29. 令嬢、攫われる ②
本日二回目の投稿です^^
エマは少なくない驚きを感じていた。
誘拐? 拉致監禁みたいな真似をする輩について、大概の場合ならず者や反社会的な組織の構成員、若しくは山賊なんかの悪党が相場だろうと思い込んでいたのだが……
今自分に詫びた青年も周囲の仲間達も、揃ってみすぼらしく痩せこけては居るものの澄み切った瞳と真摯に引き締められた表情を浮かべ、決して極悪人には見えなかったからである。
――――? こんなに真面目そうに見える者たちが何故こんな事を…… はっ! きっと深い事情があるのですわ! よしっ!
青年たちに向けてエマは言った。
「フガフガフガ、フガッフガフガ? ……」
猿轡をしたままだった……
当然エマが話し掛けた言葉は男たちには伝わらない、エマの目尻に無念の涙がキラリと光る。
「あ、ああ、大きな声を出さないなら外してあげるよ、良い? 大騒ぎしないかい?」
青年が言い、エマはこくりと頷いたのである。
男の仲間達によって猿轡が外されると、今度こそエマは言ったのであった。
「プハッー、ゴホン、あなた達、何か事情が御有りになるのでは無くって? 良かったら私にお話しなさって下さいませんか?」
「っ! アンタを攫ってきた俺達の話を? 聞いてくれるって言うのかい?」
「ええ、その通りですわ、そもそもアナタ方勘違いをしてらっしゃるのではなくて? 身代金とか仰ってましたけど私達それほどお金、金貨を持ってはいないのですわ!」
「ええ? それは…… 本当に? それ程持っていないの?」
アメリアは何故だろうか、どこか自慢げに返す。
「ええ! 昨日ギルドの宿屋でひと月分のお代を先払いしてしまったので残金が少ないとマリア、私の仲間が言って居りましたもの、間違いありませんわ! それで今日は朝早くから全員で頑張って毒消し草を集めて金貨三枚分になったと、私以外の三人は涙を流し手に手を取って喜んでいた位でしてよ?」
代表して話していた青年は、自分の横に立っていた別の青年に視線を向け、向けられた青年は弁明めいた声を上げる。
「そ、そんな馬鹿な! 俺は確かに見ていたんだぜ! この娘が派手な馬車から降りて来るのを! 王様が乗るような絢爛豪華な馬車だったんだ、見間違いじゃないよ!」
エマは深い溜息を吐きながら代表の青年に言うのである。
「どうやら本当に勘違いだった様でしてよ、私達が使っている馬車と言えば質素この上ない物ですわ…… 王様などと…… やれやれ、もっと下々の者ですらアレよりはマシな馬車を使っていますわ…… はぁ~」
無論、エマに嘘を言っているつもりは皆無である。
エマ自身が普段使いしているコーチに比べても現在使用しているキャリッジは数段質素であったし、王族や大公、公爵家の十頭立てカブリオレ馬車に至っては比べるべくも無い、下々と表現していたが、バーミリオン侯爵家より格下の辺境伯や伯爵の馬車であっても二頭立ての箱馬車よりは当然豪奢なつくりをしている物だと理解していたからである。
見間違いでは無いと言っていた青年が呟きを漏らした。
「そ、そんな……」
代表の青年は溜息を吐いてから、エマに言ったのである。
「こちらの勘違いだったようだ…… 恐い思いをさせて悪かったね、謝るよ、申し訳なかった」
「ええ、分かって頂けて良かったですわ、ではこの縛めを解いてくださいませ」
代表自らエマを拘束していた縄を解き、改めて深く頭を下げるのであった。
「申し訳なかったお嬢さん、もう自由だ、帰ってくれてかまわないし、街の警備所やギルドにここの事を伝えて貰っても構わない、むしろこんなとんでもない事に手を染めようとした俺達なんて…… 鉱山送りや犯罪奴隷になった方が良いんだよ…… 追い詰められて考える事なんてロクな物ではないな…… 何にしろ君には悪い事をしたけど勘違いで良かったよ、恐ろしい犯罪を成功する事無く失敗して捕まった方がましってもんさ、本望だよ」
言いながら何度も頭を下げる青年を無視したまま、再び椅子に腰を降ろしたエマが言った。
「さて、事情とやらを聞かせてくださいません事? アナタ方、お金が入用ですのよね? 何故かしら?」
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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