでセレブドレス着てる!!
名家のお嬢さんみたいだ。
ウィンディに似た、ちょっと年上の女性と一緒に写ってるのもある。
お姉さんがいて、あとは弟がいて、ご両親は健在と。
おばあさんが魔女なのに、その子どもはちゃんと名家を維持したんだなあ。
偉い。
『そもそも家柄を利用すれば容易に魔法の力を上げられるのに、どうしてあの女は頼らなかったんですかね?』
『先代はねー、性格がドブだったので旦那から離縁されたわけよ。私を手に入れてから色々愚痴を聞かせてくれたわ! で、離縁した旦那の孫がこのウィンディってわけ! 先代の血は混じってるけど、そこにプロテスタントのエクソシストの血が混じって化学変化を起こしたわけ! 正邪が合わさると最強ねーやっぱ!』
なるほどー、それで風と氷の魔女はカリフォルニアにいて、大罪と戦うことになったわけね!
それで負けたと。
『大罪のデーモン、色欲のマリリーヌとか言ってたけど、あれってアスモデウスでしょ? なりかけに負けるとか先代はちょっとね……研鑽と注意力が足りなかったわね……! 私の助言は受けないとか突っ張ってたから、それじゃあお好きにどうぞーってやったらチャーム掛けられてやられたからね! ウィンディは私がつきっきりで育てるわよ!!』
「ほうほう、それでスノーホワイトとウィンディは仲良しなんだねえ」
そんな話をしながら……人混みの中を歩き、ケバブを買ってもりもり食べております。
「いやー、混んでるねー! 海と空が解放されてから、外人さんがすごく増えた気がする!」
「そうデスネー。交通手段が安価になりマシタカラ。みんな一箇所に閉じ込められてたのが、ワーッと飛び出すようになってマスヨ! 私だってそうデス!」
「でもウィンディはファーストクラスとかで飛んでこれるでしょ?」
「できマスケドー。ワタシまだ学生なので、お金はそこまで自由にならないデスネー。投資で増やせってダディからは言われてマス」
「投資で!!」
名家の英才教育だ!
つくづく、こんな凄いところのお嬢さんが一人旅で日本に来たというのは凄い。
ボディガードとかつかなかったんだろうか。
「ワタシのフレンドにチャームの力が生えてきた子がいて、ボディガードを無力化してモライマシタ!」
「それ色欲の大罪の後継者~!」
「チナミニ、彼女も配信してマスヨー!」
「マジで!? 家帰ったら動画見よう! あ、マシロがジタバタするかも知れない」
色欲の大罪だもんねえ。
これ多分、大罪の力を宿したデーモンは倒されても、別の資格者のもとに力だけが移動するっぽいな。
それで悪い資格者はデーモン化して暴れるから倒されて、大罪の力とマッチングできた人ははづきっちやイラちゃんみたいな超人として存在できる的な。
「あっ! ふくろうカフェだって!! 行こう行こう!」
「行きマショウ!! うわーっ!! もふもふ!!」
大いにふくろうをもふもふし。
「あっ! シマリスカフェだ!! 行こう行こう!」
「行きマショウ!! ステイツのスクイールはもっと凶暴でデスネー」
「そうなんだ!」
シマリスにご飯をあげて癒やされたりなどした。
同人誌を売っている書店にも立ち寄り……。
「本当に同人誌とか買わなくていいの?」
「ここでチェックして電書でゲットしマース……!! そのためにジャパンのカード作ってマスカラ!!」
「うおー! 形に残らないものになら全力!!」
なお、ウィンディの趣味はBL系ではなく、NL……ノーマルラブの方向だった。
というか普通に男性向けを読むんです?
色欲の大罪になったご友人の影響で、こういう系統のを愛読?
ウィンディのダディー! 娘さんが色欲の影響を受けてますよー!!
途中で限定品のおもちゃを購入してほくほくしている八咫烏に遭遇したりもした。
「あれ? スパイスちゃんのお友達? どうもー、こんにちはー。ハロー・ハロー」
「オー! スパイスのフレンドデスカ? ウィンディデス~!」
「どもども。日本楽しんでねー」
「ヤタさん意外ー! 家近いの?」
「そうだよ。僕神田に住んでるから」
「ちかーい!」
神田って言うのは、秋葉原の隣の街ね。
今度遊びに行くか!
こうしてウィンディの秋葉原観光は終わり……。
彼女は楽しい思い出とともに帰途につくのだった。
「バーイ、スパイスー! とっても楽しかったデース!」
「ばいばーい! また遊びに来てねー!」
今度は観光オンリーで来るんだぞー!
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