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第15話 ウルフ争奪戦


「着いたー!疲れた〜!」

「皆さんお疲れ様でした」


 アニマルジャーの5人と案内役としてついてきた美咲は聖獣ウルフがいる山に辿り着いた。ウルフがいる山は木が生い茂っており勾配が大きい。たとえ巨体のウルフでもこの山の中で探すのは苦労しそうだ。


「美咲さん。生態反応はどうですか?」

「やはりこの山から聖獣ウルフの生体反応が感知されています。ですが反応が微弱でこの山のどこにいるか詳細は分かりません」

「そうですか…聖獣は大きいですけどこの山で探すのは骨が折れそうですね」

「はい…。ウルフが目覚めた時、爆発的な生命反応は検知出来たのですが、それ以降生命反応が弱くなって詳しく検知出来ないのです。申し訳ないです…」

「美咲ちゃんは何も悪くないよ!後はしらみつぶしで探していけばいいんだから!」

「この山を全部探したら何日かかるんだろうね〜」

「長期戦は覚悟した方がいいかもな」

「そっすね。山登りなんて初めてだわ」

「山のことなら任せて!困ったらなんでも聞いてね」

「流石山育ち〜。頼りになるね〜」


 山で生まれ育った熊沢には山は自分の庭当然。熊沢にとって山は自分の遊び場なのだ。


「それじゃ行こう。みんな」




 ****




「はぁ…はぁ……キツイ…」

「大丈夫ですか?美咲さん」

「はぁ…だい、じょうぶ、です……ゲホッ…。普段からちゃんと運動しておくべきでした……」


 5人と違って体力があまりない美咲にとって山登りは拷問に近いものだった。先を行く熊沢について行くことができず、最後尾にいた獅子王に心配されている。かろうじて息を吸い込んでいる背中をさすられゆっくり息を整える。


「ありがとうございます獅子王さん。落ち着いてきました」

「美咲ちゃーん!!大丈夫ー!?」

「はい!大丈夫で…」


 ピピピッ!!


「ハカイダー反応!?こんな時に…。ん?この反応の位置、まさか……」

「美咲さん危ない!!」


 ハカイダーの反応を知らせるレーダーが鳴り響き、カバンからレーダーを取り出す。ハカイダーの出現場所を確認した美咲だったが、その場所に目を見開いていたら獅子王が飛びつき美咲を腕に抱えて山を転がり落ちる。さっきまで獅子王と美咲がいた所に穴が空いてドリルハカイダーが現れている。地中に潜んでいたドリルハカイダーが美咲を狙って襲ってきたのだろう。


「獅子王!!」

「俊野っち大丈夫!?」

「美咲ちゃん!!」

「2人のことを気にするのはいいけど、まずは僕たちの心配をした方がいいかもね〜……」

「ウオオオオオ!!!掘削!掘削!!」

「ハカイダー!?どうしてこんなところにいんの!?」

「両手にドリル…物騒だな」

「さっき岩を飛ばしてきたのアンタだね!よくも美咲ちゃんと俊野くんを!!」

「ここにいるのはなんか意味深だけど、とにかく今は倒すしかないよね〜!」




 ****




「いてて……大丈夫ですか美咲さん!」

「は、はい…助かりました獅子王さん…」


 ハカイダーの攻撃から美咲を咄嗟に庇った獅子王と美咲は斜面を転がり落ちて大分下まで落ちてしまった。幸運な事に美咲と獅子王に怪我は殆どなく、軽く切り傷を負った程度だ。


「それにしてもまさかこの山にハカイダーが現れるなんて…。獅子王さんが庇ってくれなかったら今頃私、ハカイダーの攻撃で木っ端微塵でした…」

「いえ。当然のことをしたまでです。それにしても大分下まで落ちてしまいましたね…。早くみんなのところに戻って戦わないと…」

「そうですね…。今はお父さんがアジトに留守番しているので聖獣の皆さんの出撃は問題ないのですが、ウルフのこともあるので早くハカイダーを対処しなくては。それになんだか胸騒ぎがします……」

「胸騒ぎ…?」

「ん?なんだぁ?なんか音がしたと思ったら人間じゃねぇか」

「ハカイダー!!それにヒート!」


 転がり落ちてきた美咲と獅子王の前に現れたのはハカイダー幹部ヒート。獅子王は咄嗟に戦えない美咲を自分の背中に隠す。


「どうしてハカイダーの幹部がここに…」

「分からないですけど戦うしかなさそうですね…。美咲さんは何処かに隠れててください」

「は、はい!」


 獅子王に言われて走って木の陰に隠れる。そして獅子王とヒートはお互い睨み合う。


「ヒート…なんでここにいるんですか」

「それはこっちのセリフだよ。まさかお前らも聖獣探しか?」

「聖獣探し…?まさかハカイダーもウルフを狙ってるのか!」

「ま、そういうことだ。さっさとお前を倒して聖獣探しを再開するか」

「簡単には倒されない!」


 獅子王は脚のベルトで繋いでいたアニマルチェンジャーを取り出し、アニマルストーンを嵌める。


『タイガーストーン!』

「アニマルチェンジ!!」


 アニマルストーンを回転させアニマルチェンジャーの引き金を引き、タイガーレッドに変身する。


「久しぶりに気分がいいんだ!後悔させんなよ!」




 ****




「あぁっ!!」

「一華っち!」

「つ、強い…」

「あのドリル、危険すぎるね〜……」


 上に取り残された鮫原たち4人。4人も変身しドリルハカイダーと戦っていたが、ドリルハカイダーの猛攻に苦戦していた。


「ふふっ…アニマルジャーどうやら苦戦してる様だねぇ」

「お前はエアーシュ!!」

「こんにちは。あら?1人いないねぇ。赤色はどうしたんだい?まぁいいか。お前たち聖獣は何処にいるんだい?」

「聖獣?まさかお前たちも聖獣が目的か!」

「あら、バレてしまった。まぁ隠してないんだけど。ドリルハカイダー、アンタは本来の仕事に戻りな」

「かしこまりましたー!!では失敬!」

「あ、待て!」


 ドリルハカイダーはドリルで地面を掘り潜ってしまった。潜って行ったドリルハカイダーを追いかけようとしたアニマルジャーの4人をエアーシュが扇子で強風を起こして足止めする。


「邪魔しないでよ〜!」

「残念だけど引く訳にはいかないんだ。これも全部デス・フューチャー様の為!!」

「デス・フューチャー?」

「という訳でアンタたちはここで終幕。おさらばって訳。このアタシが直々に遊んであげる」

「俺たちだって暇じゃねぇの!」

「早く獅子王たちと合流しないといけないんだ」

「ってことでおさらばは君の方ってこと〜」

「待っててね美咲ちゃん、俊野くん!!」

「「「「アニマルパワー解放!!」」」」

 

 4人がアニマルパワーを解放し、一斉にエアーシュに攻撃を仕掛ける。四方からの攻撃をエアーシュは余裕そうに眺め、その場で軽く回り扇子を仰ぐ。その瞬間竜巻が発生し、強風が吹き荒れる。強風に鮫原、鷹禽、熊沢が飛ばされるが、象谷だけがアニマルパワーで強化された脚力で踏ん張っている。


「くっ…!エレファントハンマー!」

「なんて踏ん張り」


 象谷が振り下ろしたハンマーを扇子一本で軽く止める。ハンマーを止められたことに目を丸くしている象谷を足払いし、そのまま風で吹き飛ばす。


「ホークシューター!」

「シャークダガー!」


 たたみかけるように空から鷹禽がホークシューターで銃撃し、地面の中を泳いでいた鮫原が飛び出し斬りつける。それをエアーシュは空からの銃撃を風の盾で防ぎ、鮫原の攻撃を舞うようにかわす。


「私に空中戦を仕掛けるなんていい度胸ね。吹き荒れろ鎌鼬!」

「グハッ!!」

「ゲフッ!!」


 エアーシュが発生させた鎌鼬が近くにいた鷹禽と鮫原を襲い深傷を負わせる。そのまま吹き飛ばされた2人は深傷を負った影響で変身限界を迎え変身が解除される。


「海斗くん!空くん!」

「一華ちゃん行くよ!」

「う、うん!!」


 力に自信がある象谷と熊沢が連携しエアーシュに攻撃を仕掛ける。


「正面から向かってくるとは愚か。竜巻大旋風!!」

「あぁぁ!!!」

「きゃあぁぁ!!!」


 今まで以上に大きな竜巻が2人を襲う。今まで以上の強風に象谷も踏ん張りが効かず熊沢と一緒に竜巻にとばされそのまま2人も変身解除に追い込まれた。


「はぁ……新しい力を手に入れたって聞いたけど期待外れだねぇ」

「くっそ!強すぎる…!」

「流石ハカイダーの幹部…!」

「これはまずいね〜……」

「こんなところで……」


 4人全員が地に伏し変身解除に追い込まれた。全員これ以上体を動かすことができない。そんな状況でハカイダーのもう1人の幹部プラスが現れた。更なる強敵の出現に4人は絶望に落とされる。


「エアーシュなに遊んでいるのですか?」

「プラス。別に遊んでた訳じゃないよ。現にアニマルジャーの奴らはこの有り様さ」

「ふふっ…いい気味ですね。遊んでないで早く聖獣探しを再開しますよ」

「分かってるよ。でもドリルハカイダーはまだ掘り当ててないのかい?」

「それがまだ……」


 ワオーーーン………!!!


「噂をすればなんとやら。丁度掘り当てたみたいですね」

「ならさっさと向かうとするか」

「黙って行かせる訳ねぇだろ…!」

「はぁ……煩いのは嫌いなんですよ。アニマルジャーを始末してから向かうとしますか」




 ****




「っ!!」

「はぁ……期待外れだ」


 ヒートと一騎打ちで戦っていた獅子王だったが調子がいいヒートに獅子王は歯が立たなかった。ヒートは退屈そうにパイプの装飾がついている大剣を振り回している。結果で言えば獅子王は瞬殺だった。


「ゲホッ…!まだまだ!」

「その根性だけは認めてやるよ。だけど根性だけじゃどうにもならないのが戦いってもんだ!熱剣塵刃!!!」

「うあああぁぁああああ!!!!」


 膝をつきながらなんとか立ち上がった獅子王に容赦なく技を繰り出しそれをモロに食らった獅子王のからだが大きく吹き飛び、崖の下へ落ちていく。


「これで終わりか。つまんなかったな」

「獅子王さん!!」

「女?」

「ヒート……!」


 獅子王が崖から落ちたのを見た美咲は隠れていた木の陰から飛び出し獅子王が落ちた崖を覗き込む。崖はここから結構な高さがあり生身の人間が落ちたらひとたまりもないだろう。崖から落ちた瞬間獅子王の変身が解除されてしまった。変身するのに必要なアニマルチェンジャーも崖の上に残されてしまった。美咲は残された獅子王のアニマルチェンジャーを胸に抱え、獅子王の身を案じるばかりだ。


「そんな……!」

「おい女」

「ひっ…!ち、近づかないでください!!」


 美咲は抱えていたアニマルチェンジャーの銃口をヒートに向ける。怯えた表情の中に抵抗の意思が見える美咲の顔を見てヒートは胸の中で何かが燃える様な感覚を覚る。そしてヒートは今この時、目の前にいる人間が自分が前に会っていた人間の女だと理解した。


「お前…」


 ゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!!


「なに!?地震!?」

「いや、これは……」

「きゃあああああ!!!」


 突如地面が大きく揺れ、崖の近くにいた美咲の足場が崩れる。足場が崖の下に崩れ、それとともに美咲の体も崖の下へ放り出される。


「っ!」


 このまま落ちればきっと助からない。空中で体勢を立て直せるほど美咲の運動神経は良くはない。美咲は瞳を固く閉じ、訪れるであろう衝撃に構える。


「(私、ここまでなのかな…。獅子王さんは無事なのかな。無事でいてほしい。もし獅子王さんが助かったのなら私も運が良ければ助かるのかな。お父さん、ごめんなさい………)」




 ****




 崖の上にただ1人残されたヒート。今起きている状況をあまり飲み込めていないが、体が咄嗟に動いていた。ヒート自身も何故こんなことをしているか理解ができなかった。ヒートの身体は崖を飛び降り、ヒートの身体は宙を漂っていた。


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