第14話 眠れる狼
「あらおかえり。随分早かったね」
「おう。なんか用ができたみたいで解散になったわ」
美咲と別れ拠点に戻ってきたヒート。拠点に1人残ってたエアーシュがヒートの出迎える。美咲と会うよう提案もとい脅したエアーシュだったがあまりにも早く帰ってきたヒートを怪しげに睨んだが、理由を聞いて納得したようだ。
「それは残念だねぇ。もしかしてヒートが何かやらかして愛想つかれたんじゃないかい?」
「俺は何もしてねぇよ。多分…」
「ま、いいわ。こういうのは何回もデートを重ねるのが重要よ。めげずに次よ、次!」
「なんで俺と人間をくっつけようとしてんだよ」
「敵を倒す為には敵のことをよく知ることが大事。前の戦いでは私たちは敵のことを知らな過ぎた。だから負けたのかも知れないわね」
「俺はそんなことしなくても勝てる」
「負けたじゃない。大昔に」
「グッ……二度と同じヘマはしねぇよ!」
「どうだか。それに噂をすればなんとやら。またプラスの奴しくじったみたいだね。まったく…尻拭いさせられるアタシの身にもなってほしいもんだい。それじゃ行ってくるよ」
どうやらアニマルジャーと戦っていたハカイダーがやられたらしく、倒れたハカイダーを巨大化させる為にエアーシュは文句を言いながら拠点を後にした。今回のハカイダーもプラスが作ったらしいがまた負けた様だ。
「誰もいなくなって暇になったな…。寝るか」
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「クソッ!また負けた!!」
「荒れてんねぇプラス」
「お、戻って来たのか」
壁に拳を叩きつけ荒れている様子のプラス。自身が作ったハカイダーがまた負けたことに腹が立っている様だ。それを宥めようともせず面白がって眺めているエアーシュに興味なさそうにあくびをしているヒート。この3人は仲間という認識はあまりなく目的のために一緒にいるという認識なのだ。
「どうしていつもこう上手くいかないんだ!」
「落ち着きなプラス。騒々しい」
「っ!はぁ……まぁいい。今回はそこまで期待していなかった。そもそもヒート。貴方、最近何もしていないのではないですか?最近のハカイダーは私ばっかり作っているし、エアーシュは倒れたハカイダーを復活させ巨大化するという特別な役割がある。なのに貴方は最近人間の街におりて遊んでばかり。職務怠慢ですよ」
「確かにそうかもなぁ。だけどいまいち気分が乗んねぇんだよ」
「気分!?」
「まぁプラスの言う通りかもね。今日はいいとしてもこの先も気分が乗らないからと言って仕事をサボられるのはアタシだっていい気分じゃない。だからと言って気分が乗らない状態のヒートはあまり信用できないからねぇ。何かヒートの気分が上がるようなことがあればいいんだが…」
「ふふ…実はいい情報を手に入れたんです。これを聞けばヒートでも少しはやる気が出ると思いますよ」
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「みんなお疲れ様。今日もいい戦いぶりだったね」
ハカイダーを無事撃破したアニマルジャーたちはアジトへ戻って来ていた。各々お気に入りの場所で寛いだり疲弊した体を休めていた。
「疲れた〜!」
「お疲れ様です。熊沢さん。それにみなさんも。はぁ…それにしても今日に限ってハカイダーが出現するなんてついていません……。あ、そういえばお父さんとみなさんはどうしてあの喫茶店にいたんですか?」
「え、あ…いやぁ……その……」
「あはは…」
誤魔化すのが下手な獅子王と鮫原が動揺を隠しきれていない。目を逸らしながら冷や汗を流している姿はいかにも嘘をついていますと物語っている。
「たまたま喫茶店にみんなで訪れていたんです」
「そうそう。期間限定メニューがあったらしくてみんなで行こうってなったんだよね〜」
「あ、そうだったんですか。あれ?でも期間限定メニューなんてありましたっけ?」
「隠しメニューらしいよ〜」
「それは気になりますね。今度頼んでみます」
美咲は同い年の相手とあまり話すことがなく嘘をつかれるという経験があまりなかった。それゆえに相手が嘘をついていると気づけないのだ。美咲は人の悪意や嘘に鈍感だったのだ。
「あの2人嘘つくのうま過ぎない?」
「す、凄いですね…」
「詐欺師なんじゃねぇの?」
「鮫原?」
「げっ!鷹禽せんせー……」
「担任を詐欺師呼ばわりとは酷いな」
「ごめん!悪意はねぇから!!」
「宿題を増やすことだってできるんだからな?」
「本当に許して!!これ以上増やされたら手に負えなくなる!」
「まぁまぁ取り敢えず話はそこまで。実はさっきとある信号をキャッチしたんだ」
さっきまでとは打って変わってえらく真剣な表情をする豊凱。それに釣られて全員姿勢を正し顔を引き締める。美咲は豊凱の言葉に合わせモニターを操作する。
「みんながハカイダーを撃破した直後とある山で生態信号をキャッチしたんだ」
「その山がここです」
「少し遠いですね。それに生態反応ってなんですか。豊凱さん」
「実はみんなに言っていなかったが聖獣はここにいる5体だけじゃない。まだ長い眠りについている聖獣が4体いるんだ」
「4体!?」
「そして今回キャッチした生態反応はおそらく聖獣ウルフです」
「聖獣ウルフ……そんな聖獣が存在していたなんて」
「今まで黙っていてすまないね。目覚めた時に言おうとは思っていたんだ。それじゃあ本題だ。君たちには目覚めた聖獣ウルフを保護してきて欲しいんだ」
「保護?ウルフはこのままこっちに来てくんねぇのか?」
豊凱の保護という言葉に疑問を抱いた鮫原は豊凱に質問するし、その質問に対して美咲が答える。美咲はモニターを操作し聖獣ウルフの姿を写し出す。
「聖獣は1人ではパワーが上手く制御できないんです。そのパワーを制御する為には相棒となる人間が必要なんです。今目覚めたウルフには相棒となる人間がおらずパワーを制御できず不安定です。ですので皆さんにはウルフの相棒になってもらい保護してもらいたいんです」
「なるほど〜。聖獣の巨体が暴れたら山が崩れて近隣への被害が凄そうだもんね〜。でも、それだけじゃないんでしょ」
「察しがいいね、象谷。そう。単に保護だけの目的じゃない。聖獣の巨大な力。ハカイダー達が放っておく訳ない。ハカイダー達に盗られる前に保護をする。それが君たちに課す今回の任務だ」
「重要な任務だな。ハカイダーに聖獣を盗られたら何に使われるか分からない。聖獣の為にも世界の為にも必ずウルフを保護しなくては」
「そうだね!暴れるのだってウルフも苦しいだろうから私たちが助けてあげなきゃ!」
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場所は変わりハカイダー拠点。
「新しい聖獣ぅ?」
「そうです。そもそも私たちが古代に戦った時には聖獣は全部で10体いたじゃありませんか。残りの聖獣は古代の戦いで眠りについていた様ですが、そのうちの1体が目覚めた様です。とある山で聖獣特有の生命エネルギーを検知したので間違いないと思います」
「確かにいたねぇ。他の聖獣たちはどこに行ったのかと思ったけど眠りについてたなんて。だけどアタシたちも運がいい。その聖獣を奪っちまえばアイツらの戦力を大幅に削げるって訳だ!」
「はっ!確かにおもしろそうだ!聖獣を奪う為にアニマルジャーの奴らも本気でかかってくるだろ。こりゃ楽しくなりそうだ!!」
「ヒートがその気になってくれて助かりましたよ。戦力はあるだけいいですからね。それではハカイダーを作りましょうか。聖獣が眠っているのは山。山を切り開けば聖獣捜索もやりやすくなるでしょう」
「おっし!それじゃあ俺が作る。久しぶりに興奮してきたからなぁ。いいハカイダーが作れそうだ!」
さっきまでと違ってやる気に満ち溢れているヒートは禍々しい柱に手を当てる。しばらくすると柱が蠢いて柱からハカイダーが生まれる。生まれたハカイダーは両手にドリルの様なものがついていてもぐらの様な姿をしている。このドリルで山を切り開くつもりなのだろう。
「両手にドリル…いかにもヒートらしいハカイダーだねぇ」
「スマートさには欠けますが、まぁいいでしょう」
「俺渾身のハカイダーだ!強さには自信があるぜ」
「俺はドリルハカイダー!破壊だ!破壊だー!!」
「やる気十分だな。おし!それじゃあ行くぞ!」
「アタシ達も行きますかねぇ」
「ヒートと戦うのは癪ですが仕方ありませんね。これも目的の為です」
ヒート、プラス、エアーシュ、そしてドリルハカイダー。異形の4人が聖獣が眠る山へ向かう。その山で大きく運命が動き出すのをヒートはまだ知らない。




