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16. 令嬢、採る

 ギルドの受付で薬草の見つけ方からありそうな場所、採取の仕方や納品方法、買取価格まで丁寧に教わった四人は、早速町から一番近いポイントに移動して周囲を歩き回り薬草を探し始めたのである。


「あら、あまり生えていませんわね…… あ! 見つけましたわ! マリア、見て御覧なさい! これでは無くって?」


 呼ばれたマリアがエマの指さす先にあった草に顔を近づけてジッと観察している。

 慎重に暫く見ていたが、やがて頷くとギルドで聞いてきた通り最上部の葉三枚のやや下方の茎を丁寧に千切って立ち上がり言う。


「お嬢様、確かに薬草でございました、ギルドで教えて頂いた通り無事採取完了いたしました」


 エマはポカンと口を開けて呆けていたが、気を取り直して言った。


「え、ええ! 何で採ってしまったのです! 私が見つけましたのに、え? マリア! わざとなのですか? 私が見つけたのですよ? 私が摘みたいと思う事位分かりませんの? 分かりますわね! ねえ、マリア!」


 マリアは肩を竦め(すくめ)ながら慌てて答えた。


「す、すみません! うっかり摘んでしまいました! お嬢様が見つけた薬草でございます、

お嬢様の採取物としてお譲り致しますのでどうかご容赦くださいませ」


 エマ、いいやバーミリオン侯爵家のアメリア令嬢は横目でメイド、マリア・レオニーを眺めながら言った。


「譲る? ですか…… いいえ! 結構ですわマリアっ! 貴女が親切にも()()と仰って下さっても私はお受け出来ませんの! お断り致しますわっ!」


 プイッと横を向いてしまったエマ。

 どうやらご機嫌を損ねてしまったらしい、そう考えたマリアは小声でもう一度詫びの言葉を口にして、なるべくエマから距離を取って薬草探しに戻るのであった。

 エマも薬草探しを再開したが、その形相は必死、その物であった。


 デビットの声が草原に響いた。


「お、有った有った! やっと一つ見つけましたよぉ! お嬢様ぁ!」


「ああ、そうなの…… 良かったわね」


「え? ええ、すみません!」


 暫くするとイーサンも嬉しそうな声を上げるのである。


「おお、漸く(ようやく)私も見付けられましたぁ、おや? ああ、なんとこの場所に集まっていましたよぉ、三株ゲットですぅ! アメリア、いいえエマお嬢様ぁ!」


「へぇぇー、それが何?」


「あ、いや…… すみません……」


 可哀そうに、デビットもイーサンも初めての薬草採りで不安もあっただろうに……

 分かり易く不機嫌なエマ、アメリアの態度のせいで喜ぶこともままならない様子であった。


 しかし、明けない夜は来ないという事であろうか?

 ぶらぶら腐りながら地面を適当に見ていたエマが久々に嬉しそうな声を響かせたのであった。


「あ? あああっ! み、見つけましたわよぉ! 薬草が、こんなに青々と葉を広げてぇ! やりましたわ! 正真正銘、私が見つけて手ずから摘み取った、記念すべき最初の薬草ですわ、なんて可愛らしい――――」


「あら、嬉しいですわ、ここにはいくつも集まっていましたぁ! いちにいさん、んまあ四本も! 五本一束の納品ですから一気に捗り(はかどり)ましたわ、良かったですわぁ!」


 悪気は無いのであろうが、能天気なマリアの叫びを聞いた二人、デビットとイーサンは溜息を吐くのであった。


――――このタイミングで口に出すなよ、台無しじゃないか × 2


 案の定エマは黙り込んでしまい、下唇を突き出して横にあった小石を蹴り飛ばしていた。


「チェッ!」


 何やら令嬢が発してはいけない音まで聞こえて来ている様であった。


 完全に腐ってしまったであろうエマは、近くにあった樹木に背を預けると、夕べの寝不足のせいか、はたまたマリアのKY加減のせいであろうか、グーグー大鼾(おおいびき)を上げて眠り込んでしまったのである。


 すぅぅ~ グゴォォォ~ すぅぅぅ~、 クァ、ググググゥ~



 太陽は真上に登りそろそろお昼に近付くころ、イーサンは優しくエマの肩を揺すって起こしたのであった。


「お嬢様、そろそろ一旦戻りませんか?」


 エマは(ヨダレ)を拭いながら答えた。


「んあ? えっと、イーサン? ええと…… あ、そうかっ! では一旦戻りましょうか? 皆ご苦労様でしたわね!」


「「「はいっ!」」」

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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