65. 令嬢、快進撃 ④
本日二回目の投稿です^^
笑顔を交わして切り株に腰を降ろしたエマは、レッドとホワイトの右腕に、ハンス達と同じアプリコットの布が巻かれている事に気が付いた。
「お師匠様達もその布を? 何故でございますの?」
レッドが自分の腕の布を見ながら答える。
「ああ、今、俺達ここに住んでるんだよ、それでジャックが俺たち用に準備してくれたんだよ」
ホワイトも頷いている。
エマとデニーが驚いた顔を見せ、ホワイトが説明を続けた。
「二人だけじゃ無いよ、結構な数の人間がこの集落、いいやアプリコット村だったよね、ここに移り住んでいるんだよ、ほら周りを見て見なよ、ダンジョンが封鎖されて、狩りや素材の納品に行く人も減ったから分かり易いだろう、人、増えているでしょ?」
言われて周囲を見渡したエマとデニー。
最初百人だった人々の数が、表を歩いている人間だけでも二百人以上いるようだ。
エマが驚いたままホワイトに言った。
「本当ですわ、増えていますわね、どうしてこんな事になったのでしょう?」
「ああ、それはね――――」
ホワイトとレッドが代わる代わる説明した内容はこうであった。
ルンザの街ではこの集落が噂になっていたようである。
落ち着き先を失った農奴上がりの人間が百人も、あぶれた形で町の近くの林の中で自活しているのである。
遠からず食い詰めて、悪さでもしでかすんじゃないか? 大方の予想はそんな感じだったらしい。
ところが、同じ時期にルンザに現れたエマ達ノブレス・オブリージュやストラス、レッドやホワイト、そしてデニーが毎日出入りしている事で集落の人々に対する警戒心はほぼ融解したという。
それ所か、集落出身の冒険者たちの仕事ぶり、またカッパー、シルバーのランクへ到達する早さから別の意味で話題になって行ったそうだ。
『あそこで教われば俺達もシルバーになれるのでは?』
人間の心理というのは現金なもので、数人が物の試しと日中訪れ始めると、あっという間にアイアン、カッパーが集まり出して、訓練や剥ぎ取り作業に加わったのだと言う。
それ以外にも、農奴から下働きに来ていた者たちからも、冒険者になりたいとここに移り住む者が増え続けているそうだ。
最近では、モンスターの肉や素材を、わざわざ買い取りに来ている商人もいるらしい。
こちらは、チャーリー達、納品を担当している諜報部隊の礼儀正しい態度、取引の誠実さが効いているのだろう。
増え続ける人数を捌き切れなくなったジャックに頼まれて、レッドとホワイト、それに親しくて信頼できる冒険者十人程度がここに住む事になったそうだ、昨日から、要約すればそういう話であった。
「まあ!」
エマが驚きの声を上げた理由はそれだけではなかった。
村の人口は既に四百人を超え、人口千人余りに増えたルンザに隣接した衛星都市、いや衛星村みたいになっていたのであった。
人口だけ見れば村というより町レベルだろうか。
エマは思う。
――――私たち自身が、己の未熟を何とかしようとしていた四か月間の間に、ジャック達この場所の皆さんも、必死な努力を繰り返して成長されていたのですわ! 感動致しましてよ! 若しかしたら我々ノブレス・オブリージュもこの村、アプリコットと同じように成長しているのですかしら? いえいえいえ、慢心は禁物でしてよ、まだまだなのですわ!
そんな風に自分を戒めるノブレス・オブリージュのリーダーは、自分たち五人の一人一人が、とっくのとんまにかつてルンザ最強の冒険者であった、『剛腕』のストラスをはるかに凌駕する強者となっている事に気が付かないままで、笑顔のままさらなる努力を重ねるのであった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
ブクマ、評価を頂けましたら狂喜乱舞で作者が喜びます^^
感想、レビューもお待ちしております。
Copyright(C)2019-KEY-STU









