76. 令嬢、独断 ⑤
本日二回目の投稿です^^
よろよろ集まって来たイーサン、マリア、そしてデビットに肩を貸しているデニー。
四人ともエマに向ける顔つきは安心では無く不安そのものである。
イーサンがポツリと呟いた。
「一月ですか…… どこまで近付けるものやら……」
その言葉に首を項垂れるマリアとデビット。
デニーが三人に向けて言う。
「近付くんじゃないよ、超えなければならないんだよ? あいつ等より強くなるなんて…… たった一か月後、あいつ等を倒し、魔王ザトゥヴィロから世界を救うなんて…… 手も足も出なかったのに?」
エマが立ち上がって弱気になっている四人に向けて力強く宣言をする。
「弱気になるのは間違いですわ! 思えば今まで私達自身の能力は生まれつきだったり、偶然身に付けたり、慣れによる連携の上達だったり、他人を鍛える行為の副産物だったり、いわゆる受動的に手に入れた力だったのですわ! これからの一か月はもっと能動的かつガツガツと積極的に鍛えたり、自分たちのスキルや魔法を検証し、その上で成長させてパワーアップをするのですわ! 国民の、いいえ人類の、いえいえこの世界の生きとし生ける全ての命の為に! やるしか無いのですわ!」
エマの言葉を聞いたデニーとイーサン、デビット、マリアは声を揃えた。
「「「「ノブレスオブリージュ!」」」」
「そうですわ、私達がやり遂げなければなりません事よ!」
リーダーのエマの言葉に、全身にやる気を漲らせるメンバー達であった。
エマ達の独断による救援のお陰で被害は最小限、とはいえルンザに戻る道すがらの冒険者たちは沈痛な面持ちを隠そうとしなかった。
最下層では大怪我を負った者が多数だったが、奇跡的に死者はいなかった、まるで悪魔達が手加減していたかのようであった。
しかし、皮肉にも下層では何人かの被害者を出してしまっていた。
緊張のせいかそれとも、ダンジョンの変化を敏感に感じ取って凶暴化したモンスターのせいなのか、通い慣れたダンジョンで不覚を取ったパーティーが頻発したのである。
パーティーメンバーを失った者、エマのフルヒールでも治すことが出来ない欠損を負い、冒険者を引退するしかない者ばかりでなく、自信を打ち砕かれたキックスの表情も暗く沈んだものとなっていた。
落ち込んでいると言うよりは、口を真一文字に結んで何か深く考えを巡らしている様であった。
ガンズに無茶を咎められるかと覚悟していたエマ達であったが、功罪相半ばしたのか特別怒られる事も無く、冒険者たちの列に合わせるように歩みを進めたのであった。
アプリコット村の冒険者たちと軽く労をねぎらい合う言葉を交わすうちに、エマ達ノブレス・オブリージュの五人は有る事実に気が付くのであった。
デニーがイーサンに語り掛けた。
「ねえイーサン、最下層に居た人達が誰もオーロ・ラン・ダハブの言った魔王の復活に触れないのに気が付いたかい?」
イーサンが頷いた後返す。
「ええ、先程気が付いてから数人に魔王が復活する日時と場所についてカマを掛けて見たのですが、全員キョトンとしているだけでした、恐らく記憶にない、または何故だか知りませんがあの場所に居たのに聞こえていなかった、そのどちらかでは無いかと」
この言葉を聞いてマリアが戸惑ったように言った。
「どういう事でしょう? あの魔人、悪魔の仕業でしょうか?」
デビットが相槌を打つ。
「そんな所だろう」
暫く黙って考えていたエマが推測を言う。
「私達だけに聞こえるように言ったのですわ、自分達や魔王ザトゥヴィロに挑む資格があると、あの悪魔金色のオーロ・ラン・ダハブが認めた私達だけに…… 確かにプラチナ冒険者のキックスさんでも歯が立たなかった悪魔達ですものね、生半可な実力の者が挑めば簡単に殺されてしまう事でしょう…… いいですか皆、魔王復活の日にちや復活場所については私達だけの秘密にしておきましょう、決戦の日まで…… そして私達五人だけで挑み、そして勝つのですわ」
エマの言葉に真剣な表情で頷く四人。
既に恐れや諦めを捨てた瞳には、成し遂げる、そんな確かな覚悟の炎が宿っていたのである。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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