第169話 宇宙から来た……スペースフレイヤ!
炎が形になって、こっちに向かって降りてくる。
これは……スパイスとウィンディがバチバチやり合ったのを見て目印にしたなー!
ダンジョンと現実世界の境界線をぶっ壊しながら、炎のカタマリが翼のように変化する。
そして大きく羽ばたくと、超加速した。
「うおー! 突っ込んでくるぞー!」
「彼女の運搬、担当します!」
ガードマスクが走ってきて、ウィンディを小脇に抱えた。
スパイスと二人で、ダンジョンの端までダーッシュ!
そうしたら、さっきまでいた場所にやつが着弾したのだった!
来たなあ、パワーアップした炎の魔女!
炎の魔導書を失いはしたが、多分、火の大魔将の眷属化とかをして新しい姿で生き延びたのだ。
物凄い爆発で瓦礫が吹っ飛び、明らかにヤバい成分を含んだ蒸気がもうもうと立ち込める。
その中で、人型? それに近い怪物が立ち上がるのが見えた。
※『やばいやばいやばい』『あれが炎の魔女?』『何も見えん!』『隕石みたいに降ってきたじゃん!』マルチョウ『ダンジョンの中じゃなかったら周囲の被害はとんでもないことになっていたな』
ほんとにね!
そしてダンジョンの壁にも亀裂が入り、今にも崩れそう。
こいつ、現実とダンジョンの垣根をぶっ壊して、スパイスの暮らす街に飛び出そうとしてるぞー!!
「ウワーッ! フレイヤとんでもないデース! あと下ろしてくだサーイ! 自分で走れマース!」
ガードマスクに抱えられて、パタパタ動くウィンディ。
戦闘経験が浅そうで即応できなさそうだったから、抱えて移動させてもらったぞ。
ガードマスクが心配そうにウィンディを下ろす。
中身は成人女性だからね!
心配いらないからね!
ということで三人で向かい合うのは、宇宙から戻ってきたフレイヤ!
「臭いスチームは……BAN! デス! 吹きつけろ風! 叩きつけろ風! あの臭いのをどっかやって! ブラストウィンド!!」
猛烈な風が吹いて、有毒っぽい蒸気をどこかにふっ飛ばしてしまった!
ここで、ついにフレイヤの姿があらわになる。
大きさが3mくらいになっていて、体のあちこちからオレンジ色の結晶が顔を出している。
基本全裸なんだけど、センシティブなところは炎が渦巻いてるし、結晶と炎が混じり合った翼がずっと揺らめき続けてるからエッチには感じないね!
これは健全!
※ランプ『うーんモンスター』特上ロース『私の中の男子があれはダメって言ってる!』おさなか『煮えちゃう~』『炎の魔女フレイヤだっけ? 宇宙から戻ってきたということは……スペースフレイヤだな!』
「それだーっ! 来たな、スペースフレイヤ!! パワーアップしたみたいだけど、スパイスだって強くなってるからなー! 今回は搦め手じゃなく、真っ向からやっつけてやる!」
『ぐるるるるる!! すぅぅぱぁぁいぃぃぃすぅぅぅぅ!!』
人間のものとは思えない叫びをあげるフレイヤ。
こえー!
「ほーん、あれがフレイヤデスかー。向こうとタッグを組んでスパイスと戦おうと思ってマシタけど……」
『ぐるるるるああああああああ!!』
「意思疎通が無理デスねー! ここは一時共闘しまショウ! ワタシ、ここで死ぬのいやデスし!」
「おっけー! そうなると思った! あとはガードマスク!」
「押忍!!」
ガードマスクが迷いなく前進する。
眼の前は瓦礫の山を蒸発させる化け物、スペースフレイヤだぞ。
だがこの男は、街を守るためなら絶対に躊躇しないのだ。
右手にナックルガード付きエアガン、左手にナックルパート。
「ここから先には一歩も進ません! 街は俺が守る!!」
※『うおおおおおおお!!』『ガードマスクーっ!!』『俺やっぱこの人好きだわ』『いけーっ!!』
スパイスの同接一万人近くの声を受けて、ガードマスクの姿が変化する。
黒をベースにして、ゴールドの差し色が入った豪華なヒーロースーツみたいな感じだ!
ジャケットの前が開き、マントみたいにたなびいたかと思ったら、その先から黄金の刃みたいなのがぞろぞろ生えてきた。
この男、声援を受けて自身が変化するんだな。
立派な才能じゃん。
「地上戦は任せたよガードマスク! スパイスは攻撃! ウィンディは援護お願い! 多分ウィンディの魔法だとまだあいつに届かないでしょ!」
「やってみなくちゃ分かりまセーン!! さむーい冬、来い! 空気も水も全部凍る! フリーズショット!」
氷の弾丸が撃ち放たれる!
だけど、これはフレイヤに届く前に蒸発してしまった。
あの周り何度あるんだー?
「届きまセーン!」
「ってことで、ガードマスクを援護してあげて! ああいうのはねー、大量の水で冷やすの! ここにスポドリがあります!!」
スパイスはスポドリの蓋を開けながら、レビテーションで飛び上がる。
これを追いかけて飛ぼうとしたスペースフレイヤ。
だけど、ガードマスクがダッシュで迫ってくる。
「うおおおおお!! 行かせんぞーっ!!」
走りながらのエアガン横撃ち!
BB弾は蒸発するけど……途中からそれが、フレイヤに届くようになる。
同接パワーと、後ろからウィンディが冷気を付与しているのだ!
『がおああああああ!! ぐるああああああ!!』
もう人間の言葉を忘れたかな!?
ガードマスクに向き直ったフレイヤが、炎の翼を叩きつけてきた。
「ぬおりゃああああ!!」
これをナックルで迎え撃つガードマスク!
無茶だー!
なので、ここにスパイスから援護だぞ!
「深遠なるものどものよ! 水的なものをガーッと吐き出せ! なんとかしろ! ウォーターガン!!」
ガードマスク周辺の地面がぬかるんだかと思うと、複数のマンマーがニュッと出てきた。
彼らが口から、物凄い勢いの水流を吐き出す。
これが炎の翼と激突し、勢いを大きく弱めた。
そこに、「どらあっ!!」ガードマスクの拳が炸裂!
炎の翼を跳ね飛ばした!
※『うおおおおお!』『総力戦!』『あちー!』『怪獣大決戦じゃん!』
ほんとにね!
スパイスはスパイスで、ガードマスクを援護したり、フレイヤに上空から水で攻撃しつつも魔法を準備しているぞ。
「マリンナ、でかいの行くぞー!」
『タイダルウェイブ了解!』
「察しがいいなー」
『こんな陸地の真ん中でタイダルウェイブを使えるなんて、嬉しくて仕方ないですからね~!』
『今回のバトルでは、私とマリンナじゃないと戦えないっぽいですから。本来は使わせませんけど特別ですよ特別!』
『どこでも使える超危険魔法があるフロータに言われたくありませえん』
さあて、この二冊を携えて、スペースフレイヤをやっつけてくれよう!
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




