75. 令嬢、独断 ④
本日一回目の投稿です^^
普通に立ち上がり魔石を拾い集めた赤魔人に対して、マリアが猛然と襲い掛かったのだが今回は片手で防がれてしまい、逆に首筋に手刀を打たれてしまうのであった。
トン!
ガクリと膝をついて全身を震わせているマリア。
失神だけは免れた物の四肢の自由が利かないようだ。
青魔人も自分の体に刺さっていたティザースローインを気楽な感じで抜き取って魔石を拾い始める。
六体のイーサンが再びの投擲をしようとした時、不意に飛び上がった青魔人は、ダンジョンの天井付近で身を潜めていた本体のイーサンを掴んで着地し、直後、イーサンの鳩尾にドスリ! と重い一撃を入れたのである。
蹲って痛みに震えるイーサンは『分身』を維持出来ないらしく、周辺のイーサンは姿を消したのである。
そうしておいて赤と青の魔人はエマやデニーに襲い掛かる訳でもなく、どころか自分たちの仲間、恐らくリーダーであろう金魔人をデビットの押さえつけから救うでもなく、他の冒険者たちを威嚇しながら淡々と魔石を拾い集めて行く。
エマが気を取り直してデニーに言う。
「デニー! あの金色、オーロなんちゃらを倒すのですわ! 赤と青は後回しでしてよ!」
「分かったエマ、じゃあ頼むね! 僕の魔剣レジルで叩き切ってやる!」
「『切断力増加』『攻撃力上昇』」
ダッ!
エマが支援魔法を掛け終えると同時に、身体を地面すれすれに倒れ込む様にして猛ダッシュしていくデニー。
当然自分自身に身体強化を三枚がけした上である。
猛烈な速度で金色の魔人に肉薄したデニーは叫んだ。
「行くぞデビット!」
「応!」
デニーはスピードを落とす事無く、デビットの背中、バックプレートを蹴って飛び上がり、金色の魔人の脳天に向けて鋭い一撃を叩きつけるのであった。
カーン!
デニー自身の予想ではズバっと一刀両断のつもりだったのだが、返って来たのは血飛沫ではなく、乾いた軽い金属音だけであった。
金色魔人がつまらなそうに呟いた。
「レジルだと? ダグル・バリザを受け取っていない? つまらん、只の人間だったか」
着地したデニーは思わず立ち竦んで金魔人を見上げてしまったのだが、その耳にエマの声が届いた。
「効いてますわよ! デニー! ダメ押しダメ押し、追撃でしてよ! 効いてる効いてる! ほら皆も!」
周囲の冒険者たちが大合唱を始めた。
『効いてる! 効いてる! 効いてる!』
キックスもレッド、ホワイトと一緒に大声で叫んでいる、中々いい奴の様であった。
みんなの声に背中を押されたデニーは力一杯の斬撃を振るい捲るのであった。
カーン! キーン! ゴンッ! シュバッ! カーン! ――――
数十回に及ぶ攻撃も、金魔人にダメージを与えた様子は無かった。
いまだ止まぬ応援の声に渾身の一撃を叩きつけるデニー。
エマはタイミングを合わせて再びの『切断力増加』『攻撃力上昇』、二枚掛けを施すのだった。
ガリリーッ!
金魔人の腕に初めての傷、クラックが入る。
「ほう」
呟いた魔人、オーロ・ラン・ダハブは、傷付いた自身の腕を見ながらニヤリと笑う。
魔石を拾い終えた赤魔人と青魔人を左右に立たせると、今まで自分を抑え付けていた、デビットを盾ごと蹴り飛ばした。
咄嗟にデビットを受け止めたデニーは後方に滑り下がりながら三体の魔人を睨み付けている。
金魔人が五人に向けて言葉を発した。
「只の人間がこの体に傷を負わせるとはな…… くふふふ、面白い! 実に面白いぞ! くふふ、良かろう、今日は貴様らを殺さぬ! 見逃してやろう! 貴様らに猶予を与えてやる事としようではないか! 魔王ザトゥヴィロ様は今より一月後、ここより東の霧の中、貴様ら人間が死の荒野と呼ぶ場所にて復活を果たされる! その時まで生かしておいてやろう、くふふふ…… それまでの間、精々腕を上げて我らを楽しませて見せるが良い! 貴様らが死ぬ気で鍛え絶望に挑む一月の間、他の人間にも手を出さずにおいてくれようぞ、くふふふふ」
エマは恐怖も見せずに言い返す。
「これはご親切ですこと…… ですけれど、モンスターである貴方の言葉を鵜吞みには出来無いのですわ! 勿論、時間をくれると言うのでしたら必死に鍛え上げ、次こそ貴方達を討伐してみせましてよ、でも、その間にも警戒は怠りませんわ! 良くって?」
「ふん、好きに疑っていれば良いわ! 一つ訂正して置くが我らはモンスターの如き下等な生き物では無い! 我らは魔族、誇り高い悪魔である! ザトゥヴィロ様は魔物の王では無く、悪魔の王であらせられる! くふふふ、覚えておけ聖女よ、彼の方が復活召されれば、人間だけでなく、動物、虫、植物の違いなく、それこそモンスター共も含めた全ての命の悉くを刈り取り、世を死の支配する魔界へとお変えになられるのだ! くふふふ、抗って見せよ、聖女と勇敢な仲間達よ、楽しみに待っているとしよう! 覚えて置くが良い、我こそは魔王ザトゥヴィロが副官、金色の悪魔オーロ・ラン・ダハブである!」
「同じく赤色の悪魔、クルムズ」
「青の悪魔、マーヴィでしてよ」
「私はエマ、ノブレスオブリージュのリーダーエマですわ! 私達に時間を与えた事を後悔させて見せましてよ! 精々首を洗ってサッパリさせて置くことでしてよ!」
エマの声を聞き、揃ってニヤリと口元を歪ませたままスッとその場から姿を消した悪魔達。
取り敢えずの危機がさった事で気が抜けたエマはその場にへたり込んでしまった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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