第114話 ジオシーカーで結集!
「うおー! いくぞいくぞいくぞいくぞー」
ばりばり突き進むスパイス!
この快進撃をみよー!
※『スパイスちゃんのアクション、壁とか天井とか走り回るからめちゃくちゃ目が回るんだよなw』『酔い止め、酔い止め~!』『配信者の動きについていけないリスナーw』
「ごめんねー。スパイスの肉体がハイスペックすぎるんだね……!!」
生身と比べても、異常に性能がいいからな。
しかもこのミニサイズで、筋力は生身の時と変わらない。
当たり判定が減って、体重が軽くなった上に小回りも効き、十代の頃のショウゴの肉体のキレがある。
最強!
走ってくる異形ヘッド看護師が振り回す、点滴がついてる棒。
これをジャンプで回避しながら、棒の上に着地!
駆け上がって看護師の肩を蹴って飛び上がったら、頭の上からラーフとエアガンをダブル射撃!
『ウグワーッ!!』
異形ヘッド消滅!
「ラーフはフロータ、エアガンはイグナイトに協力してもらうと強い感じだね。でもこの通路が狭いダンジョンだと、イグナイトは危なすぎてねー」
『ん俺もぉ活躍したいぃ!』
「広い所に行ったらねー」
BB弾だと、フロータが込めれる魔法が弱くなる。
これ、弾の大きさに関係してるかも。
逆にBB弾を使い捨てと考えると、イグナイトの小規模爆発を連続させる魔法はとても相性がいい。
「スパイスの新しいスタイルは、シューターだなー」
『マスター、私から提案があります』
「フロッピーから提案めずらしいー。どうしたの?」
※『フロッピーちゃんがどんどん喋るようになってていいぞー』『声が可愛くなってる』『野中さとなっぽい』
うちのAフォンにファンが付き始めてるね?
『FPS形式ですとリスナーの皆さまが大変そうなので、マスターがアクションをする時にはTPS方式、あるいは少し離れて撮影がいいのではないでしょうか』
「あー、なるほど!」
FPSはファーストパーソンシューティング、つまり主観視点ね。
スパイスを追っかけるから、一番臨場感がある!
だけどスパイスの超機動についてこないといけないので、三半規管の強靭さを問われるわけだ。
これはショート動画で後日発表だね。
配信はTPS……サードパーソンシューティング、三人称視点での俯瞰した感じが一番いいかも。
「そんじゃあそれでよろしく!」
『かしこまりました』
向こうから、キャスター付き懸架にドリルがついたやつと、それを押してくる異形ヘッド軍団が迫ってくる!
ここからTPS視点で行ってみよう!
※『うおーっ!! スパイスちゃんが瓦礫を踏んで跳躍!』『異形ヘッドも飛んだけど……』『空中戦だ!』『振り回される棒を蹴って吹っ飛ばすのマジ!?』『反動で壁に着地しながら連射してる!』『あ、フロータ仕込んだ!? 懸架が浮かび上がった!』『懸架の上に立ってからのー』『イグナイト仕込んだBB弾で掃討!』
「イエアー!」
※『うおおおおおお』『うおおおおおお』『うおおおおおおお』『戦い方がガチガチのガチなのよw』
魔法の実力で劣ってても、別のスキルでかさ増しして戦えるねこれは!
だけど、次回の海の魔女との遭遇戦は、スパイスは結婚式で留守だからね。
海魔女が逃げおおせたら、第二戦があると思う。
そこでこれをやるかー。
というところで、中枢の中枢みたいなところに到着!
ダンジョン化した施設は形状が歪んでいるらしく、入口のエントランスホールみたいなものがど真ん中にあった。
ここまでは、Dizも一気に転移できなかったんだなーと思ったけど、納得。
モンスターがひしめいているわけだ。
こりゃあ降りてきたらごちゃごちゃな集団戦開始でしょ。
このダンジョン、一体どれくらいのモンスターがいるんだろう。
「流石にこれは弾数が足りない! ヘルプを要請しまーす!」
※『うわあ、モンスターがひしめいている!』『やばいやばいやばい』『常にスタンピード級のモンスターがこの中にいるってこと!?』
「みたいだねー。あ、返信きた!」
『そっちの様子は確認してますよー。じゃあ、ヤタさんと一緒に行きますね。ジオシーカー!』
Dizの声が聞こえたと思ったら……。
彼女が別の入口に、ストンと降り立った。
そしてスパイスの対面には八咫烏。
「うわーっ、大きいモンスターと戦ってたらいきなり転移させられたよ。ジオシーカーは無体だなー」
呑気にそんな事を言いながら、八咫烏は振り返った。
「でも、いつまでもダラダラ配信してもね。よし、ここを片付けて配信を終えちゃおうか」
「おー! いっぱいいるので、ここからスパイスは魔法かなー。フォームチェーンジ!」
オレンジと白の光りに包まれて、変わる姿は……。
「イグナイト・スパイス! 広域殲滅形態だよ! うおおお全力で行くぞイグナイトぉー!」
『ん待ぁってたぜぇこの時をぉぉぉぉぉ! ぶらぁあぁあああ!!』
輝く魔導書イグナイト。
スパイスの両手に炎の輝きが灯った。
モンスターたちは一斉にこっちに気付いて、ギャアギャア叫びながら襲いかかってくる。
「ほんじゃあ、行ってみよー!! 爆裂火球ーっ!!」
ドカーンッ!!と大きな花火が上がる、ダンジョン中枢なのだった。
なお、ずっと画面端で見切れてて分からなかったんだけど、Dizは歌タイプの現代魔法で戦いながら、と時々何かをシュッと投げていた。
あれ、モンスターが踏むとそこで火柱が上がってたんだけど……爆雷でもばら撒いてた?
最後に現れたのは、医療用機械と半分同化したドクターみたいなデーモン。
これはスパイスが爆裂火球でひるませて、Dizがピコハンで足元を崩し、八咫烏がドクターの頭の上に立って、そこからラーフを連続で叩き込んだ。
『ウグワーッ!!』
断末魔とともに、爆散するドクターデーモン。
かなり大きなダンジョンコアが、コロンと転げ出た。
そしてダンジョン化が解けていく。
かなり広めの廃墟に戻っていくのだ。
「かつてはサナトリウムとか、そういうのに使われていたらしいんですけど、収容された人たちに対する謂れのない風評や、報道から広がった偏見がここをダンジョンに変えたんですよねー。本人たちだけでなく、誰もがダンジョン化を引き起こす加害者になりうるっていうのは、肝に命じておきたいですね」
Dizが綺麗な感じの締めをして、コラボは終了となった。
「ということで、どうでした? だいずは信頼できるかなー?」
「全然活躍が見えなかった! だけど、あれだけたくさんいたモンスターなのに、何も出来てないみたいに見えたよ! 何をしてたの?」
「こうね、集団の中で、動き出そうとするキッカケっていうのがあるんですけど、それを見極めて出鼻をくじくの。これを連続してると、向こうは何もできないまま瓦解してくわけね」
「ひえー」
リスナーにはその様子を見せないまま、あれだけのスタンピード級な集団をコントロールしていたとは。
確かにDizは特級戦力と呼ばれるだけのことはあるのだった。
あと、最後まで斬撃を使わないでエンジョイで戦っていた八咫烏とか。
「いやあ、配信したらお腹減っちゃったね。三人でご飯食べていかない?」
呑気だなあ。
だけど、確かにこっちもお腹が減った。
「じゃあ、この辺りで美味しいお店をDizさんに探してもらいますか!」
元の姿に戻った俺がそう言うと、Dizはニコニコしながらジオシーカーを展開するのだった。
「これもまた、ジオシーカーの便利な使い方ですもんねー。美味しいお店に……ジオシーカー!」
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