119. 令嬢、凱旋する ⑥
本日二回目の投稿です^^
噂を聞いた王宮での会議は又もや紛糾したのである。
但し今度は意見の違いで言い争うのではなく、南方で転戦していた謎の軍勢、今や正体が知れたバーミリオン辺境伯軍の勝手な行動を糾弾する声によってであった。
決定した声明はこうであった。
『速やかに王都に赴き、独断の戦闘に至った理由を説明せよ』
返したパトリックの言葉はこうである。
『ふざけるのも大概にして頂きたい、今は危急存亡の時である、戦いを恐れるのならば王都で震えているが良い、但し、現在は戦時である、民の事は我らに任せ、王、陛下の周辺は護り堅くする事、これだけは申し告げる物也』
その後、気勢を削られた中央は言を慎み、八年後、見る態も無く傷ついてギリギリの勝利を収めたバーミリオンの戦士たちは王国中から賞賛の声を受ける事になった。
この間に現王が暗殺の魔の手に曝された、その数を数えれば優に八回にも及んだのである。
ある時は気晴らしに訪れた湖畔の別荘で起こった事であった。
水辺で楽しそうに笑い合っていた王家の家族を襲った南方の刺客を、容易に退けた漆黒の執事服に身を包んだ若い男は言った。
「王よ、慎みなさらぬか? いやはや全く…… 我が主の爪の垢でも煎じて飲まれれば良い物を…… ふぅ~」
その後も王が危機に瀕する度にどこからともなく現れては去って行く影の軍団、そのリーダーを、聞き知った人々はこう噂したのである。
『王家の守護者、バーミリオンの影』、と……
この頃にはバーミリオン家の人気は国民だけではなく、南方の小領主の殆ど全てと、二家の辺境伯家の支持まで集めていたのであった。
影響力を増したバーミリオン家を無視できなくなった王宮は、侯爵に陞爵させるだけではなく、王太子とバーミリオン令嬢の婚約を申し込んで取り込みを図った。
その上で、彼の家の騎士団による王都への凱旋パレードを敢行したのであった。
十年に過ぎない昔である。
父が、兄が、母が、姉が、その記憶を幼い子供達に語って聞かせ、聞かされた子供たちの嬌声が王都の中央通りに叫ばれ、鳴り響いたのであった。
人々が思い出したのはほんの十年前の興奮、その物である。
幼いストラスがスコットやトマスの姿絵を買い与えられたのもこの頃であったのであろう。
不自由な体を物ともせず、民に送る笑顔は正しくバーミリオンの騎士達、勇者のそれであった。
『ウオオオォォォッ、ワアアアアァァァァッ!』
大きな声を受け止めたのは、僅かながら生き残った四十人の微笑みであり、答える民の喜びと感謝の声は幾千幾万の命の慟哭となって王都を震わせたのであった。
続いて登場したのは、ポンダー商会の次男にして、新興都市となったルンザの若き顔役の一人、クリス商会の会頭、クリス・ポンダーの弾けるような明るい声であった。
「さあさあ、皆さん! 近くに寄って聞いてちょうだいよ! 遠くの人は目を凝らして見てねぇ! クリスが送るエンターテイメントぉ! 世にも珍しい南方の音曲、その極意を堪能下さいませぇっ!」
この声に合わせて、数百人の南方人の楽隊が、一斉にかき鳴らす異国情緒に溢れる激しい音曲の中、中央通りを進む二台のワゴンの上では周囲にブンブンと手を振るクリス、レッド、ホワイト、後ろのワゴンに乗った、ジャック、チャーリー、ハンスだけでなく、いつの間に呼び寄せられたのか、揃って右腕にアプリコットの布を巻いた冒険者たち千人以上が手に手に思い思いの武器を携えて、腕を突き上げて行進をして行くのである。
キャリッジが見えた。
周囲を囲んだ楽師たちは、あの夜、ルンザに誕生したクリス商会の開店記念に集められた南方の傭兵達であった。
ダンスの最後にエマ、アメリア・バーミリオンのフルヒールを受けて欠損は兎も角、腱の殆どを取り戻した格別の楽師たちである。
あの夜、今までにない速弾きを成し遂げた彼らが爪弾き吹き鳴らす旋律は、王都の民の心にも確実に届いていたのである。
高揚し捲る人々の喧騒の中、質素に過ぎるキャリッジのリアに有る、片扉のハッチから姿を現した、金色の髪と金色の瞳を煌かせた細身の美丈夫が、足取りも軽く登り切ったステップの上から手を伸ばして、朱色の髪と朱色の瞳、更に同じ色のドレスを身に纏った美しい少女を引き上げた。
その上で、自らの腰に抱き寄せる姿に周囲の人々は目を奪われたのであった。
箱馬車の屋根に乗った二人、中央通りに集まった人々は不審そうな目を向けている。
金色で背に白銀の巨大な剣を背負った青年は誇らしげに宣言をした。
「やあ、皆さん! 僕はデニー、只のデニーだ! そして、僕が手に抱いたレディーはアメリア、いいやエマ、只のエマ! だけど魔王を倒した、偉大なるエマ、特別なエマなんだっ!」
言葉の意味を知った人々は、ここ迄に無かった万雷の拍手と、大きな祝福の歓声を王太子たるダニエル・ルーク・ブレイブニアと侯爵令嬢であるアメリア・バーミリオンに向けて、惜しみなく捧げるのであった。
折角、準備した十二頭立ての豪勢なカブリオレには、デニーに抜擢されたクロード・コロル・ファイアワークス子爵が一人きりで乗って中央通りを走り、申し訳なそうにしながらも民に手を振っていたのである。
お読みいただきありがとうございます。
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まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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