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71. 令嬢、値踏みする ④ (挿絵あり)

本日四回目の投稿です^^

 元気にエマに合わせた言葉が尻すぼみになってしまったデニーに明るく大きな声が届く。


「なんだいなんだい、湿っぽい顔して男前が台無しじゃないかい、デニーボーイ、辛気臭いねぇ! らしくないっ!」


「ぐ、グロリア? さん?」


 更に後ろから二つの大声がギルド中に響く。


「ルンザに人無しとは聞き捨てならないじゃないか! なあ、リッキー?」


「全く、最近の子供は自分だけが世界の中心、一番だと思ってるよな? モーガン?」


「良く言うよ! アンタ等が若い頃に比べたらエマ達の方が随分真面目で賢明だろうがっ! 何年経っても馬鹿なんだから、始末に負えないよっ!」


 最後の声はギルドの階段から聞こえて来た。


 ノブレスオブリージュの面々が視線を向けた先には、二階より上のギルド併設宿屋の女将、マチルダがデニーの魔法剣レジルとそっくりな漆黒の巨大な剣を軽々と背負いながら階段を下りてくる姿が見えたのである。


 思わずデニーが声を掛ける。


「ま、マチルダさん! そ、その剣は、い、一体?」


 マチルダは気楽な感じで答えたのであった。


「ん、ああ、こいつかい? こいつはアンタのレジルのオリジナル、聖剣ダグル・バリザだよ、どうだい良い剣だろう? デニー」


「は、はあ…… お、オリジナル……」 ゴクリ


 マチルダが一階に降りると、自然に冒険者たちが左右に分かれて空間が出来た。

 空いたフロアに居並ぶメンバーは……


 武器防具屋のリッキー・アイアンシールドとモーガン・スカウト、モンスター肉買取所のグロリア・レオニー、更に魔石買取所のレイブ・バーミリオンちゃん、そしてギルド併設の宿屋の女将、マチルダ・ブレイブニアの五人であったのである。


 受付嬢のアンナが慌てて駆け寄って疑問の声を掛けた。


「ど、どうしたのですか皆さん、そんなバーン的な登場なんかしちゃったりして? 遊びじゃないんですよ? 正気を取り戻してくださいなぁ!」


「ああ、アンナちゃんかね、アンタも真面目で一所懸命だねえ~、でもね、アタシ達は正気だよ? ほらこれで良いかい?」


 言いながらチュニックの内側のシュミーズから白金のドッグタグを引き出すマチルダ。

 他の四人もシュミーズから引き出して見せたドッグタグは揃ってプラチナ製であった。


 アンナがいつに無く低い声で唸る様に絞り出した言葉はこうである。


「れ、レジェンドオブルンザ……」


 古来、ルンザに伝わる物語は、恐ろしい感じで終わる百物語だけでは無かった。

 もう一つ、(まこと)しやかに言い伝えられている伝説がある。

 それがレジェンド・オブ・ルンザと呼ばれる英雄譚であった。


 この物語、いいや眉唾物(まゆつばもの)の言い伝えは、ルンザが今の様な街になるずっと前、町、いいや村、それも住民が数十人にしか過ぎなかった開拓村だった昔にまで遡る(さかのぼる)のである。


 どこからともなく現れた夫婦の旅人は人々に様々な知識を与えただけでは無く、当時片田舎だったルンザを守る為にモンスターたちと戦い続けていたのである。

 

 二人は言った、と伝えられていた。


『仕方が無いねぇ、んじゃ、守ってあげるわよ、なはははは』


『そうでござる、んでも君達も強くならなくては駄目なのでござるるよ? どう、どう? 頑張れそうでござるか?』


 そう言って希望する若者たちに戦い方、魔力の増やし方や効果的な使い方を教えたと言う。

 適性に合わせて、戦士、魔法剣士、斥候(せっこう)、武闘家、そして癒術師(ゆじゅつし)、五つの体系に分けて鍛えられた人々は後進に覚えた技の全てを伝え続けた。

 その技は今日まで秘かに伝えられている、人々はそう噂し合って来たのである。


 この伝説には続きがある。


 夫婦に鍛えられた直弟子の中で、五つの体系毎に、最も優れた者五人を流祖(りゅうそ)と呼び、それぞれに白金のドッグタグを与えたと言うのだ。

 ルンザに危機が訪れた時、千数百年の間伝えられた技を使って人々を守る為、当代の伝承者が現れると言う。

 初代から綿々と受け継がれた白金のドッグタグを付けて……


 ある者は巨大な赤竜を退治し、又ある者は山ほどもある巨大なボア、猪と戦いこれを下したと言われる。

 凶悪なワーウルフを追い払い、凶暴極まりないキングエイプとの力比べに勝利を収める。

 時代時代のそこかしこでルンザを陰日向で守り続ける英雄たち。

 

 これが、ルンザの人々が長い間語り継いできた言い伝え、レジェンド・オブ・ルンザである。

 ブレイブニア王国が建国されてから五百年程である。


 それに倍する間伝えられてきた物語に登場した人物達の後裔(こうえい)、当代の英雄たちをを前にギルド内部は静けさに包まれるのであった。


 可愛らしい幼児、レイブの声が響くのだった。


「ここは任せて行っておいでよ、早くしないと間に合わないよ」


挿絵(By みてみん)

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

ブクマ、評価を頂けましたら狂喜乱舞で作者が喜びます^^

感想、レビューもお待ちしております。


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