58. 令嬢、常識を教える ①
本日一回目の投稿です^^
お腹を鳴らしたデニーの為にエマが向かったのは、ここ数か月の間、昼の弁当代わりに毎日購入して来た、いわゆるハマっているモンスター肉の串焼き屋であった。
すっかり顔なじみになったスキンヘッドの旦那さんと大きな目が印象的な奥さんは相変わらずムキムキマッチョである。
スキンヘッドの大男の姿を見て昨日はストラスを思い出して少しセンチになってしまったエマであったが、今日はそれ所では無かった、何しろ後ろに付いて来るデニーは飢えているのである。
いち早く栄養補給を果たすことに夢中で色々考える事は単純なエマには出来なかったのかもしれない。
「ごきげんよう、串焼きを五本頂けますか?」
「あいよ、今焼き上がるからちょっと待っててな! なんだエマ、今日は男前を連れて、デートかい? とはいってもお供付きじゃあサマにも何にもなりゃしないけどな! がははは」
「ふふふ、新しいパーティーメンバーなのですわ! これで私達は一歩前進、いいえ伝説に大きく近づいたのでしてよ!」
胸を反らすエマに微笑みながら、奥さんが串焼きを皿の上に並べて話し掛けた。
「大きく出たじゃないのエマちゃん、でも仲間が見つかってよかったね、はいお待ちどうさま」
デビットが銀貨一枚と銅貨五枚を払い、皿を受け取ったエマはデニーの方を振り返りながら言った。
「ほらデニーこれが先程話した串焼きでしてよ、このボリュームで銅貨三枚、お得なのですわ! この美味しそうな香り、先程朝食を頂いたばかりだと言うのに食欲を掻き立てられてしまうのですわ、ではお手本にまずは私が食べて見せますわね」
そう言いながら串焼きの一本を取ろうとしたエマの手をデニーが掴んで言った。
「だめですエマ! モンスターの肉には人間の体に良くない成分があると聞いた事が有ります! 食べてはいけません!」
突然手を取られたエマはキョトンとしながらデニーに返した。
「それを今から説明するのですわ、それにそんなに強く握られては痛いのです、デニーったらもう!」
「し、失礼!」
慌てて手を放したデニーの首から上は耳まで真っ赤である。
軽く溜息を吐いてからエマは数か月前まで知らなかった知識をひけらかすのであった。
「いいデニー? モンスターの肉には確かに人間の体を石化させる物が含まれているのですわ! でも大丈夫なのです! 昔どこからともなく現れた御夫婦の旅人が当時の人々に教えてくれたのでしてよ、『毒消し草に塗して三日置けば食べても大丈夫だ』と…… そうすることに因って貧しい人々もお肉、モンスターの肉を食べる事が出来るようになったのですわ、因みにこんな風にしてモンスターを食べるのはここルンザ周辺だけなのですわ、他の街では硬くて不味い干し肉にしていましてよ、つまりモンスター肉の串焼きやステーキはルンザのご当地料理、名物なのですわ! おしまい」
一気に話したエマは串焼きを一つ手にするとにっこり笑って言う。
「何よりも美味しいのですわ、最高でしてよ、デニー」
そう言うと大きな肉を一塊、口一杯に頬張ってもぐもぐ咀嚼した後のみ込んで続けるのだった。
「ほらデニーも食べて御覧なさいよ、きっと驚いてしまいましてよ♪」
「う、うん、じゃあ試しに一口だけ」
エマの美しさに見とれながらも返事をして串焼きを口へと運んだデニーは美味しさに目を剥くのであった。
「こ、これは…… 肉の味もさる事ながら、風味付けの加減や焼き具合に至るまで、これ程美味しい物を僕はこれまで口にしたことが無い…… 見事な仕事だと言えよう…… 店主、いいやシェフ、これは君が作られたのか?」
「しぇ、シェフ? まあ焼き上げたのは俺だけどな、女房と二人色々試行錯誤して作ってるんだ、旨いだろ?」
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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