第159話 次なる修行はコラボしながらなのだ
「ということで、今月来月は修行月間かなーと」
『ほほーん、いいじゃないの』
ザッコで話している先にいるのは、イラちゃん。
年齢も近いくらいのおじさんなので、ウマが合うのだ。
『それでコラボとかやってくんでしょ? イラともコラボする? うちもねー、個人勢長いからマンネリ打破のために色々やろうとしてんだよね』
「いいねー。じゃあお願いしちゃおうかな!」
「うちの旦那さんがまたスパイスちゃんの姿で、おじさん幼女とおしゃべりしてる」
『後ろの声、奥さん? どうもー奥さん! スパイスちゃんとコラボさせてもらいますー』
「あっ、どうもどうも」
姿が見えないザッコに向けて、ペコペコするマシロなのだった。
ざっくばらんなんだよなあ、イラちゃん。
口調はおじさんなのに、声色がとてもかわいらしい女の子なので脳が混乱する。
古参のファンは、このギャップが堪らないらしい。
奥深い世界かもしれない。
「じゃ、コラボの日は明後日でー」
『おけーい』
決まった。
リアルでイラちゃんと会うのは初めてだな。
素の姿はどんなおじさんなのか……。
そう思って、コラボ当日がやって来たのだった。
本日のダンジョンは、単線になったはずの路線に廃線された線路が出現するというもの。
その線路の先がダンジョンなのだ。
案内役として、乗り鉄配信者のスドーさんが来てくれています。
「どーもどーも、スドーさん!」
「スパイスさん、その節はお世話になりました!」
乗り鉄配信者のスドーさんは、この間のスタンピード騒ぎの時に山奥まで電車で突っ走って戦ってくれた人だ。
彼の能力は現代魔法で、その時間、そこを走っている電車を召喚獣みたいに呼び出して戦わせるもの。
ただし、鉄道のダイヤに戦闘力を大きく左右されるのだ!
まさに、乗り鉄じゃないと使いこなせないね。
なので該当の電車に乗ってしまい、召喚をしやすくしているんだそうだ。
なお、乗ることの大半は趣味。
休日のほぼ全てを電車に乗って過ごしているんだそうだ。
見た目は誠実そうな男性。
カジュアルな感じのスーツを着ていますねえ。
なお今回、スパイスはもう既に現場入りした時点からスパイスの姿だよ!
これは駅員さんたちや、NRのスタッフも関わるからなのです。
レクチャーを受けるところは動画で撮影して、後々編集しておくのだ。
「こんにちはスパイスちゃん。鉄道について説明していくよ」
あらかじめスパイスが用意した脚本を、棒読みで読み上げてくれるNRのスタッフさん!
ちょっとかわいらしい感じの女性の方だ。
色々教えてもらっちゃった。
撮影が終わり、スタッフさんがいそいそと色紙を持ってくる。
「あの、スパイスちゃん、スドーさん、サインを頂いても……」
「いいよー!」
「喜んで!」
二人でサインを書いていたら、電車のダイヤ乱れで遅れていたイラちゃんが到着した。
電車の扉が開くと、なんとあの赤いワンピースの幼女の姿で堂々と降りてくるではないか!
「うわーっ、イラちゃんがそのまんまの姿で!!」
「おー! スパイスちゃんもバーチャライズしてるじゃん!! いよー! 現実のスパイスちゃんは割とむちむちしてるんだねえ」
「イラちゃんは華奢だよねー」
「お互い方向性が違うよなー」
やあやあ言いながら、お互いの姿について感想戦を繰り広げる。
NRのスタッフさんはなんか感動しているみたいだ。
スパイスたち二人にスドーさん。
むむむっ、スドーさんが浮いてるな?
「私はそういうの気にしませんから。では準備が整い次第、参りましょう」
スドーさんがええ声で告げた。
このスドーさん、NRから案件をもらって、アプリとかも配信で紹介している人だ。
乗り鉄系配信者の中では、かなり上位の人物なのである!
まあ、スタイルがマニアックなので、この人の動画を全く見たことがない人も多いと思うけど。
どっちかと言うと、スパイスのファン層よりも一般層の人の方が見るんじゃないかな。
「それはそうとイラちゃん、なんで変身したまま電車乗ってたの? 目立つじゃんー」
「おー、目立ったぜ! でもイラはある程度の移動はバーチャライズしたままにしてるんだよなー。だって変身するにしても、男子トイレで変身したら出てくる時に変だろ? 多目的トイレは迷惑だろ?」
「良識的おじさん!」
「おじさんは存在するだけでやいのやいの言われるから、良識を纏わなくちゃな」
「言えてるー」
「至言ですね」
スパイスとスドーさんでうんうん頷くのだった。
我らおじさん三人、シンパシーを感じる~。
「スパイスちゃんはあれだろ? イカルガのもみじちゃんと仲良くなってたから、そのうちカワイイトップ3でコラボとかしそうじゃん」
「するね、間違いなくするね」
「そしたらイラとスパイスちゃんがおじさん姿で現れたらどうよ。もみじちゃん女子高生なんだから恐縮しちゃうかもじゃん。徹頭徹尾幼女の方がいいと思うんだよねー」
「確かにー!! おじさんの姿をあらわにする必要はないもんねえ。スドーさんみたくおじさんの姿のみで活動してる人はともかく」
「私はアバター使いませんからね」
本当に生身で活動してるもんな、この人!!
彼のデータベースには、過去のダイヤも記録されていて、昔その路線を走っていた電車ならば呼び出すことができる。
なお、電車が戦えるのはそれが通過するまでの短時間なので、なかなかファイトスタイルはピーキーなのだ!
ってなわけで……。
おじさん三人の配信、行ってみよう!
ついでにスパイスの修行もやっていくぞお。
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




