26. 令嬢、狩る ②
本日二回目の投稿です^^
馬車から降りたエマは大きく伸びをすると周囲を見回したのである。
広がり続ける草原の中、背丈の小さな毒消し草が繁茂している風景が見える。
細いながらも清浄な小川が数本走るその上流は、こんもりとした森林に接しているようだ。
エマは堂々とした声で仲間達に命じるのであった。
「まあ、何てすがすがしい場所なんでしょう! イーサン、デビット! シュヴァルツとヴァイス、グラオのハミを外してあげましょう! 毒消し草集めの間、自由に過ごさせてあげるのですわ!」
「「「ヒヒヒーン!」」」
揃って六歳になる三頭は、生まれた時から聞き続けて来たエマの言葉を理解しているかの様に嘶くのであった。
イーサンとデビットがハミを外すと嬉しそうに草原に向かい、草の匂いや小川に流れるせせらぎの水を嗅ぐ三頭の姿を満足そうに見つめるエマ。
「では、お嬢様? 毒消し草を集めましょうか?」
「…… ええ」
マリアの声に答える言葉も眠気に襲われ、些か覚束ないようであった。
毒消し草を三枚採った時、涎を垂らして呆然としているエマが最早限界を迎えている事は誰の目にも明らかであった。
頑張り屋のイーサンが否定される事も恐れずに言うのであった。
「お嬢様! エマ様! 少しお休みくださいませっ! 我々だけで採集は十分でございます! あちらの木陰でお休みくださいませぇ!」
エマは最早眠っている状態でフガフガ答えたのである。
「ええ、ええ、そうでしょうとも…… では、ちっと…… 眠りますわぁ! 後は、宜しくぅ! フガフガ……」
イーサンの親切な声と、笑顔で自分を見つめるデビットとマリアの優しい顔に安心したエマは、一旦眠らせて貰おうと思い、草原からほど近い森の中ほどにあった大樹の梢の下に腰を降ろして眠りに落ちてしまうのである。
むにゃむにゃむにゃ…… スースー……
夢に落ちたエマ、アメリアの耳に囁きが届く……
――――アメリア…… アメリア・バーミリオン…… 聞こえますか? アメリア……
――――あら、ここは? それに私を呼ぶのは一体どなたかしら? お師匠様達から教えて頂いた内緒の収集場所のここには、私と供の四人しかいない筈でしたのに?
――――ふふふ、私は物質的な存在では無いのです、ここは貴女の夢の中ですよ、そして私は貴女の精神に直接語り掛けているのです
――――まあ! それでは若しかすると、昨日辺りからワザとらしく話題に登場し始めてらっしゃる精霊さんですの? それで早速の御出ましと言う訳ですのね、何か御用ですか?
――――ええ、今日は二つ程魔法を教えようかと、アメリア貴女反射の魔法は使えますか?
――――反射の魔法? でしたら魔法攻撃を跳ね返す『鏡』と物理ダメージを攻撃者自身に転嫁する『報復』が使えますわ!
――――ではその二つを同時に展開する事をイメージして下さい、それも二つが重なり合い融合した全くの純一な障壁としてあなたを包み込む様に…… どうですか?
――――むむむむ…… ええ、イメージ出来ましたわ! それでどう致しますの?
――――では起動いたしましょう! 発動の呪文は『反射』です、さあ急いで三秒以内に起動を!
――――? 『反射』! これで宜しいんですの?
――――ふう、何とか間に合いました…… 良いですか、私が良いと言うまで解除してはいけませんよ!
――――? そうなのですか? ええと、それって絶対? でございますの?
――――絶対! 絶対です!
――――? わかりましたわ
夢の中で言葉を交わしている精霊とエマであったが、実体たるエマの体は大樹の梢を背にすやすやと寝息を立てていたのだが、その顔を嚙み砕こうと鋭い牙に魔力を込めて襲い掛かったマッドウルフの頭が吹き飛ぶのであった。
仲間の突然の死に怒り狂った群れのモンスターたちは、ただ眠っている様にしか見えないエマに対して踊りかかり、次々と肉を爆散させ命を散らせ続けて行ったのである。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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