第166話 決戦の日は明日!
明日決戦なので、今日はどこかの宿に泊まってもらおうということになった。
近くの神社の境内で元の姿に戻った俺達。
ウィンディの今日の宿をどうするかなーという話をする。
「ここはあまり観光地になってないから、宿がないんだ」
「オー! それはとても困りマス! スパイスの家に泊めてもらえマスか?」
「奥さんがヘラるからダメな……! ええと、二駅戻ればビジネスホテルがあるから、そこにしよう」
「了解デス! 案内してもらっていいデスか?」
「もちろん」
そういうことになった。
マシロにはLUINEで連絡しておく。
ホテルまで外人さんを送っていく……と言ったら、なんか泣き顔のアイコンが返ってきた。
浮気しないから!!
電車で戻り、ビジネスホテルを案内し。
「本当に近くに食べるところ無いデスネー。でも安心デス。私、コンビニのご飯大好き! アイラブ!」
「それは良かった……! じゃあまた明日。決戦場所は探しておくから」
「サンキュー!」
ウィンディと別れたのだった。
調子が狂うなあ。
『現代っ子の魔女はああいうドライな感じなのかも知れません』
「そうかなあ。そうかも。俺と彼女しかいないわけだし、二人ともまあまあドライだもんね。俺は一応、ばあちゃんの敵討ちをしてるけど」
『マスターは積極的に海外に行って魔女たちを討ち取ろうとはしていないですよね?』
「それはそう。こっちも生活があるし」
電車で戻って、駅前でマシロと合流した。
「帰ってきて良かったー」
「何を心配してるんだ。俺は浮気はしないからな! 余計な恋愛関係とか肉体関係とか作ったらめんどくさいだけだろ。配信者活動にも関わる……。マシロと合法的に夫婦になっているので、これ以上の関係性はいらないのだ」
「理屈っぽい! でも安心したッスー」
「ところで彼女、魔女だったから明日決戦するぞ」
「はひっ!?」
びっくりのし通しでマシロが忙しいな。
こうして自宅へ帰還。
魔導書たちに今日あったことを話すのだ。
「風と氷の魔女が代替わりしていて、若い女の子になっていたんだ」
『なんですってー! 一番老獪そうな魔女だったのですが、まさかダンジョン禍で死んでいたとはびっくりですねー』
『ん人間相手は強いがぁ、災害相手はどうにもならなかったんだろう! その点、俺の先代のフレイヤは凄いぞぉ。なんかあいつがどんどん近づいてくる気配がして、俺は戦々恐々だぁ。絶対人間じゃなくなってるぅ。ちなみにぃ、あらゆる炎の魔法は通じないからなぁ』
「イグナイトが怖いこと言ってる!」
とりあえず、決戦の事についてはガードマスクにも伝えておこう。
彼も戦力になるだろうからな。
いや、ウィンディ相手じゃなく、フレイヤが乱入してきた時にね。
そしてツブヤキックス上でも告知を出しておく。
『決戦!! スパイスVS風と氷の魔女! ドキッ! シークレットゲストもあるかも!!』
ウィンディに許可をもらって、シルエットを撮影してきた。
アリスドレスの女の子らしいことが伺えるだろう。
すぐに、フォロワーたちからの反応がついた。
『魔法少女VS魔法少女!?』『今度の相手は海外からか!!』『風と氷の魔法少女、何者なんだ……』『可愛ければOKです!』『シークレットゲスト……?』『ろくでもない予感がするぞ!』
おおむね好意的な反応だ。
恐らく明日の決戦は、適当なダンジョンを舞台に行われると思う。
で、ダンジョンは異世界に直結してるので……。
スパイス目当てにフレイヤも来るかもなあ。
こういう厄介なことは一度に起こったりするんだ。
ちなみに、ウィンディにLUINEをインストールさせてアドレス交換してある。
アメリカの女子大生が、一人で宿泊してるわけだから心配ではないか。
おっ、おにぎりを色々な種類買ってきておにぎりパーティしてる。
楽しんでいるようで何より。
「絶対悪人じゃないと思うんだけど」
『スノーホワイトは使い手の人格を考えませんからねー。あいつはなんでもマウントを取ることが生き甲斐なんですよ。でも、あいつが自由に出てきてぺちゃくちゃ喋ってるということは、まあまあその新しい魔女と仲良しなんじゃないですか?』
「なるほどなあ。フロータの分析が冴えてる。じゃあ古き魔女にも聞いてみようか」
『彼女の存在は知っていましたよ』
「知ってたって返ってきた!!」
『さすがの情報網でやんすねえ……。完全に魔女化して肉体の老化を停止していたら、かなり強力な魔女になれてたと思うでやんすよー』
古き魔女、メンタリスに認められてる。
で、古き魔女の情報によると、ウィンディは風と氷の魔女の孫。
カリフォルニアが色欲の大罪から解放された後、葬儀のためにやって来たら遺品である魔導書とウマが合って魔女になった。
俺がスパイスになる、ほんのちょっぴりだけ前の話だ。
ほぼ同時に魔女になったと言っていい。
鼻の差で俺が最も新しき魔女になったようである。
ある意味では、魔女としての同級生。
『先代の風と氷の魔女からは、何一つ教わってないようですね。ですからフラットな立場であなたに戦いを挑んでくるのでしょう。お互いの実力確認の意味でも、勝負を楽しんできて下さい。警戒すべきは、あなたがたの戦いを目印に彼女が戻って来ることでしょうから』
古き魔女の性格が表れた、穏やかで長文な返信だ!
「フレイヤの存在を感知してるっぽい。さすが古き魔女……」
『多分、魔女たちはみんな分かっているんじゃないでしょうか?』
マリンナが首を傾げるみたいに、斜めになった。
『火の大魔将とやらが近づいてきたことで、エーテル宇宙に浮かんでいたフレイヤが復活したんでしょう? あの魔女は先代の海の魔女みたいに、人間辞めてましたから』
半モンスター化してたのが、火の大魔将の影響で完全モンスター化したと。
まあ、スパイスもあの頃より全然強くなってるし、再戦してやろうじゃないの。
やる気満々の俺なのだった。
おっと、ガードマスクにも連絡をしておかないとな……。
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