86. 令嬢、踊る ② (挿絵あり)
本日二回目の投稿です^^
クリスは利に聡い男であった。
この二週間ほどの期間にルンザでの二人の評判を調べ尽くし、冒険者たちの間でカリスマとして君臨している事を掴んでいたのである。
今後、冒険者を相手の商売を始めるに当たり、このネームバリューを使わない手は無いと心に決めていたのだ。
イベントに登場した二人と親し気に語り合う自分の姿を冒険者や街の住民に見せつけた上で、クリス商会はあの二人の肝いりで開店したのだと実しやかに流布すれば、まあ事実そうなのだが、商会が繁盛する事請け合いだと考えていたのである。
そんな思惑に気が付く事も無く、エマとデニーは『木だったのかな?』『人間にしか見えなかったですわ』などと語り合いながら、マチルダに変わって、ギルドの買取嬢から配置転換された女将見習いミランダの待つ宿に向けて歩き去って行ったのである。
翌日の夕方、日が沈んで薄暗くなった頃、エマとデニーは仲良く並んでクリス商会へと姿を現すのであった。
「これはこれはエマとデニーじゃないですか! 懐かしいなぁ、二人して私の店の開店を祝いに来ていただけるとは感激です! 持つべきものは知己ですなぁ! さあ、さあ、今日は隣の広場で楽しんで行ってください! 私もお供いたしますよぉ! いやあ、共に過ごした昔を思い出しますなぁ! ささ、どうぞ、こちらへ!」
昨日会ったばかりなのにこの言い様である、周囲に集まった人々にはクリスとエマ達がかなり親しい間柄に映った事であろう。
流石はクリスである。
「エマ様、デニー様、馴れ馴れしい態度を取ってしまっていたとしたらお許しくださいませ! 念願の開店を迎えて私少々緊張しておりまして……」
事後のフォローも忘れていなかった。
「ええ、嬉しいでしょうねぇ、クリス、別に構わなくてよ」
「そうだよねぇ、クリス、気にせずとも良いぞ」
「ありがとうございます」
ちょろい! クリスはそう思っていた。
普段はベンチの類など無かった場所に、わざわざ店内から立派な椅子を運んで来させて二人に薦め、ちゃっかり自分も横に座るクリス。
商会の店員らしい若い娘が持ってきた料理を二人に勧めさせながらクリスが蘊蓄を披露した。
「デニー様、この料理を何と呼ぶかご存じですよね?」
デニーが当然と言った顔で答える。
「サンドウィッチではないのか?」
「ご名答でございます、では何故この食材をパンで挟んだ料理がサンドウィッチと呼ばれるようになったかご存じですか?」
「むっ、それはそう呼ぶ物だとしか知らないが…… お前は知っているのか、クリス?」
クリスは満面の笑顔で答える、我が意を得たり、そんな感じだった。
「ええ、私が調べた限りでは、遥か昔、どこからともなく現れた夫婦の旅人が居たそうでして、その二人が名付けて、作り方と共に人々に教えて回ったらしい、と、こういう訳だそうで」
「まあ、お馴染みのご夫婦ですのね! 本当に多才なお二人なのですわ!」
嬉しそうに叫んだエマは、既にどこからか現れた御夫婦信者の様であった。
美味しい料理を頂きながら、一々蘊蓄を披露するクリスの声を聞いていたエマ達はイベントの盛り上がりを確かに感じていたのである。
クリスが説明してくれた、薄い小麦の皮でお野菜と僅かばかりのお肉を包み込んで焼いたものはヤキギョーザと呼んでいるらしい。
クリスの蘊蓄はこうだ。
「この料理を伝えたのも、例の夫婦の旅人らしいですよ! ねぇ、凄いですよね! エマ様! 考えても見て下さいよぉ! こんなに次々と新たな料理法を伝えたにも拘らず、お二人の料理に自らの名は一切残していないのですよぉ! ねえ、エマ様、貴女歴史も得意だったですよね? ヤキギョーザですよヤキギョーザ! ねえ何の意味も無い言葉でしょう? 凄いですよね、謎のご夫婦って!」
エマは面倒くさそうに答える。
「まあそうですわね…… でももっと分かり易い名前を付けてくれたら良かったのではないかと思いもしますわね、そのヤキギョーザで有れば、『青野菜と香味野菜の肉餡、薄皮小麦包みの蒸し焼き上げ』ですとか…… ですわね」
クリスが言う。
「ああ、そう言う、流石はエマ様ですね……」
そんな無意味な会話を続けている間に、周囲はとっぷりと暮れて、広間の中央に灯された大きな炎が人々の注目を集める中、クリスに雇われていたのであろう、色鮮やかな装束に身を包んだ傭兵たちが、太鼓や笛、管楽器や小さな木製の打楽器を打ち鳴らし、吹き鳴らして音曲を奏で始めたのである。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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