132. バルコニーのアメリア ⑤
本日三回目の投稿です^^
ほんの少ししてバルコニーに姿を現したアメリアは、冒険者時代と同じ朱色のドレス姿であった。
手にはソフィアお手製のポーチを持ち、慌てていたのだろう、お気に入りのつば広のレディースハットの下にはナイトキャップを被ったままである。
「来ましたわデニー、んでも、どうやって降りれば良いのかしら? はてな?」
デニーが両手を広げて言った。
「僕が受け止めるから心配しないで! さあ、思い切ってそこから飛んでごらん、エマ!」
コクリ
頷いたエマはバルコニーの手すりに足を掛けると勢い良く飛んだのであった、前方に……
スローモーションに変わった景色の中で自分を見上げたデニーが徐々に自分の視界から消えて行った。
目の下には無人の堅い石畳が凄まじい勢いで近付いている。
瞬間、エマは目をギュッと瞑りながら思うのであった。
――――死ぬのですわね、美人薄命、さようなら
ガッシッ! クルクルクル、ズザーッ!
堅い石畳に打ち付けられて死ぬはずが、どこか覚えのある感触に抱き留められたエマは、恐る恐る目を開くのだった。
目の前にはデニーの顔が拳一つ程の距離だけを隔ててこちらを見つめている。
数年前のあの日、ルンザで踊ったダンスのラストシーンと全く同じ姿勢で自分が抱かれている事が分かった。
「大丈夫かい? エマ」
「ええ、ありがとうですわ、デニー」
その会話を最後に二人とも言葉を発しはしなかった。
いや、発する事が出来なかった。
二人の唇は、愛する人の唇に重ねられて、暫く他の用を為さなかったからである。
「「ぶはぁーっ!」」
暫くして唇を離した二人は膝に手をついて荒い呼吸を続けるのであった。
デニーが言う。
「はあ、はあ、エマ大丈夫かい?」
エマが答える。
「え、ええ、大丈夫ですわ、はあ、はあ、これって止め時が分かりませんわね、はあ、はあ」
「そ、そうだね、今後検討を要す、だね! ふうぅ~、良し、行こうか!」
互いに初心であったため、キスの終わりが分からない上に呼吸まで止めていた二人は、酸欠で限界だったようだ。
すぐにでも動き出そうとしたデニーをエマの声が止める。
「デニー、幾ら夜とは言え誰かに見咎められるかもしれないのではなくって? 念のために顔を隠して行動するのですわ」
「なるほど」
納得したデニーの声を聞きながらエマ、アメリアはポーチの中からアプリコットのハンカチーフを二つ取り出して、一つを渡しながら言う。
「さっ、これを頭から被るのですわ、そうすれば誰にも気づかれる事は無いでしょう? 外れないようにしっかり縛る事を忘れないでね、デニー」
「分かった、あれ? このチーフ小さめだから顎まで届かないな…… どうしよう?」
「まあ、デニーったら、相変わらずオッチョコチョイなのですわ! ほら、顎じゃなくて鼻の下で縛れば届きましてよ、どうですの?」
「本当だ! 流石エマは物知りだね! ありがとう!」
「どういたしまして、では、参るのでしてよ」
仲良く泥棒被りで偽装を果たした二人は、バーミリオン邸の中庭をそーっと移動し始めたのである。
ワンッワンッワンッ!
「「っ!」」
中庭の先から一匹の巨大な四足歩行の獣が二人目掛けて駆け寄って来る。
「ま、マッドウルフ! なぜ王都の中にっ?」
「違いましてよデニー、あれは我が家のペット、チビでしてよ」
「チビ? あの巨体でチビなの?」
「飼い始めた時小さかったからですわね、まあお父様は未だに小さくて可愛いとか言ったりしますけれども」
駆け寄って来たチビはアメリアに鼻を寄せて嬉しそうに尻尾を振ったのである。
ワフッワフックウ~ン!
「ち、チビ、静かにするのですわ! 誰かに気が付かれてしまうではないですの!」
「ねえエマ、この子やっぱりマッドウルフだよね? 中級モンスターの…… どこで拾って来たんだい?」
そんな暢気な調子で話をしていると、周囲に多くの足音が響いた。
邸の出入り口を固めていた衛士に気が付かれてしまったらしいだけでなく、がちゃがちゃといった鎧の音はバーミリオン邸からも聞こえて来たのであった。
「あらら、取り囲まれてしまったのですわ」
「むぅ、こうなったら中央突破するしかないのか」
「ダメでしてよデニー、衛士も我が家の家臣も誰一人、傷付けてはいけないのですわ」
エマの王妃教育の成果である洗脳はまだ解けてはいないようであった。
デニーも自国の兵士を傷つけたいとは思ってはいなかったのでエマと背中合わせになって消極的に武器を構えたまま、取り囲んだ騎士たちと睨み合う形になった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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