96. 令嬢、野営 ③
本日一回目の投稿です^^
今回の決戦に備えて魔道具屋で購入した、魔石を稼働燃料にした室内灯が仄かに照らし出す馬車の内部を見渡したエマは首を傾げたのであった。
自分の向かい側で寝ていた筈のマリアの姿は見当たらない。
多分、小用にでも行ったのだろうと判断したエマは、しめしめと言った感じで笑みを浮かべるのであった。
――――ちゃーんすっ到来、ですわっ!
そう思ったエマは、静かにキャリッジの扉を開けて外に出ると、焚火の前で自らの愛剣レジルを抱いて炎を見つめていたデニーに話し掛けたのであった。
「デニー」
「どうしたのエマ? 眠れないのかい?」
「え、ええ、まあ、そうですわね…… ねえ、デニー、隣に座っても宜しいかしら?」
「勿論構わないけど、何か話でもあるのかい?」
ここ迄歩いて来た間にあった二つのテント。
最初はデビットのテントから聞こえて来ていたきゃっきゃっと楽しそうな男女の声と、二つ目のテント、イーサンが入ったテントからカリカリと聞こえて来ていた、何かを記すペンを走らせる音、恐らく生真面目なイーサンが本日起こった出来事を書き記しているのだろうと思えた音が、ピタリと止まったのである。
シーンと不自然に静まり返った野営地に、何も気が付いていないエマの声が響いたのである。
「ええ、デニー、貴方に聞いて置きたい事があってやって来たのですわ!」
「? そうなの?」
「ええ、ぜひとも聞いて置きたいお話があるのですわ! ねえ、デニー? 貴方の出自に係る話なのですけれど? 」
「お、お、おう? しゅしゅしゅ出自? い、い、いいい、一体なななな何だい?」
分かり易く狼狽えるデニー、思えばこんな姿を見せるのは初めての事である。
エマは心に決めた通りずばりと聞くのであった。
「デニー、貴方の体には青い血が流れているのではなくって? はっきり言えば家の名を持っているのでは無いかしら? 如何ですの?」
何故だろうか、デニーはあからさまにホッとした感じであった。
そして、安心した表情のまま気楽に答えた。
「そうだね、エマ、その通りだよ、家の名を明かす事は出来ないけれど、君の見立ては的を射ているよ、エマ」
エマも予測の通りだったので、落ち着いて返す。
「やっぱりそうでしたのね、言えないと言うのならば聞きませんことでしてよ、但し、爵位だけなら聞いても良いでしょう? 教えて下さいな」
「……ごめん、位階、いいや爵位についても教えられないんだ」
「まあ! 」
エマは驚いた声を上げた後に考え込む。
――――家名はまだ分かりますけれど、爵位だけでもダメ? 用心深いと言うか何というか…… はっ! 爵位で特定される可能性を恐れている? という事なのですわ! という事は侯爵以上、少なくとも伯爵以上決定ですわね! これは本格的に可能性出て来たのでは無くって? け、結婚!? まあ、どう致しましょう♪ はっ! 浮かれてしまいそうになりましたわ、こんな押せ押せどんどんっぽい場合こそ慎重にならなければいけませんわね、ステハムの件もあった事ですし…… さりげなく聞いてみるのですわ
「ごほんっ、もう一つ聞きたいのですけれど、デニー? 貴方って将来を誓い合った女性とか、居られるなんて事は有りませんわよねぇ?」
「将来を誓い合った女性? 婚約者の事だったらいるけど?」
ガ~ン! ガックシ! ちーん! ピエンパオンプオン……
訳の分からない音がエマの頭の中で再生を繰り返していた。
エマは気が遠くなるのを何とか耐えて反射的に口にした。
「ま、まあ、婚約者が、いたのね、やっぱり……」
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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