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69. 令嬢、値踏みする ②

本日二回目の投稿です^^

 エマの言葉を打ち消すように多少いらいらしながらデニー、モクスラ・ベの数段上位の魔剣、レジルに認められた『いつか伝説となる、勇者』が少し大きな声で瞳に嫉妬の炎を浮かべながら聞くのであった。


「キックス卿、それだけでは光速剣と呼ぶには些か(いささか)不足なのでは無いのでしょうか? 貴卿(きけい)は他にも何か特殊な能力をお持ちなのではありませんか? 如何(いかが)か?」


 酔っぱらっているキックスはこれにも屈託(くったく)ないニヤニヤ笑顔で答えてくれる。


「ん? んんまあ、そうであーるな! 実は吾輩は魔術にもそこそこ、というかメチャクチャ精通しておるのであーる! んだから、知って居るかな? まあ、知らんだろうが、『身体強化』という魔術で自分の力を二倍にまで引き上げているのだよ! つまり、モクスラ・べは四分の一の重さしか我輩には感じられないのであるよ、更に教えてやるのであーる、このガントレットに付けられたスパイクシールド、この中心に嵌められている大きな魔石、この効果というのは、なぁ……」


 身体強化一枚掛けは強化倍、普通の事であった、五枚掛けが出来るマリアは、メインディッシュであった鳥の骨をしゃぶりながら呆れた顔を向けていた。


 しかし、である。

 盾の話が始まってしまった…… 今度はノブレスオブリージュの盾、アイアンシールドであり、ルンザ最強のタンクとなったデビットが身を乗り出して聞いてしまったのである。


「お教えくださいませ、キックス殿! その一個きりの魔石を()め込んだ魔盾(またて)の効果を、私デビットに聞かせて下さいっ!」


 デビットの丁寧な聞き方に機嫌を良くしたキックスが今回も答えてくれたのである、中々に優しい性格の様である。


「ふむ、良い質問なのであーる…… 普通は教えてやらないのであーるが、特別に教えてあげるのであーる、これは魔盾ドューロと言い、装備した人間の防御力を二割増しにしてくれるアーティファクトなのであーる! この世に二つと無い聖遺物なのであーる! さらにさらに更にぃ! 我輩はこれらのアーティファクトに頼るのみならず、自身の努力によって自分の存在を敵対者の認識から少しだけ阻害できる『隠密(おんみつ)』、加えて自らに回復効果を与える事が出来る『微回復プチヒール』、のみならず敵の攻撃を受けた際、一割程度ダメージを反射する『お返し(リターン)』も使えるのであーるよ! どうかな? 我輩凄腕であろう? いいや凄いので、あーるっ!」


 ここに来て、エマとデニーとイーサン、マリアにデビットは心の中で寸分(たが)わぬ感想を持ったのである。

 仲良しパーティーとは言えここまでの共通意識を持てた事は奇跡的な事であっただろう。

 彼女たちが同時に感じた意識とは……


『こりゃ駄目だ……』


 これであったのである…… 心配なのであった……




 歓迎の会食から二晩が過ぎた。


 早朝に意気揚々とダンジョンに向かうキックスと大勢の冒険者たち、彼らを見送ったエマ達の表情には、一抹の不安が影を落としていたのである。

 あれから大分経った、そろそろダンジョンに到着した頃合いだろう。


 エマは小さな呟きを漏らす。


「大丈夫でしょうか、心配ですわ」


 デニーも同じ表情である。


「うん…… 心配だね」


 元気付ける様にイーサンが言った。


「大丈夫でしょう! 何しろお師匠様達が付いて居られるのです! めったな事でも無い限り負けはしないでしょう!」


「え、ええ、そうですわね」


 デビットも鎧の胸を叩いて元気に言った。


「そうですよ、同行が叶った『努力あるのみ』『死に物狂い』『不退転』の三組も、試験を受けていないだけで、昇級に必要な最上級魔石も既に納品済みで実力的にはゴールド相当なんですから、ちゃっちゃと討伐完了して元気に戻ってきますって!」


 この言葉でずいぶん安心出来たのか、エマは笑顔を取り戻して同意を返した。


「ええ、そうですわ! 皆が一緒なのですものね、安心しましたわ! 帰って来るのを待ちましょう!」


お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

ブクマ、評価を頂けましたら狂喜乱舞で作者が喜びます^^

感想、レビューもお待ちしております。


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