101. 剛腕、しばかれる ④
本日二回目の投稿です^^
変え馬を三頭乗り潰して、二か月ぶりにルンザに帰ったストラスは、道案内を強要されて辿り着いた冒険者ギルドの扉を開いたのである。
「す、ストラスさん?」
「お、お帰りなさい! どうしたんですか?」
驚いた顔でストラスに声を掛けたのは、依頼の達成報告をしている最中のレッドとホワイトの二人であった。
「お、おう、た、ただいま…… なあ、お前等、エマ達は――――」
「がははは! エマは、儂のアメリアは何処だぁぁ! ここにいるのは分かっているんだぁ! 早く連れて来いっ! グハハハハっ!」
「え、え、えええ?」
「ストラスさん! こ、この御方はぁ?」
「エマの御父上、パトリック・バーミリオン侯爵だ! は、早く、早くぅ! 誰かエマを、いないのならば責任者を連れて来てくれよぉ!」
ストラスの叫びを聞きつけたギルドマスターのガンズが、慌ててエントランスに出て来る。
因みに揉み手をしながらである。
「これはこれは、バーミリオン侯爵様でございますか! 私めはここルンザの冒険者ギルドマスターをさせて頂いておりますガンズと申しまして、お嬢様のアメリア様とは以前より親しくさせて――――」
「エマは? 娘は何処にいる? 父が来たと伝えて早く連れて来てくれ!」
「ははっ! 只今っ! おい、アンナ、エマ、いいやアメリアお嬢様はどちらにいらっしゃるんだ? 御父上がいらっしゃったとお伝えするんだよ! 早く早く!」
「エマさん達なら今遠征中ですよ、どこに向かうかは言っていませんでしたけど、二日後には帰って来る予定ですよ」
「だそうです、侯爵様、如何致しましょうか? げへへへ」
ガンズはギルマスとして出来る限りのおべっかを使っていた、立派な男である。
エマの父、パトリックはガンズの問い掛けをガン無視して、改めてギルドの内部を見回している。
「この様な所にエマが…… あの繊細な娘が荒くれ者の冒険者たちの中で…… 虐められ、嘲笑と好機の目を浴びせられ続けてジッと耐え忍んでいたのか…… 不憫である! こうなったらここにいる冒険者毎、この場を無に帰してアメリアの苦痛に一矢報いるしか――――」
「エマのお父さん、それは違いますよ、なあホワイト?」
「ああ、その通りですよ、エマは皆に好かれていたし、それだけじゃなく、いつも笑顔で皆の気持ちを解してくれた女神みたいな存在だったんですよ? それに努力に努力を重ねて今ではここルンザでトップの実力を持ったゴールドランク冒険者になったんです! 今や、いいえ、この町に現れた最初の日から、エマはルンザの全冒険者のアイドルでカリスマなんですよ、ねえ、レッド? 」
「その通りだよホワイト! なあ、皆も同感だろう?」
『当然だ!』
「むう」
更にレッドは続けた。
「それに見て下さい、この腕に巻いたアプリコットの布を…… この場所にいる冒険者の殆どが身に着けているでしょう? この布はエマを始めイーサン、デビット、マリア、デニーの五人、パーティー『ノブレスオブリージュ』に感謝と尊敬を現す為に付けているんですよ! 最初はきっと、貴族のご令嬢だったエマには不慣れで辛い事も有ったかも知れないですが、俺にはエマ達が冒険者としての生活を楽しんでいる様に見えましたよ、エマのお父さん?」
パトリックの後ろに立つトマスが呟いた。
「あのイーサンも楽しんでいた、だと?」
パトリック・バーミリオンはもう一度周囲を見回すのだった。
視線を向けられた冒険者たちは怖じることなく、腕に巻かれたアプリコットの布を見せつけている。
レッドの言葉通り、布を着けていない冒険者を探すのが難しい程であった。
パトリックは大きく息を吐いて、それまで張りつめていた表情を緩めた。
穏やかな顔はやはり父親である、どこかエマに似た面差しだ。
太いが柔和そうな声でパトリックは言った。
「そうか、アメリアはここで冒険者として頑張っていたと言うのだな、お前たちみんなに慕われて笑顔で日々を過ごしたのか…… 冒険者の諸君、そしてギルド職員達よ、我が娘が世話になったようだな、礼を言う、皆の厚誼に感謝する…… ところで、デニーとは一体誰なのだ? ストラス・ダキア、お前の話には出てこなかったぞ?」
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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