イカサマ
「勝敗はもう着きましたよ、お客様」
上機嫌に鼻を鳴らし、己が出したトランプの数字とスートを見た。
「貴方が負けて、僕が勝ちました。これは貴方自身でも理解出来るほどに明瞭な事ですよ」
ポーカーテーブルに置いたカードを一枚取り妖美にキスをする。
「天の女神は僕は微笑んだ。…ただそれだけなのですよ」
心の名を関する女王を見せ付けた。ベットしたコインが自身の元へ集まるのを見て優越に浸る。
「お客様のコインは、ゼロ…残念ながらもう僕に挑む事は出来ません。改めて出直してきて下さいね」
ニッコリ営業スマイルを見せれば、激しい剣幕で僕へと捲し立てる彼に態とらしく目見開いた。
「…僕がイカサマをしているとでも?まさか!正真正銘、正々堂々、貴方と戦ったというのに。それに…ほら」
くすりと笑って、椅子から退いた。
「僕がイカサマをしていないという証人は…沢山居るでしょう?」
非難の目が彼に集まっている事に気付いた彼が、膝から崩れ落ちた。嘲笑を零し退室の為扉へと。ふと、思い出したかの様にチャレンジャーへと振り返った。
「ああ、そうだ、お客様。…魔法などと、宣わないで下さい」
袖の下に潜めたハートの女王の感触を確かめ、恬淡と彼に告げて扉を抜けた。