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97. 令嬢、野営 ④

本日二回目の投稿です^^

 デニーはエマのショックに気が付いていないようで、炎を見つめながらやや自嘲(じちょう)気味な微笑みを浮かべて言う。


「まあ、でも、今でも待っていてくれるかは分からないけどね…… 僕、全てを放り出して冒険者になってしまったから、ね……」


 どこか寂しそうだ。

 エマがショックから立ち直り、デニーを元気付けるように言った。


「きっと大丈夫でしてよデニー、だってデニーはとっても素敵ですもの! 婚約者の女性はきっとデニーを待ち続けていらしてよ」


 自分の事よりデニーが寂しそうにしているのが耐えられない、エマはそう感じていた為に、自然に言う事が出来た。

 この言葉ににっこりと微笑んだデニーはエマの顔に向き直って言う。


「ありがとうエマ、励ましてくれて嬉しいよ、ところでエマはどうなの? やっぱり婚約者とか心に決めた人とか居たりするのかい?」


「わ、私ですの? 私…… 私には婚約者はいませんわ、というか居たのですけれど、先方からお断りを頂いてしまって…… 破談にされてしまったのですわ、それで冒険者に…… ね♪」


 一所懸命に笑ってはいた物の、はっきりと影を差してしまったエマの表情を見たデニーが慌てて言う。


「ごめんエマ、デリカシーの無い事を聞いてしまったね…… 済まなかった」


 エマは少しだけ微笑んでデニーに返す。


「私の事は良いのですわ、もう随分と昔の事のように感じていますし、大丈夫なのですわ」


 エマの気丈な言葉にも(かか)わらず、尚もデニーは励ましの言葉を続けた。


「辛かっただろうけど、エマならきっと幸せになれる筈さ! 奇麗だし、明るいし、頑張り屋だし、正直者で良い人だ! エマが望めばどんな男性だって断る訳無い、きっと喜んで受け入れてくれると思うよ、だから元気を出して、エマ」


 これは効いた。


 婚約破棄の件は自分なりに受け入れたし、国民の為にならない内戦を避ける為にも自分が実家に帰る事も割り切っていたつもりだった。

 冒険者になった今の自分や、仲間達との暮らしにも満足していた。


 だが、頼もしく思い、不思議と気が合ったストラスに対する憧れとは違い、デニーに抱いた感情はハッキリとした恋慕(れんぼ)、異性に対する親愛の情に他ならない、エマにとっての初恋の相手なのだ。

 その相手に告白しようと心に決めて、その直前に婚約者の存在を知らされ、更に過去の婚約破棄を思い出し、その上今フラれたばかりの相手に大丈夫だと励まされる……


 色々な感情が混じり合った結果、エマは立ち上がってデニーに背を向けた。


「え、エマ?」


「お話に付き合ってくれてありがとうですわ、デニー、貴方の仰る通り私は大丈夫でしてよ、さて、元気も出た事ですし、明日は大事な決戦ですわ! キャリッジに戻って眠りますわね! 大変ですけど見張りの方、お願いいたしますわ、デニー」


「あ、ああ、おやすみエマ」


「ええ」


 振り返らずキャリッジに歩いて行ったエマは、そのまま馬車に乗り込むと後ろ手で扉を静かに閉めた。

 キャリッジの中でエマは思っていた。


――――良かったのですわ、ギリギリ間に合ったから、涙をデニーに見られずに済みましたの、本当に良かったのですわ、良かった……


 そこまで思うと耐え切れなくなり、座席に置いた寝具に顔を埋めて声を殺し泣き出してしまうのであった。


 焚火の炎に視線を戻したデニーは小さく呟いた。


「エマ…… 許されるなら、僕は……」


 少し離れた二つのテントの中からは、二人の男と一人の女のすすり泣く様な嗚咽(おえつ)暫く(しばらく)の間止むことなく漏れ続けるのであった。



 翌朝朝食の場に現れたエマは、いつも以上に明るく振舞っていたが、その目は泣き腫らしたまま朱色に染まっていたのであった。

 ついでに言えば、イーサン、デビット、マリアの三人の目も同じく赤く腫れていたし、何故かは判らないが、フったデニーの両の目もバーミリオンに染められていたのである。

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

ブクマ、評価を頂けましたら狂喜乱舞で作者が喜びます^^

感想、レビューもお待ちしております。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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