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3. 令嬢、逐電する ①

本日三回目の投稿です^^

 不意に(もたら)された婚約破棄の報せから四日、アメリアは王都の屋敷を出発し実家であるバーミリオン領へと向かうのであった。


 本来婚約発表の場となる筈だった晩餐会が中止された事で、ゴシップ好きな貴族たちの憶測が噂となり始めていた。


 王族、それも王太子、簡単に言えば次世代の王の婚姻に関わる縁組である、通常とは段違いの緘口令(かんこうれい)が敷かれていた婚約発表の取り消しまでは未だ辿り着いた声は無いものの、溺愛(できあい)する姪であるアメリアを万が一にも傷付けてしまうかもしれない事を恐れた叔父、スコット伯爵の命の元、侯爵家総出で準備をした結果、当のアメリアはガタゴトと揺れる馬車の中に在ったのである。


 通常アメリアが外出する時は、王都内の短い距離の移動であっても、六頭立てのコーチ馬車を使用する事が常であったが、今日は二頭立てのキャリッジ、装飾よりも耐久性を重視した、木材を多く使用した豪壮ではあるが無骨な、所謂(いわゆる)箱馬車に身を預けていたのであった。


 中庭で乗り込んで、そのまま通りに出る事が出来るバーミリオン家の王都邸である。

 実際、この馬車を見た殆ど(ほとんど)の人間が、高級官僚である巡察官か誰かが領地視察に赴くようにしか思えなかったであろう。


 アメリアを悪意の声から守る、その為だけにこんな些細(ささい)な事にまで気を配るスコットは、正しく、良い叔父さん、であった。


 ガタゴトと揺れる馬車の中。

 いつもより派手めなポンピングを感じながらアメリアは同乗者に声を掛ける。


「マリア、貴女大丈夫? こんなに揺れる馬車は初めてなのでは無いですか?」


 言われたバーミリオン侯爵家で、アメリア付きのメイド長をまかされているマリアは、顔色を青褪め(あおざめ)させながらも気丈な笑顔を浮かべて返した。


「わ、私は大丈夫でございます、うっぷ、それより、お嬢様こそ、大丈夫でございますか? うっぷ」


 アメリアが答えて言った。


「ええ、私は大丈夫でしてよ、うっぷ! こんな揺れ如き、学園の実習で経験済みですもの! うっぷっ!」


「そ、そうでしたか…… うっぷ」


 馬車を操っていた御者、イーサン・スカウト男爵が小窓を開けて言葉を掛けた。


「申し訳ない事でございますが、今暫くご辛抱をお願いいたします。 程なく王都を出ますので、都外の土の街道となればここまで揺れはしません、お嬢様、マリア、ご辛抱を」


「おええぇ~、も、勿論、心配してくれてありがとう、イーサン、今この瞬間にだいぶ楽になりましたわ!」


「うっぷ、おおえぇぇ! わ、私もたった今楽になりましたので、執事長様、どうぞ、お心遣い無きよう…… うっぷっ! また来ましたわ! うぷぷ」


 馬車と並走した葦毛(あしげ)の馬上から、メイド長マリアを揶揄う(からかう)ような明るい声が響いた、アメリア嬢護衛騎士団長である、デビットの物だ。


「ははは、マリア! (たま)には馬に乗るか、せめて乗合馬車位は経験して置けと言っていただろう? お前は自業自得、だがアメリアお嬢様の辛さは納得いかん! お嬢様がこんな苦痛を味わう謂れ(いわれ)など…… どこにも無いんだからな!」


 マリアはフルプレートメイルに身を包んでいるデビットの兜に隠された目の辺りを睨んで答えた。


「そんな事は言われなくても判っていますっ! 私などどうなっても良いのです! 只、お嬢様がこのような苦痛を味わう事が、私は只々その事だけがお可哀想で、辛くて、お、お、おええぇぇぇ! ですわ!」


「良いのですマリア! 今は私の事など気にせずに、貴女の体調を一番に、おええぇぇ! はぁはぁ、考えて下さって良いのです! って、おええぇぇぇ! ふう、楽になりましたわ!」

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)


まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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