68. 令嬢、値踏みする ① (挿絵あり)
本日一回目の投稿です^^
その日の夕方、紋章が使える唯一の宿の食堂、その奥に最近設えられた個室のテーブルにエマ達の姿があった。
久しぶりに訪れた高級宿の食事は、味付けの薄さだけでなく、それらしく繕った安っぽい模倣も相まって、エマやデニー、イーサンとマリア、それにデビットには大変物足りない物であった。
同じように感じていただろうがレッドとホワイトの二人はそこら辺は確りしていた。
あからさまに不味そうな表情を浮かべているノブレスオブリージュの五人とは違い、頑張っておべんちゃらを言っているのであった。
「凄いお料理ですね、キックス様! 俺こんな料理初めて食べましたよ! な、ホワイト?」
「ええ、ええ、本当ですキックス様、自分達みたいな出自の者には縁のないお上品な食い物、おっと、お料理ですね! ははは、高級過ぎて味を感じませんよぉ! ねえ、レッド?」
「全くだよ!」
二人のお追従に満足げな顔のキックスが答えた。
「ふむ、二人は平民の出であーるか? 心配せんでも良いのであーる! 何を隠そう我輩、王国の至宝、最強最速の剣士、輝けるプラチナランク冒険者である、『光速剣のキックス』伯爵、アール・キックスも平民の出なのであるのであーる! 頑張れば諸君たちもこのようなディナーを食べる身分に辿り着けるかも? かも知れないのであーる! 頑張れぇ? で、あーるっ!」
ディナーのテーブルに着いてから、終始こんな感じで自画自賛を繰り返しているキックスであったが、長年、社交界に身を置いて来たエマやイーサン、デビットとマリアにとっては慣れ親しんだ風景であった。
寧ろデニーが平然とした顔で食事を続けている事が立派な事と言えるだろう、かなり不味そうにはしていたのだが、それは又別の苦悩だと思う。
食事の開始から暫くしたタイミングで、エマは早々と三組のシルバーランクパーティー、『努力あるのみ』『死に物狂い』『不退転』が『ビアンコ・エ・ロッソ』へ同行することの許可を、半ばキックスに対する直訴のような形で認めさせることに成功していた。
キメ手となったのは、アメリアが少し盛って話した、同行を願う冒険者たちが二人同様にアプリコットの布を揃えて巻いている、その話が、なにやらキックスの琴線に触れたようであった。
「慕われる者と憧憬を抱き続ける者との心模様! 非常に美しいのであーるっ!」
という事らしかった。
会食は順調に進み、そろそろデザートが運ばれてくる、そんなタイミングで、エマがキックスにずっと聞きたくて聞けなかった内容に踏み込んだのであった。
「時にキックス卿、卿のご職業は何でございますの? お教え頂けますでしょうか?」
キックス伯爵がスプーン一本を握って掻き込んでいたリゾットから顔を離して答える。
「ん、吾輩の職業であーるか? それは見たまま、魔法剣士であーるぞ! それが何か? で、あーる」
エマは質問を重ねる。
「なんでも卿の二つ名は『光速剣』ですとか? そのように呼ばれるという事は…… 何か理由がございますのでしょう? 違いますか?」
美しく微笑むエマの魅力にやられちゃったのか、はたまた、ぐびぐび飲んでいたワインに酔ってしまったからなのか、自分の戦闘技能を惜しみも無く語り出してしまうキックス伯爵。
「ふふん、エマ女史、特別に教えて差し上げるが、吾輩の愛剣モクスラ・ベは『魔剣』なのであーる! この剣は意志を持つ格別の魔剣なのであーる、それ故に認められた特別な存在、まあ、吾輩なんだが…… その相手には重量を半分しか感じさせ無い特殊効果を発揮するのであーる、よ! どうだ? 凄いであろう! それゆえに吾輩は大剣をあり得ない速度で振るう男、光速剣と呼ばれているのであーる! どうだ、格好良いであろう? どう、どう? 惚れちゃいそうであーる、か?」
「ど、どうでしょうか? 惚れる乙女も多いのでしょうね? オホホホ」
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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