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第9話 再会




「はぁ…はぁ…うぅ…」

「獅子王さん!大丈夫ですか!すぐに手当てします!!」


 獅子王さんが部屋から飛び出してきてた倒れこんでしまいます。すぐに獅子王さんに近づいて救急箱を開く。腕も顔も傷だらけ。消毒液で消毒してから絆創膏やガーゼを貼ります。獅子王さんは部屋から3回は飛び出してきています。さっき手当てしたところも傷がさらに開いて絆創膏に血が滲んでしまっています。


「あり、がとうございます…。はぁ…もう1回だ……」

「獅子王さん!だ、駄目です。傷が開いてしまいます。1回休んでください!」

「休んでる場合じゃ、ないんです…次にあのハカイダーが現れる前に必ず、力を…!」

「獅子王さん…」


 私が止めても獅子王さんは止まらず再びあの部屋へ戻っていってしまいました…。獅子王さん以外の皆さんも部屋からボロボロになって飛び出してきてその度に私が手当てしてまた部屋に戻って行ってしまいます。救急箱に入っていた包帯も絆創膏も消毒液も少なくなってしまいました。


「買い出しに行かないと切れてしまいそうですね…」

「ここは僕に任せて買い出しに行ってきなさい」

「で、でも…」

「大丈夫だ。それにお前は少し外の空気を吸ってきなさい。ずっと険しい顔をしてるぞ」

「え、あ……」


 お父さんに眉間を指で押されてずっとシワが寄っていたことに気づきました。お父さんの言う通り私ずっと張り詰めすぎてしまったみたいです。ですが今の状況で私だけ休むなんて…。


「みんなのことは心配なのは分かる。僕自身もみんなに無理をさせてしまったと思ってる。だけど美咲が倒れたらきっとみんなも心配するし、もしハカイダーが現れたら美咲の力も必要になるんだ。必要な時に休んでおかないと」

「そう…そう、ですね。分かりました。それにもし包帯や消毒液がきれたら大変ですからね。それでは早速買い出しに行ってきます。…皆さんのことお願いしますね」

「あぁ!任せておけ!」




 ****




「これで買うものは全部、ですね。しかし、少し多めに買ったので重くなってしまいましたね…」


 薬局に行って買うものを全部買うことができました。ちょっと重たくなってしまいましたがこれくらいでしたら全然大丈夫ですね。皆さんが心配です。早く戻らないと。


「あ、オメェ。あん時の」

「え、あ、あ!バ、バイクの方!!」


 帰り道を歩いていると向かいからあの時助けてもらったバイクの方が声をかけてくれました。考えごとをしていたから少し反応が遅れてしまいました。サングラスを外す所作に心拍が少し速くなったのを隠しながら返事をします。か、顔赤くなってないですよね…。


「なんだ?その荷物」

「え、えっと、包帯に消毒液とかです。えっとお散歩中、ですか?」

「んーまぁそんな感じだ。それにしてもお前、随分雰囲気が違うな」

「え?雰囲気ですか?」

「あー…なんつうか余裕がない、みてぇな感じだな」

「あはは…分かっちゃいましたか……」


 まだ会って2回目なのに気づかれるなんて私そんなに分かりやすいんですかね。


「悩みごとか?」

「少しだけ…。でもたいしたことじゃないです」

「…俺はよぉ。そうやってうじうじ湿っぽいやつは嫌いなんだよ」

「え、えっ…」

「だからよぉ。思ってること全部ぶちまけちまえよ!」

「で、でも……」

「でももクソもねぇよ!ほら、言え!!」

「ひゃ、ひゃい!」


 両頬を引っ張られながら上手く喋れない状態で有無を言わされずに答えさせられます。あまりの迫力と近さで思わず「はい」と答えてしまいます。そ、それにしても顔が近っ…!手、手の温もりが直で…!!


「んじゃ言ってみろよ」

「は、はい…」


 少しヒリヒリする両頬を手で押さえながら少しずつ話し始めます。私の話を腰に手をあてながらちゃんと聞いてくれています。


「私、皆さんのお役にもっとたちたい。見てるだけなんて嫌なんです。私は何もできない……」

「あー……なんか思ったよりも深刻そうな話だな…」

「すみません。こんな話されても分かりませんよね」

「あぁ。わからん」

「あはは…すみません」

「謝んなよ」

「すみませ、……はい」

「お前がなにしてんのか俺はよくわかんねぇがお前はよくやってんじゃねぇか」

「え、?」

「そこまで本気になれるってことは、お前自身もよくやってるんだろ。俺もよく分かるぜ」


 そう真っ直ぐ見つめる瞳に吸い込まれてしまいそう。私、誰かに認めて欲しかったのかな。ううん、皆さんにはよく感謝の言葉をもらって、それを私はちゃんと受け止め切れてなかった。


「俺もよぉ勝ちてぇ相手がいるんだ。そのために強くなるために戦い続けてんだ」

「戦い?なにか格闘技をしてるんですか?」

「あー…まぁそうだな」


 確かに身長は高い方だしガタイもいい。何か格闘技をしていてもおかしくはないですね。それに私を助けてくれた時もすっごく強かったです。


「戦い…も、もしの話ですよ。もしお相撲さんと戦うことになったらどうしますか?」

「相撲取りぃ?なんでいきなりそんな話になったのかわかんねぇが、まぁそうだな。スピードはねぇからスピードを生かしたりあとは、体力はあんまり無さそうだからな持久戦に持ち込むとかか?パワーで正面から戦うのは無謀だな」

「す、凄いですね。こんな一瞬で分析してしまうなんて」

「まぁ、俺には戦いしかねぇからな」

「?そう、なんですか。あ!い、今更ですけどお名前は…?」

「確かに言ってなかったな」

「私は良愛美咲と言います」

「俺は…あー……ヒー…」

「ひー?」

「ヒイト、そう。ヒイトだ!」

「ヒイトさんですか!ありがとうございます。こんな相談にのってもらっちゃって」

「まぁ俺も暇だったからな」


 その時子供たちに5時を知らせるチャイムが鳴り響いた。チャイムの音にハッとする。買い出しに行ってから結構時間が経ってしまった。早く戻らないと!


「ご、ごめんなさい!もう帰らないと!」

「あぁ、そうか。それじゃぁな」


 そう言って背中を向けて歩き出そうとした時に私は咄嗟に声をかけて引き止めます。


「あ、あの!!また会いたいので連絡してください!」

「気が向いたらな」


 そう言ってあの人、ヒイトさんは帰ってしまいました。私も早く戻らないと。また、会えるでしょうか。ヒイトさん。




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