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第12話 父親の受難


「実はみんなに相談があるんだ」


 豊凱がアニマルジャー全員をアジトへ招集し、神妙な面持ちで話し始めた。普段しない表情に、相談ということで全員が身構える。


「相談ってなんですか?」

「急に連絡があったからびびったすよ」

「あれ?美咲ちゃんは?」

「忙しいんじゃなぁい?」

「美咲さんがいないってことは、もしかして美咲さんに関することですか?」


 普段はアジトにいるはずの美咲がこの場にいないことに皆が疑問を持ち自然と相談が美咲に関することではないかと察した。その考えは間違っておらず、豊凱は美咲に関して相談するためにアジトへ全員を招集したのである。


「あぁ…実はそうなんだ」

「美咲さんのことで相談って美咲さんに何かあったんですか?」

「もしかしてトラブルに巻き込まれたとか!?」

「な!それは大変じゃないですか!」

「え〜?美咲ちゃんがどうかしたの〜?」

「どうなんですか司令!!」

「実は……」

(ゴクリ…)


 全員が固唾を飲んで豊凱を見つめる中、豊凱が話し始める。


「美咲に好きな人ができたみたいなんだよ〜!!」

「……え?」

「そんなことっすか?」

「解散だ、解散」

「僕忙しいんだけどな〜」

「あ〜……」


 全員がくだらないと反応を示し、解散しようとする。唯一、美咲に好きな人がいたことを知っていた一華はバレちゃったのかという様な反応をする。豊凱は一人娘である美咲を花の様に大切に育ててきた。そのかいあって美咲は世間的に言われる魅力的な女性に成長した。そんな美咲に近づいてくる男は少なくなかったが、美咲がそれに気づく前に豊凱がいつも牽制し、変な男が寄りつかない様にしていた。いわゆる過保護というものである。そんな美咲がいつの間にか知らない男のことを好きになっているかもしれないと分かったら豊凱が黙っていられるはずがない。


「でもさ〜気にならない?美咲っちが好きな人って」

「…し、正直気になりますね」

「確かにそうかも〜」

「おいお前ら、人の恋路を勝手に詮索するなぞ無粋だぞ」

「あはは〜…」

「そうなんだよ!最近何かぼーっとしてること多いと思ってたんだけど、この前誰かと電話した後から急にソワソワし始めたんだよ!」

「一華っちと美咲っちは仲良いっしょ?なんか聞いてないの?」

「え!?え、えっと〜…き、聞いてないよぉ…」


 嘘をつくのが苦手な一華はバレバレの嘘で全員に一華が何か知ってることを察した。空を除く全員が一華が好きな相手のことに興味深々であり一華に詰め寄っていく。


「なんか知ってっしょ!」

「し、知らないって〜!」

「一華くん!何か知ってるなら教えてくれ!!」

「え〜っと……」

「頼む!」

「う、うーん………」

「もし教えてくれたら焼肉を奢る!」

「!!」

「デザートもつける!」


 食欲が旺盛な一華は豊凱の魅力的な提案により閉ざしていた口を開き始める。


「…し、仕方ないなぁ。あんまり気乗りしないけど。えっと、前に美咲ちゃんと遊園地に行った時に好きな人ができたって聞いたの。それでたまたま知ってたんだ。みんなに言うのもあれかと思って言わないつもりだったんだけど…」

「それでどんな奴だ!」

「司令」

「な、なんだ空くん」

「いくら父親といえ娘の恋愛事情に首を突っ込むのはどうだと思います」

「うっ…」


 確かにと思いつつも美咲が悪い奴に引っかからないか心配な気持ちでせめぎ合っている。美咲が心配だと思いつつももしこのことで美咲に嫌われたらと思い悩み始める。 


「でも鷹禽せんせー。美咲っちの好きな人がどんな奴か気にならねぇの?」

「そ、それは……」

「やっぱり鷹禽せんせーも気になってんじゃーん!」

「だ、だが…やはりこういうことはよくない」

「でもさぁ〜美咲ちゃんってあの性格的に悪い人にコロって騙されちゃいそうじゃない〜?」

「それは…あるかも」

「やっぱり心配だ!相手を突き止めてどんな奴か一目確認しないといけない!」

「はぁ……私は忠告しましたからね」

「えーっと確か、ツンツン跳ねてる黒髪にピアスを沢山つけてるって言ってた気がする」

「情報少ないな…」

「みなさん集まってどうされたんですか?何か話してたみたいですが」


 突如アジトへやってきた美咲に全員が驚き何もなかったかのように普通に振る舞う。その様子を少し不思議に思った美咲だったが深掘りするほどでもないし、知られたくなさそうだと感じたのでそっとしておくことにした。


「ううん!なんでもないよ!それより美咲はどうしたの?」

「えっとお父さんに用があったのですが、どうやら忙しそうなので後で大丈夫です」

「いや、ちょうど暇になったことだし大丈夫。それで用ってなんだ?」

「あ、あの…今度の日曜日に少しお休みをいただきたくて」

「日曜か?別にいいが…何か用事でもあるのか?」

「え、えっと…その…知り合いと遊びにいく予定があって……」


 その言葉を聞いた瞬間に全員が一華に目を向ける。美咲は一華以外で遊びに行くほど親しい友人はいない。だから今回も一華と遊びに行くのかと思ったが美咲の言葉に全員が違和感を覚えた。美咲は知り合いと遊びに行くと言った。その相手が一華なら知り合いという言葉は使わないはず。それを確かめるために美咲と遊びに行く約束をしているかをアイコンタクトで確認した。アイコンタクトに気づいた一華は首を軽く振り否定を示した。


「えっと…みなさんどうされましたか?」


 一瞬の沈黙に美咲が疑問を持つなか全員の思考が一致した。


(その知り合いってもしかして好きな人か??)


「あ、あの……もしかして都合が悪かったですか?」

「え、あ、いや!そんなことない!うん、もちろんいいよ!」

「よかったです…でもハカイダーのこともあるのでお休みをもらえるか心配で…」

「まぁ一日くらいなら大丈夫だとは思うけど、美咲が休みが欲しいなんて珍しいな」

「大事な予定なのでどうしても行きたかったんです」


 そう言う美咲の頬が少し赤く染まっていてその顔はまさしく恋する乙女そのものだった。その顔を見て全員は相手が美咲の好きな人だと確信した。それと同時にあの美咲にこんな顔させる相手がますます気になり始めた。


「え、えっと…その知り合いってもしかして男だったりする?」

「えっ!?あ、え、い、一応そうですけど…で、でも本当にただの知り合いですから!」

「あ、ちょっ美咲!」


 そう言い残して美咲はエレベーターへ駆け込んでアジトを後にしてしまった。男の人とましてや好きな人と出かけることがバレたことがよほど恥ずかしかったのだろう。美咲は相手が好きな人とはバレてはいないと思っているが全員にバレバレである。


「え、えっと豊凱、さん?」

「司令だいじょ〜ぶ〜?」

「完全に固まってしまいましたね」

「……だ」

「司令?」

「尾行するぞ!!相手が美咲に相応しい奴か確かめてやる!!」

「さ、流石にやりすぎじゃないすっか?」

「いや、もし悪い男だったらどうするんだ!絶対に確かめてやる!」

「ごめんね…美咲ちゃん…」


 豊凱を止めきれなかったことをこの場にいない美咲に一華は謝る。流石に尾行はやり過ぎじゃないかと豊凱を止めようとしたが、こうなった豊凱を簡単に止めることはできずにそのまま日曜日を迎えてしまう。


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