99. 剛腕、しばかれる ②
本日二回目の投稿です^^
「では、後の相談は今から、私共が致しますので、ストラス様は一旦、ダキア伯爵邸にお戻りになって下さいませ」
「そうですな、馬車に付いて居りますフットマンやメイドと共に、先に戻って頂けますか、お坊ちゃ、グフン、ストラス様」
両家の執事に促され、ストラスはシンシアに歩み寄り、胸元から宝石箱を取り出しながら言う。
「我がシンシアよ、名残惜しいが暫しの別れだ、今日は素晴らしい日であった、記念にこれを贈らせて欲しい、私にとって一番の宝物なのだが……」
言いながら宝石箱の蓋を開け、中を見せるストラス。
「まあ」
笑顔で中を覗き込んだ瞬間、シンシアの動きが硬直した。
「気に入ってくれたかな? シンシア?」
「……おい」
「? シンシア?」
次の瞬間、首を傾げたストラスの胸ぐらを掴んで捻り上げたシンシアはどすのきいた声で迫ったのである。
「おい、ストラス、てめぇこれをどこで手に入れたぁ? きっちり話して貰うからなぁ、覚悟しろよ! おい、笛!」
「は、はい」
ピイィィィィッ!
シンシアの言葉を聞いたメイドがポケットから銀色の笛を取り出して吹き鳴らした。
甲高い音色が屋敷中に鳴り響くと、あちらこちらから衛兵が走って来る足音がガチャガチャと近付いて来る。
事態の急変にストラスは軽くパニックを起こしながらもシンシアに聞いた。
「シンシア、これは一体、どう言う事なんだ? 俺には何が何だか――――」
「ふんっ! この悪党が白々しい事を、てめぇが今見せた髪飾りをアタシが知らないと思っていたんだろうがなぁ、こいつはアタシの親友、バーミリオン侯爵家のアメリアの物だ! アタシが見間違える訳が無いんだからな、そもそもこれはアタシがアメリアの誕生日に贈った物なんだよ! さあ、さっさと白状しな! これをどこで手に入れたんだいっ! ストラスぅっ!」
胸ぐらを掴んだ手にさらに力を込めるシンシア。
華奢な体のどこにこんな力が、ストラスはビビりながら慌てて答えた。
「も、貰ったんだ、嘘じゃない」
くらあっ!
シンシアは眩暈を感じた。
掛け替えの無い親友であるアメリアが、荒くれ冒険者のストラスによって大切な髪飾りを奪われ泣き崩れる姿。
その横で、手下どもを引き連れニヤニヤしながらアメリアに向けて『貰ってやるぜ、へへへへ』と嘯く大男のストラス。
恐怖に顔を歪めて後ずさるアメリアにじりじりと迫る冒険者たち。
彼女の中に生じた風景はこんな感じであった。
シンシアは再び恫喝に近い声を上げた。
「それでどうしたんだっ! 犯ったのか? それとも殺ったのか!? 答えて見ろよ! この悪党めがっ!」
バタバタバタバタバタ!
シンシアが叫び終わると同時に、警備の衛兵たちが手に手に武器を構えて応接室の中になだれ込んでくる。
ストラスは愛剣であるグラディウス、魔剣グルムを抜く訳にもいかず、困り果てて叫ぶのであった。
「ヤルって何をだよ、訳が分からないが説明させてくれないか、シンシア!」
シンシアは胸ぐらを掴んでいた手を離して答えた。
「ふんっ! 聞かせて貰おうじゃないか! それまで牢に入って貰うよストラス! バーナード、バーミリオン侯爵邸に連絡を入れろ! おじさまに伝えるんだよ、アメリア失踪に係る不届き者を捕まえたと、すぐこちらに来るように伝えるんだ! おい、こいつを地下の牢屋に連れて行くんだよ! 暴れたり逃げようとしたら殺しても構わないからね!」
『ははっ!』
「し、シンシア」
「うるさい! 話は後だよ後! バーミリオンの悪魔と呼ばれたおじさまと一緒に聞いてやる! 覚悟おしっ! 連れて行きな!」
逆らう事無く素直に地下の牢獄に拘束されるストラスと執事、後から連れて来られたフットマンやメイドたちも、揃ってタギルセ伯爵邸の地下牢に押し込められたのであった。
中年の執事がストラスに向けて言うのであった。
「お坊ちゃま、この仕打ちは何でございましょうか? 余りにも無礼、礼を失して余り有る行為と言わざるを得ませんが…… これからどうした物でしょうか?」
一斉に頷きを返すフットマンもメイドたちも、いづれ一騎当千、ゴールドランク冒険者と比べても見劣りする事無い、ダキア家選りすぐりの強者たちである。
全員の視線を受け止めたストラスは、胡坐ををかいて答えた。
「ふむ…… 何が何やら訳が分からぬが…… 心配せずとも良い、いざとなればこの俺自身が実力を発揮してこの牢も、いいや、この屋敷すら粉塵と化してくれよう! だから、お前たちももう少し辛抱してくれい! なに! ちゃんと説明すれば分かって頂ける事だろう、我が妹、最愛のエマの御父上なのだからな!」
「ははっ!」
執事の肯定に合わせて、一斉に首を垂れるダキア伯爵家の一同であった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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