第153話 出撃、本格的フォーガイズ
家に帰ってきてから、マシロと二人で紅茶などを入れて一休み。
向こうで散々食べてきたから、食事はいらないな……!
「ショウゴさん帰ってきた時のために、軽く食べられるお夜食だけ用意しとくッス!」
「ほんと!? たすかる~!」
持つべきものは良いお嫁さんであろう。
なんだかんだで配信終えたら、お腹減ってそうだしなあ。
ということで、約束の時間になったので俺はメタモルフォーゼすることにした。
「行くぞフロータ。みんなも準備だ! メタモルフォーゼ・スパイス!」
白黒の螺旋に包まれ……スパイスの姿に変身!
さらに、フロッピーから飛び出してきた光がスパイスに降りかかり、これが晴れ着コスチュームになる。
「なんというか……自分の旦那さんがこんなにカワイイなんて、嬉しい半分、複雑な気分半分……」
「カワイイことはいいことだぞー! そんじゃあいってきまーす!」
VRメットを被って、バーチャル空間にゴー!
この晴れ着姿のままのスパイスが、向こうの世界に出現するのだ。
フロータの力と晴れ着の力を使って、ほどほどの高速で飛行する。
そう言えば、いつになったらフロータの飛行魔法が解禁されるんだろうなー。
これが出てきたら、あらゆる移動魔法が過去のものになりそうな気はする。
おっと、見えてきましたバーチャル神社!
どうやらスパイスが一番乗りの様子。
ストンと降り立つと、他の配信者の皆さんがやってきた。
『スパイスちゃんあけましておめでとうございますー』『あけましておめでとう!』
「あけましておめでとうございまーす!」
『晴れ着かわいい~』
「どーもどーも! やっぱり専用衣装っていいよねー」
そこへ、スレイヤーV合流!
いつもの格好でスタスタやって来る。
『やあ、早いな! あとはチャラウェイが八咫烏を連れてくるだけだが……彼は遅刻の常習犯だからな』
「こんちゃ! ほうほう、ヤタさん、よく遅刻するんだ?」
『するぞ。寝過ごしたりもする。例えば俺と君が初めて出会った、炎の魔女迎撃戦の時も、本当は八咫烏が来るはずだったんだ。だがあいつは前夜の徹夜ゲーム配信で爆睡していた』
「ひえーマイペース!!」
そんなご縁があったんだなあ。
前も聞いた気がするが……改めて耳にすると八咫烏、豪快過ぎる。
そんな八咫烏を引っ張って、チャラウェイがやって来た。
あっ、八咫烏も紋付袴のアバターじゃん。
おめでたいなー。
『ウェーイ! 来たぜ! こいつ放って置くとまた寝坊するから、俺の家から二人で接続してる』
「チャラちゃんの家にヤタさんいるんだ!」
『いるよー。我が家よりも全然片付いてていつも驚く』
この人、ちょこちょこチャラちゃんの家に通ってるな?
仲良しめ……!
というか、こういうのを配信に乗せれば受けがいいだろうと思うんだけど。
『あ、配信ではよく話してるよー。てえてえ、とか、斑鳩じゃないの解釈違いとか言われてる』
「既にリスナーたちのエンタメになっていたか……」
てなわけで、四人揃ったのでおみくじでも引こうかという話になった。
「あ、ちょっとうちの箱の仲間もいるんで挨拶してくるよ。待っててね」
八咫烏がトコトコと、向こうで溜まっている配信者たちの中に入っていく。
そうしたら、どうやら彼らが何者かと接触したようだ。
配信をしてるらしい人々のコメント欄が、ダーッと凄い勢いで流れていく。
「やあはづきちゃん! あけましておめでとうございます」
きら星はづきが来てる!
あのトップ配信者女子高生とも久しぶりだなあ。
ブタさん柄の晴れ着はデザイン的にどうなの? 似合ってるけど。
どうやら、ライブダンジョン所属の風街流星までいて、はづきちゃんとお喋りしているようだ。
「凄いことになって来たなあ、バーチャル神社!」
『ウェイ! 俺も挨拶してくるぜ!』
じゃあスパイスたちも!
とぞろぞろ向かうことにした。
途中、ドワーフたちもバーチャル空間にぞろぞろ登場。
スパイスたちに合流する。
『はじめましてじゃぞ』『お主らがフォーガイズか!』『チャラウェイからよく聞いてる』
「ほえー! 今のドワーフはバーチャル空間にも進出してるんだ!? どーもどーも!」
『ちっちゃいのー!』『人間なのにわしらよりちっちゃくない?』『ちゃんと飯食っておるか?』
「こういうちっちゃいアバターなんだよね」
ワイワイやってる後ろで、チャラウェイがはづきちゃんと挨拶している。
おっと、スパイスとスレイヤーにも気づいたな!
「はづきちゃんいえーい!」
『いえーい! あけましておめでとうございます~!』
はづきちゃんとハイタッチした。
うーん、ちょっと背、伸びた?
この娘のアバター、現実の身長に合わせて伸びていってる気がするんだよなあ。
あと、はづきちゃんの横に、彼女とよく似たちょっと妖艶な感じの女の子がいる。
これ、なんと彼女から分かたれた暴食の大罪の化身。
ベルゼブブを略して、ベルっちと呼ばれている存在なのだ。
強大なデーモンそのものなんだけど、美味しいものを食べさせておくと友好的なので、人類側にいる……。
寛大だなあ、人類側!
で、彼女ともハイタッチしておいた。
割とまんま、もうひとりのはづきちゃんじゃん!
スレイヤーさんも、はづきちゃんに「最近どうですか」なんて聞かれている。
元迷宮省長官の彼からすると、この女子高生はアバターを作ってくれたママにして配信者としての先輩なので、頭が上がらないところがあるっぽいのだ。
おっ、そう言えばはづきちゃん以外に、イカルガエンターテイメントの女の子たちもいるじゃん。
その中で、鹿の角を生やした小柄な女の子がいる。
紅葉柄の晴れ着を着た子で、カワイイ配信者トップスリーに入る人物だ。
つまり、スパイスやイラちゃんの可愛さのライバルだね。
向こうは現役女子高生なので、むしろ彼女のほうが正道とも言える……。
「どーもー、はじめましてもみじちゃん!」
『あっ、どうも! はじめましてー! わー、スパイスちゃんに会えて嬉しいー!』
スパイスよりもちょっと背が高い彼女と、手を取り合ってぴょんぴょんした。
『むむうー!! 凄腕の現代魔法の使い手の気配がしますねえー。やはり有名な配信者は皆、只者ではありません!!』
もみじちゃんの凄腕オーラを感じ取るフロータなのだった。
よし、今度イラちゃんも交えて、世界一カワイイ三人コラボしよっか!
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