091 以降が死闘
ついに、悪魔が魔物達を引き連れて襲撃にきたらしい。あれ程の数の魔物、ここにいる戦力でも捌ききれるかどうか……と思ったところでふと大事なことを思いだし、指揮をとっていたベイルに近づく。
「白金級は?」
「……まだ来てない」
「……マジかよ」
ナツキと悪魔の討伐についてつい昨日話していたばかりだが、そういえば冒険者ギルドは白金級を悪魔討伐役として派遣するつもりだった。
……のだが、そんな重要な人物がまだ到着していないという。
基本的に一箇所に留まる事のない白金級とは連絡が取り辛いが……こういう大事な時に直ぐ駆けつけてくれないと、何の為にその実力があるのかと問いたくなる。
偉そうな態度を取るなら、その辺りのことはちゃんとしてほしいものだ。
「……まあ、想定はしていた。……皆!白金級が来るまでなにがなんでもこの村を死守するぞっ!!」
「「「おおっ!!」」」
疲れた顔でそう呟いた後ベイルは、リーダーとして皆を鼓舞する。
……この役回りが一番苦労するんだろうなと、密かに同情した。
『ギャギャッ!!』
『ギャギャアァッ!!』
「迎え撃つぞぉっ!!」
「「「うおぉぉっ!!」」」
無数の黒いゴブリンが突撃してきたのを合図に、冒険者達が走り出す。
「おらぁっ!!」
『ギャアッ』
「<火炎弾>!!」
『『ギャアァ……』』
いくら強化されていようとゴブリンはゴブリンであるらしく、金級の冒険者達は苦労する事なく薙ぎ倒していく。
だが、何より数が多過ぎる。倒しても倒しても迫ってくるゴブリン達に、冒険者側は疲弊するだけだった。
そこで。
「はあぁぁっ!!!」
『『『ギャアァ……』』』
ナツキの渾身の薙ぎ払い。放たれた衝撃波によって爆発が起き、たった一振りでゴブリンの半数を刈り取っていった。
「……人間技じゃねぇ……」
「威力が違い過ぎるわ……」
味方がドン引くくらいの力が、勇者には備わっている。これが悪魔を倒すことができる基準のようだ。
……恐らく、白金級でも届かないレベルだろう。この衝撃波、魔法でもなんでもなく、言い方によってはただ剣を振っただけだからな。
足手まといになるのを極力避けるために俺は後方に陣取り、こうして状況の把握に徹する。
セレノにもこっちの方が適していると言われたことがある。だから決して逃げている訳ではない。
「……あれ、なんでしょうか」
「ん?」
そんな俺に沢山のものをくれた女性が、今隣で暗い空に向かって指を指す。
その先には、明らかに異質なものが浮かんでいた。
「赤い光……さっきからあったか……?」
「分かりません……気づいたらありました」
周りを見ても、上に注視している人はいない。これだけの人数がいて気づいていないなら、ずっとあったなんてことはないだろう。
……しかし、朝方のこんなところで、赤く光るものなんてあっただろうか……
様々な可能性を考えながら見続けていると、それは少しずつ変化しているようだった。
「大きくなっている……?」
空に浮かび、少しずつ大きくなる赤い光。そんな現象は前の世界では聞いたことがない。この世界特有のものだとして、今このタイミングで現れると考えると……
「……魔法?」
そう思えば、火の玉に見えなくもない。
……待て、この距離で火の玉程度に見えているとすると、実際の大きさは一体……?
再び仰ぎ見ると、光は更に大きくなっている。あれは……大きくなっているのではなく、近づいているのではないか?
だとすると……滅茶苦茶マズい!
「ナツキっ!上だぁぁっ!!」
俺の全力の声に、周りが此方を向き、上を向く。理解が追いついていないようだが、周りの人が理解しようがしまいがどうでもいい。
ナツキに伝わらないと意味がない。
柄にもないことをして喉を傷めながらもナツキがいる方向を見ていると、少しして地上から飛び上がっていく黒いものが見えた。
「はあぁぁっ!!!」
黒いもの……ナツキから光が放たれ、迫り来る赤い光に直撃する。
直後激しい爆発が起き、爆風が吹き荒れる。皆地面に押さえつけられ、身動きが取れない。
……
やがて爆風が収まり、土埃が晴れると、赤い光は消えて無くなっていた。
……これ程までの爆発は、高エネルギ―同士のぶつかり合いでないと起こらないと思う。
そして片方は、勇者が出した光。つまりあれは、あれを作り出したのは……
『ドウシテ……ドウシテマタ規格外ノ人間ガ居ルノダッ!!』
空から響く、酷く耳障りな声。




