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115. 令嬢、凱旋する ②

本日二回目の投稿です^^

 エマでは無くシンシアが最初に話し掛けたのである。


「えっと、私はシンシアでしてよ、タギルセ伯爵家の娘ですわ、えっと、ミスター・クロード? でしたわね…… よろしくお願い致しますわ、ね」


「ロア、ロアとお呼びくださいませ、月光の令嬢、シンシア様」


「あ、ああ、そうでしたわね、よろしくお願いしますわ、是非、永い厚誼(こうぎ)を望むのですわ、えっと、ろ、ロア?」


「ええ、こちらこそレディ・キュニィ」


「ん、まあっ!」


 シンシアが嬉しそうな声を上げた。

 シンシアと言う名は古い言い方ではキュンティアである、月の女神を表す言葉が語源であったのだ。

 自らの名前の意味に通じる愛称で呼ばれたシンシアは頬を染めて嬉しそうにしていた。


 次にクロード子爵に声を掛けたのは、顔を紅潮させたストラス・ダキアである。


「ふ、ふん! ファイアワークス? 知りうる限りの子爵位に名を見た事が無い家では無いか? いづれ、成り上がりの法衣貴族であろうが、軽口を叩く物では無いのではないか!」


 ()いているのだろう、必死に家柄を口にするストラスは、いつもの雄々しい剛腕では無くどこか弱々しくさえ見えた。

 クロード・コロル・ファイアワークスは薄めな笑顔を浮かべてストラス・ダキアに向けて答えた。


「その通りです、ストラス・ダキア、いいえ剛腕(スティファーム)のストラス! 私はファイアワークス男爵家の長男に過ぎませんでした、一月前までは…… ですが、皆さんの物語を書き(つづ)る為、その一点だけを求められて、家督(かとく)を継ぐことが許されて、同時に陞爵(しょうしゃく)を受けて、念願の子爵に上がったばかりなのですよ! 聞く所によると貴方は鉄を自由自在に操れるのだとか? 素晴らしい能力では無いですかぁ! まるで古代の物語に登場する、伝説の戦士みたいだと、常々思っていたのですよ! お会い出来て光栄の(みぎり)ですよぉ!」


「お? おお、ま、まあな……」


 口撃(コウゲキ)のつもりがべた褒めで返されてしまったストラスは毒気を奪われたように言葉を濁すのである。

 代わってエマがクロード子爵に疑問を聞くのであった。


「私達の物語、ですの? それを貴方がお書きになるとか何とか、一体何のお話なんですの? えっとロアさん?」


「ええ、実はですね――――」


 首を傾げるエマに笑顔で説明を始めるロアであった。


 曰く、王宮内では今回の魔王討伐について、建国王の偉業と比肩(ひけん)される程の功績と見做す(みなす)向きが大勢(たいせい)を占めており、それを成し遂げた王太子率いる討伐パーティの王都への帰還は盛大なパレードで迎える事が決定している、との事であった。


 王国のみならず、この世界全体を破滅へと導かんとした邪悪な魔王、ザトゥヴィロを(ちゅう)した偉大な勇者パーティーを迎えるに相応(ふさわ)しい歓迎にしたい、現王自らの言葉だそうだが、これには息子であるデニーが首を傾げて不可解だと抗議の声を上げていた。


 まあ、そんな訳で歓迎の準備を進める事となった宮内省(くないしょう)の礼部から、教育と歴史を司る式部省(しきぶしょう)へと依頼が来たのだと言う。


 依頼の内容は、


『今回の王太子殿下の偉業を正史に綴る(つづる)に当たり、その内容を広く市井(しせい)流布(るふ)させる事を目的とする次第である、これにより式部には王国内に書籍として配布し、同時に劇作の元となる叙事詩(じょじし)、及び歌劇、吟遊(ぎんゆう)の題となる抒情詩(じょじょうし)を作成されたし』


だったらしい。


 簡単に言えばこの魔王討伐譚を物語、演劇や歌の題材として王国内で上演させて盛り上げよう、そういう目論見なのだと言う。


「帰還歓迎のパレードに合わせて発表された物語を見聞きした国民はさぞ盛り上がる事でしょうね! と言う訳でデニーと親しくて忌憚(きたん)なくお話しできる私に白羽の矢が立ったと言う訳なんですよ、叙事詩の方を担当する役を仰せつかったという事ですね」


「ほー」


「なるほどなのです」


 納得の声を上げるデビットとマリアだったが、エマは又もや首を傾げてロアに問うたのである。


「でも魔王討伐のお話でしたらもう何べんも色々な方にご説明してありましてよ? ロアさんは聞かされて居られないのでしょうか? ハテナ、ですわ」


 エマの疑問にロア、クロード・コロル・ファイアワークス子爵はにっこりと微笑みながら返すのであった。


「ええ、勿論、纏め(まとめ)られた報告は隅々まで把握しておりますよ、レディー・アメリア」


「でしたら何故長いお付き合いになるんですの?」


 この言葉を聞いた彼は、エマだけでなくここに集った物語の登場人物たち全員を見回しながら言うのだった。


「物語はそのまま記せば良いと言う物では無いのですよ、皆さん、この私のアレンジによって、皆様全員をより輝かしく活躍させて見せましょう、どうぞ、お楽しみになさっていて下さいませ」


『おおおっ!』


「あ、あれんじ?」


「やれやれ……」


 盛り上がる関係者の中で、エマは益々首を傾げてしまい、デニーは呆れたような呟きを漏らすのであった。

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

ブクマ、評価を頂けましたら狂喜乱舞で作者が喜びます^^

感想、レビューもお待ちしております。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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