42. 令嬢、捌く ⑤
本日一回目の投稿です^^
実の所、この昔話読み聞かせは全ての話が恐ろしい物ばかりであったのだ。
不気味だったり残虐な話を聞いたり、凄惨な事件現場を目撃した時、人は無意識下で自分の魔力を使って防御態勢を取っているのだという。
本能ともいえるこの特性を利用した魔力増加訓練がルンザ独自に伝えられた『怖い御伽噺』読み聞かせであり、遥か昔、それこそルンザが村だった頃から語り継がれた話は全部で百種類、人呼んで『ルンザ百物語』というらしい。
元々は、遥か昔、どこからともなく現れた夫婦の旅人が人々に語って聞かせ当時の人々の魔力増加に成功したらしい。
最初に魔石買取所のレイブちゃんに教えて貰った時は、俄かには信じられないと疑ってかかったエマであったが、興奮したりすると魔力を全身に流す事で活性化させ若返る、いや幼児退行する特異体質の彼の言葉だと思い直し、農奴たちと共に怖い話を聞かせ合う事にしたのだが、ここで意外な事にエマの語りの上手さが発覚したのである。
幾日か過ぎると自然にエマが語って聞かせる担当に決まってしまい、怖い話の種類を増やす為に知り合い達に聞き捲っている内に『ルンザ百物語』に辿り着いたのであった。
最近では参加者全員が自身の魔力量増加を確りと自覚出来る位になっていたのである。
「鶴は足元を見降ろしたのです、そこには自慢の羽で切り裂いた優しかったお爺さんだったものが、虚しく散らばっていたのでした、軽い舌打ち一つを残して、鶴は明け始めた空へと飛び立っていったのです、あとには一枚の尾羽が血に染まっているだけだったとさ、めでたしめでたし…… 如何でしたか、皆さん」
「あーもう絶対見ちゃダメなのに、なんで見ちゃったかなぁ?」
「それな、殺されるの丸ばれなのにねぇ!」
「いやあれだろう、約束を破ったら殺されますよ的な、子供達へのメッセージみたいな感じなんじゃないか?」
「ストラスさん、罠にかかった野生動物には警戒しろって事かもしれないですよね?」
「あーそっちもあるかぁ、猟師の食い扶持奪ってるわけだしなぁ、鋭いじゃねえか、ハンス」
「えへへ」
「さて、本日の座学はこれで終わりでしてよ! みんなそれぞれの作業を再開して下さいな!」
『エマ様、ありがとうございました』
「どういたしまして、明日はみんなが一番のお気に入りの昔話、真なる聖女シリーズをお話しますからね! タイトルは『水辺の覇者、ユイとジロー』でしてよ! 普段参加しない皆さんも誘っていらしてくださいねぇ!」
魔法適性の強いメンバーが立ち去ったこの場には、エマ以外ではストラスとレッド、ホワイト、ハンスだけが残されるのであった。
エマにとっても心易いメンバーだけになり、ほっと息をついてハンスが差し出した革袋から水を飲もうとしたその時、加工場の小屋から出て来たジャックに話し掛けられたのである。
「エマ様、それに皆様も、お知恵をお貸し下さいませんでしょうか?」
「「「?」」」
エマ達に向けられたジャックの手の中には、真緑な大ぶりの木の実とクロっぽい小ぶりな木の実の二つが置かれていたのであった。
首を傾げ乍らエマがジャックに問う。
「ジャック、これは? 一体何の木の実なのでしょうか?」
ジャックが答えて言う。
「分からないのですよ! 小川の上流を散策していた者共が見つけたのですが…… 食べていい物かはたまた毒か、見当が付かないので、一度エマ様達に聞いて見ようかと…… やはりお分かりになりませんよね、お忘れくださいませ……」
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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