表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/144

30. 令嬢、攫われる ③

本日一回目の投稿です^^

「え? まだ話を聞いてくれるの? 帰って良いって言ってるのに?」


「勿論ですわ、それに警備所やギルドになんて言い付けたりしませんわよ? アナタが仰った通りまだ悪い事はしてないじゃありませんの!」


「……お嬢さんを攫ったけれど」


「まあ、そんなのは多少強引にお茶会に誘うのと同じことですわ、シンシアみたいに! 気になるのでしたらお茶、は無理そうですわね、お水くらいございますでしょう? 一杯下さいませ、それで問題なくってよ!」


 エマの勢いにつられるように、代表が差し出した革袋をひったくりゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ後、


「さあ、お話になって下さいな」


 微笑んだエマに代表の青年は話し始めるのであった。


「実は――――」


 一旦話し始めるとみすぼらしい姿の青年たちの話は早かった。


 代表が中心で話したのだが、説明が足りないと思った所、個々の感情に起因する箇所ではそれぞれの若者たちが真剣な表情で会話に参加して、相槌を打ちながら聞いているエマに対して、ここ数か月に溜まりに溜めてきたのであろう鬱憤(うっぷん)を一気に語って聞かせるのであった。


 曰く(いわく)

 ここ、ルンザの街の林に居る若者は全員でピッタリ百人だそうだ。

 元々は皆あちらこちらの開拓村で暮らしていた農奴の次男や三男だという。

 半年から数か月前までにそれぞれの村に回ってきた商人の話を聞いてルンザ行きを決めたらしい。


 商人は言った、


――――ダンジョンが見つかったルンザでは新人冒険者を募集している、普通農奴が冒険者になるには金貨三枚が必要だが今なら無料だ! それどころか支度金(したくきん)に金貨一枚頂けるんだ! 村に残っても家すら継げないだろう弟達にはとびっきりのチャンスだろ? 私が送り届けよう! さあ、みんな、夢の冒険への扉を開こうでは無いか!


 二十ヶ村以上を回って百人の冒険者志願者を集めた商人は粗末なキャラバン馬車五台の荷台をギュウギュウにして彼らを運んだらしい。


 彼らの中の大半は、冒険者を夢見たと言うより、貧しい家族に負担を掛けたくない…… その一心だけで、自ら口減らしになる事を選んだのだと言っていた事はより一層エマの印象に残った。


 窮屈とは言えども、順調に旅を続けていた彼等だったが、今からふた月程前にトラブルに見舞われたそうだ。

 南方から移動して来た彼らは不意の長雨に見舞われて足止めを喰らってしまったと言うのだ。

 雨が止んでからも暫くの間、増水した河川に阻まれて、都合一か月と少し、ルンザへの到着が遅れてしまったらしい。


 着いた時にはルンザの特例期間は終わっていて冒険者になるには金貨三枚と登録料の銀貨一枚が必要な通常のルールに戻ってしまっていたそうだ。


 当然支度金なんてない。


 商人は彼らを残して消え去ってしまった。

 恐らくどこかの街に逐電したのだろうと代表の青年は悔しそうに唇を噛み締めていた。


「あいつは俺達を、捨てたんだ!」


 吐き捨てるように言うその言葉を受け止めたエマ、アメリア・バーミリオン令嬢は思いがけぬ言葉を発したのである。


「あなた達をここまで連れてくるために、商人である彼は投資をしているのでしょう? 捨てたなんて言ってはいけませんわよ!」


「えっ?」


「だってそうでは無いですか? アナタ方の数か月の移動に費やした経費だって、生半(なまなか)の出費では有りませんでしょう? アナタ方を奴隷として売却して補填(ほてん)する事も出来たでしょうに…… 彼は只立ち去ったのですよ?」


「で、でも…… 俺達は、打ち捨てられて、寄る辺も何も有りはしないんだよぉ!」


「確かにそうですわね、でも、いいえ、だからこそ、私に出会う事が出来たのでは無くって?」


「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」


 エマ、アメリア・バーミリオンはここに来て初めて立ち上がり胸を反らせて宣言をしたのであった。


「アナタ方の面倒は私が受け継ぎますわ! 王国に名を誇るバーミリオン家の娘にして、パーティー『ノブレス・オブリージュ』のリーダーとしてここに宣言いたしますわ! アナタ方の未来を私にご一存くださいませ!」


「「「「「「「え? えええっ!」」」」」」」


 勝手に決めた配下の驚き続ける視線を受けて、誇らしそうに胸を張ったエマの笑顔はこれまでに無い程の美しく気高い輝きを放っていたのである。

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

感想、ブクマ、評価を頂けましたら狂喜乱舞で作者が喜びます^^


Copyright(C)2019-KEY-STU

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=145542530&s
小説家になろう 勝手にランキング




i98masbhane6fwhga2qik6bi8osg_git_xc_ir_assm.jpg
堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~ は↑からどうぞ



fw2razgu4upfkla8gpm8kotvd1hy_1365_xc_ir_92ne.jpg
にくい、あんちきしょう…… ~食パンダッシュから始まる運命の恋~ は↑からどうぞ



eitdl1qu6rl9dw0pdminguyym7no_l63_h3_7h_23ex.jpg
3人共同制作の現場 小説創作の日常を描いた四コマ漫画 は↑からどうぞ



jvan90b61gbv4l7x89nz3akjuj8_op1_1hc_u0_dhig.jpg
見つからない場所 初挑戦したホラー短編 は↑からどうぞ



異世界転生モノ 短編です
8agz2quq44jc8ccv720aga36ljo7_c1g_xc_ir_97jo.jpg
【挿絵あり】脇役だって主役です ~転生を繰り返したサブキャストは結末を知りたい~ は↑からどうぞ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ