133. バルコニーのアメリア ⑥
本日一回目の投稿です^^
騎士達を掻き分けて現れた大柄な人物が二人に向けて言った。
「警戒しなくていい、それ所かこそこそ逐電する必要もないんだ、ダニエル殿下、それにアメリア」
「お、叔父様? なぜ私がアメリアだと見抜けたのですか? デニーの事も!」
スコットは自分の姪に対して残念な者を見る様な視線を向けてしまった。
何故なら顔だけは何とか隠せてはいる物の、エマもデニーも冒険者時代に着用していた格好のままであり、二年前の凱旋パレードを見ていた者であれば、誰でも二人だと特定できる姿だったからである。
だというのにスコットは可愛い可愛いエマを傷付けないように言ったのである。
「なぜって…… ほらあれだよ、えーっと、うん! お前と王子、二人の話す声が後半は普通に邸内に聞こえていたからだよ」
「まあ、そう言えば小声だったのは最初の内だけでしたわ、失敗なのです……」
「悔やんでも仕方ないよエマ、それでスコット卿、逃げなくても良いとはどういう意味かな?」
スコットは両手を大きく広げていかにも楽しそうな笑顔で答えた。
「バーミリオンの家に入られれば良いのです! 喜んでお迎えいたしましょう! 王都に住むのが億劫でしたらバーミリオンでもスカウトでも、なんならアイアンシールドでもお好きな所でお暮しになれば宜しいのですよ! 他の辺境でも選び放題です! 可愛いエマの愛する方です、家を上げてお迎えいたしますぞ!」
悪くない話であった。
デニーは剣先を少し下ろしてエマの顔を振り返った。
エマはキョトンとした顔だ、恐らく事態の急変に付いていけていないのだろう。
仕方なくデニーはスコットに視線を戻して話し返した。
「スコット卿、嬉しい提案を有り難う、お言葉に甘えて僕はバーミリオン家の庇護を――――」
「お待ちくださいませっ! 王太子殿下っ! なりませぬぞっ! そんな事は許されませんっ!」
スコットの反対側、王宮から派遣されてきた衛士の後ろから現れたのは、式部卿のバースを先頭にした国王派貴族たちの集団であった。
「バーミリオン家に沙汰を伝えに来てみれば、王太子殿下を自家に取り込もうと誘惑中とは、いやはや、これでは、陛下の命で温情溢れる処分を検討して来た我々はとんだ道化ではないか! 卿等、そうは思いませんかな?」
「全くだ」 「そうだそうだ」 「恥を知れ!」 「所詮は辺境者だな」 「謹慎中であろうがっ!」
周囲の貴族たちが合意の声を上げスコットに非難の目を向ける。
視線を受けたスコットは悪びれる様子も無く、フンっと軽く鼻を鳴らした。
邸のあちらこちらから幾つもの人影が中庭に溶け出すように姿を現した。
揃って朱色に統一されたフットマンの衣装に身を包んでいる。
国王派の貴族たちが非難の声を消して小さく身を寄せた所へ、デニーの声が響いた。
「卿たちに聞くが、温情溢れる処分と言うのは僕とエマの結婚を白紙に戻して、そこにいるバース卿の子女であるアンドレア嬢を娶る事を言っているのか?」
「な、何故それをっ!」
「……ほう」
狼狽えるバース公爵と、庭の反対側で呟くスコット侯爵。
庭を囲んでいるフットマンたちの体から闘気の様なオーラが揺らめき始めていた。
一触即発、そんな空気に大臣たちが震えあがる中、式部卿であるバース公爵が堂々とした声音で返す、中々の胆力だ。
「その通りですぞ殿下! 先日の騒動で我らは改めて理解したのです、確かにバーミリオン家の人間は英雄だという事は認めましょう、しかし、その強さゆえに物事の解決を腕ずく力ずくで強要する節が多すぎるのだ! 軍務では必要な事なのかもしれない…… しかし、王族や縁戚、国の中枢に実力行使を良しとする一族が蔓延る事にはハッキリ反対と言わざるを得ない! これが私が公爵として出した結論に他なりません! 国家にとって強さは必要です、しかしそれだけではいけません! 殿下! お考えになって下さい! 国とは様々な人間が係り合って尊重し合い運営されて行くものなのです! 弱者の悲しみを知らぬ一族の台頭には慎重になるべきなのですぞ!」
「むうぅっ」
バースの言葉に思い当たる事でも有ったのか、はたまた有り過ぎたのか、スコットは小さく唸った。
代りにバースに声を掛けたのは話し掛けられた張本人であるデニーであった。
「僕がエマと結婚すると国民全員が不幸になる、そう言うのか? バース卿」
ダニエル王子が自分の言葉を聞いて理解を示してくれた、そう思ったバース公爵は胸を張って答えた。
「そうは言いませんが、その可能性が大きい、そう言う事です! 殿下とアメリア嬢のお二人が愛し合って居られるのならば、第二婦人ですとか、側室ですとか、幾らでも方法は有るのですよ? 国民の為にリスクを避けるのだとお考え下さい! ノブレスオブリージュ! そう言う事でございますよ殿下、何卒、冷静にご判断を、どうか、賢明なご分別を!」
デニーは無表情になって答えた。
「わかった」
『おおっ!』
国王派の貴族たちが歓喜の声を上げたが続いたデニーの言葉はこうであった。
「僕たち二人を引き離し仲を裂く事が全国民の為だと言うのなら、王国、いいや全国民は僕の敵だ! 世界よ呪われろ! 全員死んじまえぇー!」
そう言うと、レジルを庭に突き刺して手放し、両手を左右に広げて言った。
「喰らうが良い、『破壊――」
「待って待って待ってえぇぇっ! 駄目っ! デニー、約束したでしょうっ! 私の許可も無いのに使うなんて、駄目、絶対ですのよ! ステイッ! デニー、ステイッ! ですわっ!」
「え、エマ!」
破壊光線でエマを含めた全人類を消滅させかけたデニーであったが、そもそもの素直な性格が幸いし、エマとの約束を思い出したおかげで破壊神にならずに済むのであった。
エマの足元では何を勘違いしたのかマッドウルフのチビが『伏せ』をして、嬉しそうに尻尾を振っていた。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
ブクマ、評価を頂けましたら狂喜乱舞で作者が喜びます^^
感想、レビューもお待ちしております。
Copyright(C)2019-KEY-STU









