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02・ミーニャ


 朝。

 大きな木々の合間から日差しがさして、冷たい空気が吹き抜ける。

 季節は春先といったところかしら。

 ここがニホンと同じ気候かは知らないけれどね。


「ん~……ふにゃ」


 あら、起きたのね。

 私に抱きついたまま眠っていた小さな人のような女の子。

 眠そうな目であたしを見て首を傾げ、辺りを見渡す。


『今日からあたしが、あなたのお母様よ』


 女の子はさらに首を傾げたわ。


「おかあしゃま?」

『そうよ。あなたのお名前は?』

「みーにゃ」


 ……ちょっと発音が怪しいわね。

 言葉の意味は意図を感じ取れるにしても、名前の発音は聞いたままよ。今のは「みーにゃ」とも「みーな」とも聞き取れたけど。かわいいから「ミーニャ」でいいかしら。


『おはよう、ミーニャ。お腹は空いてる?』


 ミーニャはお腹を抑えて首を傾げ、「しゅいたー」と言ったわ。

 なんてかわいい。


 とりあえず、この子は人の子供と認識して育てましょう。

 母親はほぼほぼ人間だったものね。

 見たかぎり、ミーニャは人間の二歳か三歳児くらいかしらね。乳離ができているのは助かるわ。


 あたしはひげを揺らして辺りを探る。

 あたしたちを遠巻きに見ている獣がいるわね。そこそこたくさん。獣と言うより(あやかし)かしら。ここは妖怪の森?

 今は放っておいてもいいでしょう。

 近くにいるのは雑魚ばかりみたいだし。

 それより、水気を感じるわ。少し行った先に川があるみたい。

 魚がいたら獲りましょう。


 あたしたちの周りに結界を張り、ミーニャを連れて川に向かう。


 しばらく行けば、開けた場所に出たわ。少し高台になっていて下に川が流れているの。うん、ここにお家を建てて住処を作りましょう。人間にはお家が必要ですものね。

 けど、まずは腹ごしらえ。

 川をのぞけば、まるまるとした美味しそうなお魚が。大きいわね。鯉に似てるけどもっと大きい。生意気にもあたしを見て口を開けて襲いかかってきたから、爪を伸ばして口から尾まで貫いてやったわ。それを反対の前足の爪で鱗を剥ぎ内臓を取って鬼火で炙る。うん、いい感じ。

 あらあら、ミーニャ。よだれが。

 食べてみたら味もなかなかよ。

 塩か醤油が欲しいところだけど、そのうち考えましょう。

 ミーニャは喜んでもりもり食べてくれたわ。


 さて、じゃあお家を作りましょうね。


 家の作り方は昔、化け雀衆に教えてもらったの。妖術を駆使して造るお家よ。宿に巣食った化け鼠退治を頼まれて、それと引き換えにね。雀たちが作っていたのは立派なお宿だったけど、あたしたちのお家はそこまで大きくなくていいわね。人の町に飽きたら山の奥で庵を作って暮らしていたからそれくらいのを造りましょう。そういえば、お山では化け狸たちはお寺を作っていたわね。なぜかわざと古寺を。趣味かしら。

 まあいいわ。


 周りの木々をいくつか倒して材料にするわ。

 妖力を込めた爪でシャッシャッシャッ。

 ミーニャはあたしのそばで見ているように言ったわ。怪我をしないよう結界を張ってね。

 柱や床板に加工した木材に妖力を纏わせ命じれば、自ら動いて組み上がっていくの。簡単でしょ? ああ、屋根は後で葦でも探して葺きましょう。


 朝からはじめて夕方までかかったわ。

 出来上がったのは、六畳一間と台所にする土間が一つ、それに縁側だけのこじんまりしたお家よ。徐々に手を入れて住みやすくしましょうね。

 結構疲れたけど、あたしの妖力はまだまだ尽きないわ。あたし、けっこうすごいのよ。ミーニャは手を叩いて喜んでいたわ。面白かったみたいね。ご機嫌ね、よかった。


 最後に、家の周囲に印を刻んだ石を置きしっかりめの結界を張る。

 母娘の二人暮らしですもの。セキュリティは万全にしなきゃね。


 忙しくしているうちにすっかり日が暮れてしまっていたわ。


 その日は昼も夜もお魚になってしまったけど、明日はもっと色々と探してみましょうね。




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