第154話 うおーっ、新年ダンジョンだと!
もみじちゃんとザッコのアドレスを交換したので、これでいつでもコラボできるぞ。
世界にカワイイを見せつけてやろう。
だけど、おじさん二人と女子高生だと事案になっちゃいそうだな……。
『うち、楽しみにしてます!』
「スパイスもだよー! 一緒に遊ぼうねー!」
ま、いいか!
ということで、フォーガイズはおみくじ砲に向かった。
「まずはフォーガイズの切り込み隊長チャラちゃん!! ゴー!」
『うおおー!! 行くぜヒャッハー!!』
そんなに気合を入れなくてもいいんじゃないかなって叫びとともに、チャラちゃんがおみくじを引くと……。
『凶か……』
そう呟く彼の足元で、ゴゴゴゴゴッとおみくじ砲が動き出す!
周囲が砲口みたいになり、そこからぼいーん! とバネでチャラちゃんを空に撃ち出した!
『ウグワーッ!?』
※『チャラウェーイw!!』『飛んだw』『新年早々みせてくれるなあ』
『チャラウェイ、おみくじを引く時に気合を入れないからそうなるんだ。いいか? こうやって気合を込めておみくじをだな』
それっぽいことを言いながら出てきたスレイヤーV。
ぺろっとおみくじを引いたら、やっぱり凶だった。
『あれえーっ!?』
首を傾げながら空に撃ち出されていくスレイヤーさん!!
美味しいなー!
※『スレイヤーV~ッw!!』『あんなコミカルな芸もできるように……』『成長著しい』
遠くではづきちゃんが、なんか慈母のほほ笑みを浮かべてうんうん頷いている。
あれはママ目線というやつだ。
その後、ヤタさんが落とし穴に落ちて『ぐわーっ』とか叫んでいた。
美形キャラなのに体張るんだよなあこの人。
どれどれ、それじゃあスパイスは……。
美味しいの来てくれよー。
「あっ、中吉だあ」
※『悪くないじゃん』『いいねー』『あっ!』『スパイスちゃん、後ろ後ろー!』
「へ? うおわーっ!」
真横からバネ付きクッションが飛んできて、スパイスをぶっ飛ばしたのだった。
これ、中吉でも吹っ飛ぶのかあー!
はづきちゃんがパタパタ駆け寄ってきた。
『おみくじ、もしかしてダメなのしか入ってないんじゃない?』
『うんうん、みんな吹っ飛んでるもんねえ』
ベルっちも一緒だ!
可愛い系と見せかけて、界隈ではお色気度が高いと評判のはづきちゃんと、ギャルっぽい陽キャでお色気が高いと評判のベルっち。
二人並ぶと壮観だねえ。
「ううん、私中吉だったよー」
はづきちゃんに囲まれて動揺して、ちょっと一人称が乱れてしまった!
大物オーラだなあ。
『ひぃー、この女さらにパワーアップしてますよー。冗談じゃない』
『ん化け物ぉ』
『二人になると片方はちょっとましでやんすが、ちょっとでやんすぅ』
『こわいこわいこわい』
フロータと魔導書たちが、蚊の鳴くような声を出している。
そんなに怯えんでも!
なお、二人は力を合わせて輝きながらおみくじマシーンのボタンを押し、見事大吉を掴み取った。
ここで気付いたんだけど、おみくじ砲は何をやっても吹っ飛んだりする。
で、おみくじの結果が派手であれば派手であるほど、吹っ飛ぶ距離も増すんじゃないだろうか。
ほら、はづきちゃんたちを囲むおみくじ砲が光を放ってウィンウィン唸ってる。
制作者、いい趣味してるなー。
こうして、トップ配信者とその分身がものすっごい空高く打ち上げられていったのだった。
『あひー! そんなばかなー!』
『大吉だというのにー!!』
笑った笑った。
いやあ、楽しいイベントだなあ!
というところで……。
なんか、神社の周りが騒がしくなってきているんだけど。
バーチャル神社は、配信者専用のイベント。
新年のエンタメ的な感じで作られた場所で、配信活動をやっている人しか中には入れない。
だから周りに集まってくるのは、リスナーとか一般の人たちだと思うんだけど……。
なんでざわざわしてるんだろう?
『なんだろうね? ちょっと見てこようか』
「スパイスも見にいきまーす」
ヤタさんと二人で飛び上がって、神社の外側を確認……。
うわーっ!
なんか周りが迷路みたいに変化してるーっ!!
「これはまさか!」
『ダンジョン化だねえ』
飛び上がったスパイスたちを指さして、一般人らしき人たちがわあわあ叫んでいる。
『バーチャル空間は公共の場だぞー!!』『配信者だけに独占させるなー!』『俺達も入れろー!!』
むちゃくちゃなことを仰る。
バーチャル空間は国からも出資されてるので、ある程度は国の意向で使用者が定められてるんだぞ。
「ここは配信者のためのエンタメ配信提供ブースでーす! お引き取りくださーい」
スパイスが返事をしたら、叫んでる人たちがヒートアップした。
ムキー!!とかやりながら、『権力者!』『弾圧!』『既得権益を許すな!』『趣味でダンジョン潜ってるくせに稼いでけしからん!!』『お前らは賤業なんだわきまえろ!!』とか言い出した。
「うわーっ、日本語が通じない!」
『モンスター化してるんじゃない? 斬っちゃう?』
※『八咫烏が過激すぎるw』『でも様子がおかしいな』『反配信者団体とかあんな感じだよ』『そんな連中いるの!?』『配信者被害者の会とかで信者集めて荒稼ぎしてるみたいな』
ひえーっ、そんなモンスターみたいな連中いるんだ!!
で、この人たちを率いているのが、もうモンスターというかデーモンそのものだった。
デーモンがマイクを持って……。
『皆さーん! こちらです! こちらが、皆さんが現実社会で上手く行かない理由そのものです! チヤホヤの量には絶対値がありますから、彼らがチヤホヤされると皆さんが苦しくなるんですよー! そう、みんな配信者がわるーい! さあ皆さんご一緒に! 配信者は社会のムダ!』
『配信者は社会のムダ!』『配信者は社会のムダ!』『配信者は社会のムダ!』『配信者は社会のムダ!』
『配信者が食い荒らすの私達の税金!』
『配信者が食い荒らすの私達の税金!』『配信者が食い荒らすの私達の税金!』『配信者が食い荒らすの私達の税金!』
※『ひえーっ!』『バケモンじゃん』『どこからこんな逸材集めてきたんだ?』マルチョウ『社会を使ったダンジョン側の攻撃だなこれ。ダンジョンが明確な悪意を持ってこっちに仕掛けてきたんだ』
「なるほどねえー。これはつまり……」
後ろで、配信者の皆さんのモードが切り替わったのが分かる。
エンタメから、配信モードへ。
「ダンジョン配信、スタートだー! 新年一発目で撮れ高すごいぞー!!」
スパイスの宣言に、配信者のみんながうおーっ!!と沸くのだった。
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