第101話 大物とのコラボなのだ
ついに来た。
これ以上ないというくらいの大物配信者とのコラボだ。
その名は、きら星はづき。
彼女のデビューは、俺とそう変わらない。
だが、輝かしい実績を次々に上げて、瞬く間に世界中の配信者の頂点に躍り出た。
東京圏に発生した巨大スタンピードを止め、放送局に出現した大罪と呼ばれる強大なデーモンを仕留め、大罪デーモンによって危機に陥ったアメリカを救い、電脳空間を占拠しようとする大罪を倒し。
さらには史上最大規模の侵略を仕掛けてきた、大魔将と呼ばれるボスクラスのデーモンを真っ向から粉砕した。
とんでもない業績をあげているなあ……。
そんな彼女と、縁があって本日コラボということになるわけだ。
俺の中の社会人パワーが発揮され、一時間前には到着した。
現場の下見も兼ねている。
なるほど、廃校舎か……。
こういう様々なエピソードを持っている建造物は、ダンジョン化しやすい。
まず、構造そのものがダンジョンだし、学校の怪談みたいなエピソードがダンジョンとの親和性が高い。
ダンジョンを呼び寄せる儀式の意味も持っているわけね。
ここを除霊した後は、公民館として使っていこうと考えているらしいが……。
護符を用意できないと、現実的ではないぞ。
維持費が馬鹿にならない。
とか考えていたら、校庭に車が入ってきた。
そこから、黒髪の上品な感じの女の子が降りてくる。
あれがきら星はづき……。
ここから見ても、オーラに満ちている気がする。
そして、見覚えがある気がする……。
あれ!?
あの制服、古き魔女の学校のものじゃないか。
もしかしてあの時、挨拶してすれ違った女の子がきら星はづきだった……!?
運命というのは分からないものだ。
俺は唸りながら、校庭に歩いていく。
おお、ちょっと緊張するな!
相手が超大物だからな。
なんとなく、気分的にも内なるスパイスが外に出てくる。
「あっ、こんにちはー」
俺が声を掛けて手を振ったら、彼女はハッとした後、ペコペコした。
大物なのに腰が低い……!!
「こっこっこっ、こんにちはー……。あのあの、も、もしかして」
おずおず聞いてくる。
これは……。
コミュニケーション苦手勢の気配!
きら星はづきという鎧を纏うことで、このどこにでもいそうな引っ込み思案の少女は、最強無敵のトップ配信者になるのかも知れない。
いや、どこにでもいそうと言う割にはすらっと背も高めだし、体幹がしっかりしているし、前髪から覗く瞳の輝きとか顔立ちとか明らかに非凡なんだが。
磨けば眩く光りだす原石と言えよう。
よし、ここはおじさんが、彼女の緊張をほぐす意味も込めてだな……。
「あっはい! 黒胡椒スパイスです! もしかして、あなたがきら星はづきちゃんですか!?」
ややテンション高めに問いかけてみた。
そうすると、彼女の表情がパッと明るくなる。
「はーい、きら星はづきです。こんきらー」
漏れ出てきた声は、まさに配信で聞いたあのトップ配信者のものだ。
テンション上がってきたなあ!
「こんきらー! うわー、本物だ!!」
思わず感激して、ちょっとスパイスっぽい仕草で喜んでしまった。
「スパイスちゃんもやっぱり本物だった!」
おや?
もしや俺が普段からこんな可愛い仕草をしていると思っていらっしゃる……?
最近スパイスの仕草をすることに抵抗が消えてきたからな……。
「じゃあ始めちゃいましょうか。バーチャライズ!」
彼女がアバターを纏ったので、俺も倣ってバーチャライズ……メタモルフォーゼの魔法で姿を変える。
おお、目と鼻の先に、あのピンクジャージの美少女配信者がいる……!!
彼女と並び立つためには、やはりこれだろう。
この日のために、それっぽい挨拶の言葉を考えてきたのだ。
「こんスパ~! 今日も皆さんの夜をスパイシーに! 黒胡椒スパイスでーす!」
こんな挨拶はしたことがない!
スパイスは今、かわいこぶっているのだ!
「うわー本物だー! あの大きいおじさんが私よりちっちゃくなっちゃった!」
もみじちゃんくらいの背丈ーと言っているが、その彼女はきら星はづきの後輩配信者で、小柄な子だったはず。
だが流石にスパイスよりは大きい。
スパイスは常にフロータでちょっと浮いたりして、身長が傍目には分かりづらいだけだ。
130センチですからね!
こうして配信がスタート。
眼の前で生の元気な「こんきらー!」を聞いてしまった。
※『くっ、スパイスちゃんめ、おじさんだと分かっているのにタイツに包まれたおみ足の眩しさにくらくらする……』『あまりに可愛すぎる……』『男の急所は男が一番よく知っているのだ……』
彼女のリスナーも、スパイスの可愛さを認めたようだな……。
この姿は本当に可愛いからな……。
ちなみに伝え聞いた話によると、ニュース系配信者が可愛い配信者ランキングをやっていたそうだ。
なんとスパイスは第一位!!
大変名誉な地位だなあ。
第三位にその、もみじちゃんという女の子が入った。
第二位は……。
やはり魂はおじさんである、サタン・イラちゃん。
イラちゃんのイライラ激おこちゃんねるは、なかなか受けている。
実はなかなかのベテラン配信者である。
彼とはまだ接触がないな。
同じおじさん同士、一度会ってみたいものだ。
配信は進み、
「スパイスちゃんはなんで配信者をやろうと思ったんですか?」
基本的な質問がやって来た!
ということで、ここは本当のことを設定っぽく話すことにした。
「あー、それはですね! スパイスはおばあちゃんが魔女でー、亡くなった時に遺言でスパイスを後継者に指名したんですね。でもその魔法は魔女じゃないと使えなくて、だからバ美肉してみたら使えたんです」
「なるほどー。人に歴史ありですねえ」
※『本当か嘘か分からない話だw』『見た目が美少女になれば魔女の魔法が使えるってこと!?』『現代魔法かな?』
コメント欄、本当か嘘か、設定なのか分からなくなっているな。
「えーとですね、魔女の魔法。いわゆる、いにしえの魔法ですね。ちょっとトラブルがあって、世界中に魔導書が散逸しちゃったんでこれを集めたりしてます! 魔導書情報教えて下さい!」
きら星はづき……いや、あえて親しみと敬意を込めて、はづきっちと呼ぼう。
彼女のリスナーたちはスパイスのお願いを快諾してくれた。
いい人たちだ。
少しでも、あの魔女たちを追い詰める助けになってくれるとありがたい。
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