78. 令嬢、特訓 ①
本日一回目の投稿です^^
アプリコット村の川を渡り少し進んで林を抜けた場所に、巨大な岩がゴロゴロと転がる荒れ地がある。
草木も生えていない乾いた景色は、ちょっとした不毛地帯になっていた。
生き物と言えば低級モンスターのヴァイパーがチロチロと赤い舌を動かしているくらいだ。
人間が足を踏み入れる事が無い魔境、それが見渡す限りに広がったこの場所の評価であった、十日前までは。
ドドドドドドッ!
勢い良く地面を均し続けるのはデビットであった。
前に掲げた自慢の鉄盾の左右、三十メートル程の範囲を自身の魔力に依る見えない盾、マジックシールドで押しながら、荒れ地の端から端へと、何度も往復しながら地面を平らにして行くのであった。
掛けている身体強化は既に二十を数え、最早人間か悪魔か、分らない境地までに至っていたのである。
デビットが均し終えた場所には、アプリコット村民の開拓班が穴を穿って、タブノキや黄色くなったら食べられるプラム、山ブドウや杏子の木を植え続けていた。
「ああ、ここにはデカイ岩が埋まっているなぁ! マリアさーん、お願いしますだぁ!」
シュンッ!
これまで、どこに居たのかわからないが、瞬で姿を現したマリアが村人に聞く。
「どれですの?」
村人が半分以上、土の中に埋もれた黒々とした岩を指さしながら答える。
「これですだ! どーです、壊せますがぁ?」
「ふんすっ!」
ドゴッオ! パラパラパラ……
マリアは答える代わりに黒い岩を拳で粉々に破砕して見せた。
「あわわ、ほんとすっげぇ力ですなぁ! またお願いしても?」
村人の問い掛けに、力強いサムズアップで答えながらマリアは言った。
「勿論! もっと硬い岩だったら尚良いのです! 取り出した砕石はいつも通り脇に積んで置いて下さいね!」
「はい、お陰で捗りますだ、ありがたいこって」
まだ若木が多い作り掛けの果樹園の周囲には、人の背を越えて積み上げられた小山が十数個出来ている。
それより外側の荒れ地から、小山に向けてさらに大きな巨岩が凄まじい勢いで近付いて来る。
巨岩から声がした、デビットの声だ。
「マリア! こいつも頼んだ! よろしくな!」
「分かったわ!」
シュンッ!
残像だけを残して姿を消したマリアは、次の瞬間巨岩の上に姿を現して、地団太を踏む様に両の足を巨岩に叩き付け、あっという間にバラバラに砕いてしまうのであった。
巨岩の後ろから声を掛けたはずのデビットの姿はすでに見当たらず、代りに遥か遠くから、今砕けた物と遜色ない大きさの巨岩が、先程と同じく凄まじい速度で近づいて来ていたのであった。
少し斜めから近づいて来るので、今度は巨岩の後方から、盾を使って走って来るデビットの姿がちらちらと見える。
自分の体の何倍もの大きさの岩を苦も無く押している。
実の所デビットがここ十日間で手に入れた能力は、マジックシールドと身体強化だけでは無い。
もう一つの入手スキル『重量増加』こそが一番の収穫だと言えた。
これは自身の体重を数十倍にまで高める事が出来るスキルで、重い物を押せば押すほど倍率があげられる、謂わばタンク職垂涎の代物だったのである。
マリアの前まで巨岩を運んだデビットが言った。
「マリア! この岩には柘榴石が含まれてるみたいだ、ほらここに少し覗いてるだろう? エマお嬢様の好きなガーネットだ! 色目も濃い朱色みたいだから、奇麗に取り出して差し上げようぜ! きっとお喜びになるぞ!」
デビットの指さす先を覗き込んだマリアは大きく頷いて返した。
「ええ、本当ね! じゃあ、少し丁寧に削ってみるわね」
そう言うと全身から濃密な魔力を放出させるマリア。
身体の周囲を紫のオーラが包み込み、徐々に纏まってマリアの両手に収束されて行く。
全ての光を掌に収束させたマリアは、紫に変色しただけでなく金属のような光沢を放つ両手で、砂糖細工を砕く様な気楽な仕草で、柘榴石、ガーネットの周りの岩をカリカリと除去して行った。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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