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第16話 再起


「私………生き、てる……?」


 目が覚めた美咲は自分の置かれている状況を把握しようと体を起こす。美咲が落ちてきた場所は河原の様でゴツゴツした石の上で気を失っていた為少し体が痛む様だ。


「怪我1つしてない…どうして?いや、今はそれよりも獅子王さんを探さないと。獅子王さんもここに落ちてきたはず。早く見つけてみなさんと合流しなくては」


 崖から落ちたのに自身に傷1つないことに疑問を持ちつつも状況が状況の為すぐに獅子王を探し始める。少し河原を歩いていると上流の方からハンカチが流れてきた。もしかしたら獅子王のものかも知れないと思い、上流の方へ向かう。


「獅子王さん!!」


 美咲の考えは見事に的中し、獅子王は川に浸かって意識を失っていた。美咲はすぐに獅子王を川から引き上げ自分の膝に頭をのせて獅子王の名前を呼ぶ。


「獅子王さん大丈夫ですか!?」

「ぅ……美咲、さん?っ…!!」

「大丈夫ですか!?酷い怪我ですからあまり無茶しない方が……」

「すみません……でもみんなと合流しないと」

「そうですね…。ウルフのこともありますし、先ほどの地ならしも気になります。とりあえず連絡をとりましょう。あ、これアニマルチェンジャーです。獅子王さんに返しますね」


 無事に意識を取り戻した獅子王は美咲に肩をかりながらなんとか立ち上がる。ヒートとの戦いに崖からの落下。運良く生きていたが、全身切り傷だらけで打撲もしている。起き上がるのもやっとだ。美咲からアニマルチェンジャーを受け取り、脚のベルトに巻きつける。


 ゴゴゴゴゴゴ………

「わっ!!また地ならしですね。それも結構大きいです。もしかするとウルフが暴れている影響で地ならしが起きている…?少し待っていてください」


 美咲はカバンからウルフの生命反応を検知するレーダーを取り出し液晶を確認する。山に来た時には感知できなかったウルフの生命反応が検知されている。


「やっぱり!獅子王さん、おそらくこの地ならしの原因は聖獣ウルフです。ウルフが本格的に目覚めて力を制御出来ずに暴れているはずです」

「きっとウルフは苦しんでる……。僕、行きます」

「そんな怪我じゃ無茶です!せめて皆さんと合流してから…」

「それじゃあウルフが可哀想です。それにきっとハカイダーたちもウルフを狙ってくるはずです。僕が行かないと」

「確かにそうですが……」

「美咲さんはみんなに連絡してください。僕は先にウルフの元に行きます」

「獅子王さん……」

「大丈夫です!僕、頑丈なので!それじゃあお願いします!」

「獅子王さん!!」


 獅子王は美咲の言葉を待たずに獅子王は走って行ってしまった。全身怪我だらけで立っているのもやっとの筈なのに獅子王は1人で行ってしまった。美咲は獅子王を追いかけた方がいいと考えたあと、まずは4人に連絡をした方がいいと判断し連絡をとる。


「…………………駄目だ。皆さんと連絡が取れない……。まさか皆さんに何かあったの?皆さんの元に戻る……は無理そうですね……。この崖を登れそうにない…」


 自分が落ちてきた崖を見上げるが何メートルもあるであろう崖を登れるほど美咲の運動神経は良くはない。崖を登ることを諦めた美咲は4人への連絡を続けながら獅子王の後を追う。




 ****




「掘り当てた!掘り当てた!!聖獣を掘り当てたぞ!!!!」


 震源地ではドリルハカイダーが地面から聖獣ウルフを掘り出した。地下深くで眠りから目覚めたウルフは自身の強大なパワーを暴走させないよう地下にいたがそこをドリルハカイダーが掘り出してしまった。


「見つけたぞハカイダー!!」

「お前はアニマルジャーのレッド!どうしてここにいる!!」

「これは……なんて荒れようなんだ」

「一足遅かったな!オレが聖獣を掘り出したからな!これで聖獣はハカイダーのもんだ!!」

「ワオーーーン!!!」

「これが…聖獣ウルフ……」


 穴から飛び出し遠吠えをあげた聖獣ウルフ。ウルフの瞳は真っ赤に染まりどこか苦しそうに見える。ウルフは遠吠えをした後何処かへ走り去ってしまった。


「ウルフ!何処に行くんだ!?」

「クソッ!オレが掘り当てたんだぞ!逃すか!!」


 すぐに姿を消したウルフを追ってドリルハカイダーは地面を潜って行き、獅子王もウルフを追うため走り出す。


「っ…!足が…!」

「獅子王さん!!大丈夫ですか!?」

「美咲さん!みんなと連絡はとれましたか?」

「それが誰にも連絡が取れなくて……」


 後から追いかけて来た美咲が合流した。美咲が4人に連絡が取れないことを伝えると獅子王は少し考えた後、獅子王の考えを美咲に提案した。


「とりあえずウルフを追わないと。ドリルのハカイダーもあのヒートもいる。ウルフに何かある前に保護しないと」

「そうですね。ウルフも暴れてて苦しんでる筈です。私じゃ力になれませんが獅子王さんよろしくお願いします。私は皆さんを探すので」

「分かりました。二手に分かれましょう。僕はウルフを、美咲さんは皆さんを探しましょう」

「はい。皆さんを見つけたらすぐに連絡します。それではウルフのことお願いします!」


 美咲は連絡がとれない4人を探しに走り出した。獅子王もウルフが走り去った方へ向かう。




 ****




「はぁ……煩いのは嫌いなんですよ。アニマルジャーを始末してから向かうとしますか」

「そうするか。それじゃあアニマルジャーの諸君さようなら〜」


 地に伏し、体が動かない4人をプラスとエアーシュがトドメを刺そうとする。もう駄目だと目を固く閉じる4人だったが、その一瞬プラスとエアーシュの体が吹き飛んだ。


「グアッ!!」

「キャア!!」

「な、なんだ!?」

「グルルルル………」

「狼…もしかして聖獣ウルフか!?」

「ど、どうしてこんなところに!?もしかして助けてくれた…?」

「ううん…なんか様子がおかしいね〜……」


 プラスとエアーシュを吹き飛ばしたウルフの目線は4人の方へ向けられる。その瞳は4人の方を向いているが焦点が合っていないように見える。ウルフは喉の奥から唸り声を響かせ牙をむいている。


「グルルルル………」

「ま、まさか俺たちを襲うとしてる?」

「ありえるね〜………」

「に、逃げないと…!!」

「ガァアアウ!!!!」


 牙と爪を鈍く光らせ動けない4人に襲いかかる。その瞬間遠くから美咲の叫びが響き、ウルフの身体が一瞬止まる。


「ウルフ!!駄目です!!」

「グルルル………」

「皆さん大丈夫ですか!?」

「美咲ちゃん……無事でよかった」

「酷い怪我……でもまずは……ウルフ…苦しいですよね。大丈夫です。すぐに……あ……」


 美咲が全てを言う前にウルフはまた何処かへ消えてしまった。ウルフを静止するように伸ばした美咲の手は宙を掻いた。


「……………ひとまず手当をしましょう。救急箱を持って来ていてよかったです」

「美咲さん。獅子王はどうしたんですか」

「獅子王さんは無事です。今はウルフの暴走を止める為に奮闘してくださっています。まさか私の方が先に見つけるとは…」

「なら俺たちも早く獅子王に合流しねぇと」

「そうだね〜。俊野くんだけに任せっきりは気が引けるよ〜」

「ですが皆さん酷い怪我です。安静にした方がいいのでは」

「美咲ちゃん実はね、この山にプラスとエアーシュがいるの。その2人とドリルのハカイダーも聖獣を狙ってるの。だから俊野くん1人じゃ危ないかもしれないの」

「プラスとエアーシュもですか!?まさかハカイダーの幹部全員がこの山に集まっているとは…。ですがその怪我では戦えないです。ましてや幹部たちとなんて…」


 4人はドリルハカイダーとプラスとの戦闘でボロボロだ。この状態では幹部3人とドリルハカイダーと戦うことはできないだろう。だが、このまま獅子王のことを放っておけない4人はなんとか獅子王のもとへ駆けつけたい。だが美咲は4人の怪我じゃ獅子王の元へ行けたとしてもまともに戦えない、ましてや幹部3人を相手に出来るとは思えないと思い4人を引き止める。


「それでも行かないと。ごめんね美咲ちゃん」

「行こうみんな!」


 引き止める美咲の言葉を聞かずに4人は獅子王の元へ走り出してしまった。美咲は行ってしまった4人を見届けることしかできなかった。




 ****




「見つけた…ウルフだ」


 獅子王は美咲に渡されたウルフの生命反応を検知するレーダーを使いウルフを見つけていた。物凄いスピードで移動していたウルフにようやく追いついたようだ。だがウルフを見つけた獅子王は顔を顰めている。ウルフを見つけたはいいものの、ウルフのところにドリルハカイダーとヒートが集まっていた。


「こいつが聖獣か?」

「そうです!!掘り当てたと思ったら急に逃げやがったんです!」

「グルルルル……」

「敵意剥き出しだな。いいぜ?躾のなってない犬は俺が直々に躾けてやるよ」


 ヒートは大剣を取り出しウルフに切先を向ける。それに対してウルフは牙を剥き出しにして威嚇している。ドリルハカイダーも両手のドリルを回転させている。今にも戦いだしそうな空気に獅子王は思わず飛び出した。


「待て!!」

「お前!どうしてここに!」

「生きてたのか。はっ!運がいいな!いいぜ。今度こそ息の根止めてやるよ」

「今は戦ってる場合じゃ……」

「オラァ!!」

「っ!!」


 戦う気がない獅子王にいきなり切りかかってきたヒート。咄嗟に横に避け、すぐに変身する。また獅子王目掛けて落ちてくる大剣をサーベルで受け止める。


「ぐっ……!今はこんなことしてる場合じゃ…!」

「ははっ!!楽しいなぁ!おい!!」

「その隙にオレは聖獣を!」


 ヒートと獅子王が戦っている間にドリルハカイダーの矛先がウルフへ向けられる。ドリルハカイダーがウルフへ歩みよるとウルフは唸り声をあげて威嚇している。


「グルルルル………ガァウ!!」

「生意気だなぁ!オラッ!!」

「キャン!」


 ドリルハカイダーの両手のドリルがウルフの身体に突き立てられる。両手のドリルがウルフの身体を削りウルフが悲鳴を上げる。ウルフの悲鳴を聞いた獅子王はアニマルパワーを解放し、力でヒートの大剣を押し退けた。


「ウルフ!!」

「俺との戦いに集中しろ!タイガーレッド!!」

「クソッ!ウルフのところに行きたいのに…!」


 ウルフの元へ行こうとする獅子王の退路を塞ぐようにヒートが執拗に追いかける。ヒートの邪魔のせいでウルフの元へ行けない獅子王は鬱憤が溜まっていく。


「これ以上傷めつけられたくないなら大人しく……」

「ガァアアウ!!!」


 自分の身体を痛めつけられたウルフは怒りを露わにし、今まで以上に低い唸り声を上げ足元にいたドリルハカイダーを片手で殴り飛ばしてしまった。飛ばされたハカイダーは勢いのあまり空を飛んで星になってしまった。


「ドリルハカイダーをぶっとばすなんて凄ぇパワーだな!面白ぇ!ますます欲しくなった!!」

「はぁ!」

「っと。危ねぇ」


 飛んでいったドリルハカイダーを眺めよそ見をしていたところに獅子王がすかさず攻撃を喰らわせる。それを余裕そうに軽々と身を翻してかわすヒート。攻撃を交わしたままの勢いで身体を回転させ大剣を振り回す。振り回された大剣を咄嗟にしゃがんで交わし、動物の様に四足になって物凄いスピードで距離を縮め爪で切りつける。


「っ!!ははっ!!やるなぁ!楽しいなぁ!」

「ガァウ!!!」

「なんだ?お前も戦いたいのか?」

「ウルフ!」

「オラァ!!」

「キャィン!!」


 いきなり飛び出してきたウルフがヒートに襲いかかって来た。だがヒートはウルフの攻撃を犬が戯れついたかの様に簡単にいなし、大剣でウルフの身体に大きく傷をつけた。ウルフは攻撃に怯み身体を縮こませた。


「ウルフに何をしてるんだ!」

「先に仕掛けて来たのはコイツだろ」

「(よく見るとウルフの身体傷だらけだ…。きっと自分でも力を上手く制御できなくて身体中をあちこちぶつけてしまってるんだ。早くなんとかしてあげないと……)」


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