第168話 二大魔法少女バトルだぞ
「おーし、ほんじゃ試合を開始しますか!!」
「やりまショー! ヤー!」
大いに盛り上がるスパイスとウィンディ。
コメント欄も沸く。
※『カワイイとカワイイのバトルだー!』『どっちを応援したらええんや!』『スパイスちゃん……いや、ウィンディちゃんもとてもカワイイ……』『ジャパニーズ幼女とアメリカン幼女の対決だな』ランプ『甲乙つけがたいが俺はスパイスちゃんを応援するぜ!』マルチョウ『今までこれほどまでに和やかで、華がある魔女戦があっただろうか』
盛り上がってる盛り上がってる。
ウィンディは早速魔法を詠唱しだしている。
英語なんだけど、ちゃんとフロッピーが字幕をつけてくれてるね、優秀!
「渦巻け、渦巻け、渦巻け! あいつの目を回してしまえ! ワールウィンド!」
猛烈なつむじ風が起こって、スパイスをくるくる回す。
「うわーっ! いきなりの攻撃! それに速いぞー! レビテーション!」
呪文を短縮してふわっと浮かび上がり、つむじ風の範囲から抜け出す。
「こっちも行くぞー! 地獄の公爵よ、蠢く地の底の灼熱よ、地を溶かし焼き焦がす! ファイアボール!」
使うのはファイアボールなんだけど、リスナーから募集したそれっぽい呪文を組み合わせ、新しいイマジネーションが宿る。
地面に炎の波を立てながら突き進む、マグマボールになったぞ!
「オウ! これは防がないとーっ! アイスバリア!」
ウィンディの前にパキパキと凍りついた壁が何枚も生まれる。
マグマボールはこれを三枚まで溶かしたところで、冷えて固まってしまった。
うーん、いい勝負だ。
技量的に同じくらいじゃないかな?
『主! 精神攻撃でやんすよ!!』
「それだ! 不可視の攻撃で行こう! うりゃ! 小石を投げつけてドランク!」
小石に魔法を詰めて投げた。
「そんなバレバレのに当たりマセン!」
風で弾かれてしまった!
そもそも、ウィンディは飛び上がったりジャンプしたり、動きが速い!
これは触れたりするのが難しいぞ。
若さのパワーだ!
「すげー」
ガードマスクが戦いに見入っている。
自分ごとじゃないと、冷静に見てられるもんね。
参考にして欲しい。
今のガードマスクは野生のままみたいなやり方してるからね。
例えば相手を掴んで殴るにしても、なんでそのやり方なの? みたいなのを自分で理解して昇華してもらいたいものです。
スパイスが瓦礫を次々飛ばす!
これをウィンディが風で撃ち落とす!
ウィンディが氷の雨を降らせる!
これをスパイスが新魔法ファイアウォールで防ぐ!
『ん俺の使われる頻度が高くて満足だぁ』
『なんだかんだでイグナイトは使いやすいですからねー。戦闘用魔法としては一般的ですし』
『その分ん、汎用性が無いからなぁ』
『なぁに贅沢言ってるんですか』
戦闘中も、フロータとイグナイトがわちゃわちゃ言っている。
だが、スパイスは隠し玉を用意してあるのだ!
「分かってるねマリンナ?」
『はぁい! 海の成分に近づけた塩水があれば、私は力を発揮できますよ~!』
「声が大きい! 声が!」
『はーい、そっと力を発揮しまぁす』
ウィンディの魔法攻撃が止んだタイミングで……。
「深淵より湧きいでよ! 生命の母たる海の力よ! 今眷属を生み出し降臨させん! コール・シーモンスター!」
※おさかな『やった! 詠唱採用ありがとうございます!』『本場のマンマーの詠唱かあ!』『これは効果がありそうだ』『しかも新魔法でしょ?』
「オー! 足元を満たすのは……塩水!? そこからモンスターが出てきマース! なんて……なんて……カワイイ~!」
そう!!
これは海のモンスターを眷属として作り出す魔法。
だけどスパイスの実力だと、くるぶしくらいのサイズの頭でっかちな半魚人をちょこちょこ作るのがせいぜいなのだ!
SD半魚人が出現し、よたよた歩いてぽてっと転ぶ。
あるいは水の中をチャプチャプ泳ぎ回って、頭がつっかえてバタバタする。
「ああ~! こ、これでは戦いに集中できまセーン!」
「隙ありー! ドランク!」
ここでスパイスが放った、ドランクを仕込んだSD半魚人!
思わずキャッチしてしまったウィンディは、へなへなーっと崩れ落ちた。
「ああ~。世界が回ってマース……でもカワイイデスね~」
ドランクがかかってると分かっても、SD半魚人を抱っこするウィンディなのだった。
「女の子はカワイイものに弱い……。この脆弱性を突いたスパイスの切り札だぞ」
※『さすがおじさん老獪な戦術!!』マルチョウ『見事と言う他無い……。無傷で無力化してみせるとは……』特上ロース『ところでここ、他にもモンスターいましたよね?』
「モンスターいるね! ガードマスク! でばーん!!」
「うおーっ!!」
スパイスとウィンディの戦いの均衡が崩れたのを見たモンスターが動き出した。
今まで、魔法の応酬を前にまごまごしてたくせにー!
勝ち馬に乗るつもりだな?
だが、立ちふさがるガードマスク!
彼のやたら頑丈そうナックルガード付きエアガンと、左手のコーラル社長謹製ナックル。
二刀流で立ち向かうのだ!
「うおおおおお!! このデパートは! 昭和47年に開業し、平成27年まで営業していたこの街のシンボル的建物の一つ! 地元の人々が慣れ親しみ、幼少期の思い出でもあったここを! ダンジョンにさせてなるものか! デパートよ、今までありがとう!!」
なんか思い出話をしつつ、襲ってくる懐かしの乗り物モンスターをナックルで倒していくガードマスクなのだった。
地元密着型~。
※『相変わらず地元愛が凄いな』『戦いに物語を感じる男だ』『観光案内にもなってるよね』
スパイスのリスナー、同接一万人近くが見守るガードマスク!
なんか全身が本当のヒーロースーツっぽく変化してるんだが?
この男、リスナーの声援とかを浴びると分かりやすくパワーアップするなあ。
「オゥ~、き、来ますヨ~」
ドランクでへなへなになったウィンディが、空を指さしている。
来るって、あいつが?
あいつだろうねー!
※『鳩行為ごめん! はづきっちが火の大魔将を倒したって!!』
リスナーの一人のコメントの直後、空の一角が赤く輝いた。
そこは、取り壊し中デパートなダンジョンの、異世界と現実がちょうど混じり合った辺りの空だ。
赤い色は、渦を巻いている。
それがブワッと広がった。
翼だ。
来たぞ来たぞ。
復活の炎の魔女、フレイヤなのだ!
「おらー、起きろー。シャキッとしろー」
ウィンディから半魚人を取って、頬をちっちゃくぺちぺちした。
「アウー」
「ドランクは心因性なんだからな! 実は全くアルコールとか入ってないので健全!」
「言われてみればそんな気がしてキマシタ」
シャキッとするウィンディなのだった。
さあ、フレイヤを出迎えるぞ!
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




