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77. 令嬢、独断 ⑥

本日三回目の投稿です^^

 とぼとぼとギルドの中に入ると待っていたアンナがガンズとキックス、レッドとホワイト達から話を聞く事になり、エマ達はその後、必要だった場合だけ報告をすればいい事になった。


 まあ、恐らく呼び出される事になるだろう、そんな風に考えながらエマは周囲を見回して、近くにいた顔見知りの冒険者に声を掛けたのである。


「ねえ、見渡した限り、マチルダさんやレイブちゃん、レジェンドオブルンザの皆様のお姿が見えないようですけれど、どこに居られるか知ってらして?」


 聞かれた冒険者はギルド内をキョロキョロした後でエマに対して答える。


「さっきまでそこに座っていたんだけどな? いつの間にかいなくなっちまってるよ」


「まあ、そうでしたの…… まあ、また後でマチルダさんに色々教えて頂けば宜しいですわね、ありがとうですわ」


 エマは気楽に考えていたが、この後、レジェンドオブルンザの五人の姿はルンザの街から消え去り、二度と戻ることは無かったのである。


「キックスさん! これは一体どういう事でしょうか!?」


 アンナの大きな声がギルドに響いた。

 一斉にアンナ達が集まって報告を聞き取り纏め(まとめ)ていたカウンター内部のテーブルに、冒険者たちが視線を集中させた。

 エマも同様に固唾(かたず)を飲んでそちらを見つめていた。


 キックスの声が聞こえた。


「何ってプラチナ冒険者のカードとドッグタグなのであーる! 一目瞭然なのであーる!」


 アンナに代わってガンズの驚いた声が聞こえる。


「カードとタグの返却って、ま、まさか!」


「そうなのであーる! 我輩、引退するのであーる!」


 テーブル周辺がざわめき出し、中でもガンズが考え直すように懇願している声が一番大きかった。

 王都のギルド本部に伝えなければならないとか、同じく中央の法務長官府に届け出るまで待ってくれだとか必死に頼んでいたが、キックスの意志は固いらしく、爵位の返上は自ら長官府に赴いて説明するとの一点張りであった。


 ギルドへの登録、抹消は基本的に個人の意思が尊重される為、最終的にはガンズが折れる形で話が付いたようである。


 アンナの声が再び聞こえた。


「キックスさんどちらへ?」


 テーブル前のスクリーンから姿を現したキックスは、エントランス側に歩を進め、回り込んで空いていた受付カウンターの前に置かれた椅子に腰を降ろして言った。


「冒険者登録を頼む、職業は『やり直しの魔法剣士』だ、名前はキックス、銀貨一枚はここに置くぞ、早くアイアンのカードを発行してくれ」


 なんとプラチナランク冒険者のキックスは、わざわざ引退をして、再びアイアンランクからやり直すと言っているのだ。


 おどおどしながらも手続きを終えたアンナをそのままに、椅子から立ち上がったキックスは自分を見つめているエマ達、ノブレス・オブリージュの面々を見つけると、近付いて声を掛けて来た。


「命を救って頂き感謝します、ノブレスオブリージュの皆さん、私も貴女方に近付けるようもう一度最初からやり直す事にしました! ですが、諦めは致しません、いつの日か再び、今度こそ本物の最強冒険者になって、皆さんの前に現れます、その日までどうかごきげんよう!」


「まあ、思い切った事をされるのですね、アール・キックス、ですが職業については以前より素敵になったと思いますわ! 頑張って下さいませ、キックス卿」


 キックスは流麗(りゅうれい)な礼をしながらエマに返した。


「最早アールではありません、私はキックス、只のキックスです、エマさん、そしてパーティーの皆さん、またお会いする日を楽しみにお待ちください、では、失礼いたします」


「「「「「ごきげんよう!」」」」」


 胸を張ってギルドを出て行くアイアン冒険者の只のキックスを見送ったエマはしみじみと呟くのであった。


「あの御仁(ごじん)、やっぱり語尾のあーると我輩って一人称、キャラ付けでやっていらしたのですね、思った通りでしたわ」


 その後、諸方への連絡業務でパニックになってしまったギルドから、報酬の支払いは明日以降、エマ達からの聞き取りもその後行う旨が伝えられ、エマ達は疲れた体を引きずるように二階の宿屋へと上がって行ったのである。


 いつもエントランス付近にいたマチルダの姿はなく、ハウスキーパーやコックたちが忙しそうに動き回っていた。

 エマ達は夕食の時間まで各々休息を取る事に決め、個室を取っている三階の廊下で軽く挨拶してそれぞれの部屋へと入って行った。


 三十秒後、エマ達五人は示し合わせたように廊下に出て来たのである。

 

 五人の手にはプラチナに輝くドックタグが一つづつ握られていた。

 勿論、キックスがギルドに返納した物では無い。

 レジェンドオブルンザが身に着けていた物である事が、その形から類推された。


 エマが絞り出すように言ったが、その言葉の先を続ける事は出来なかった。


「これって……」


「「「「……」」」」


お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

ブクマ、評価を頂けましたら狂喜乱舞で作者が喜びます^^

感想、レビューもお待ちしております。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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