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058 家族は大事

「うわあほんとだ、ぴんぴんしてる!」

「あまり激しく動かないでください、上手く治せているか自信ないので」

「大丈夫だよセレノ、自分の体は自分が一番分かってるから。今かなり調子いいよ」

「本当ですか……?」


 翌朝、フォリアは体が治っていることにまた興奮してはしゃぎまわり、セレノをビビらせている。


「そうだな、セレノはもっと自分に自信を持った方がいい」

「レーブ兄まで……今は、まだ無理です。自分が満足するくらい、もっと色々出来るようになってからじゃないと」


 真面目なセレノは、自分の実力を驕ったりしない。自分に自信を持てないからこそもっと上を目指すというのは、考え方としては有りだと思う。自分に自信がない上に特に努力もしなかった前世の俺とは大違いだからな。


「二人は、家族?兄妹?」

「えっ……兄妹、みたいなもんだな」

「みたいなもん……じゃあ、そうではないんだね」

「……そうなるな。まあ、大事な仲間だ」


 家族、と言われてかなり動揺した。それはセレノも同じなようで……うわ、顔真っ赤だ。急な話題転換は止めてくれ、心臓に悪いから……


「大事な仲間、か。エルフは、皆家族で、兄弟で、仲間だから……だから……」


 あ……そういう考えが根底にあったから、家族、兄妹なんて聞き方をしたようだ。……勝手に勘違いしてしまった。

 いやそんなことより、大変な目に遭っているこの子の家族を助けないと。


「……早く行ってあげないとな」

「……うん!」


 そうして、フォリアの案内のもと、集落への移動を開始した。



ーーーーー



「レーブもすごいね!」

「そっそうか?眠らせてるだけだけどな」


 スピードを重視するために、迫り来る魔物は殆ど眠らせて放置して進んでいる。……俺的にはそれで大助かりだ。何しろこの森の魔物だが、動き回る植物、飛び回る虫、馬鹿デカい虫……気持ち悪すぎて近づきたくない。


「レーブ兄がすごいのは当たり前です」

「おっおう……」


 必死に平然を装っているところに褒められるのは中々しんどいな。というか、そもそも俺はすごくない。尊敬してくれているのは嬉しいが、勘違いはよくないぞ。

 俺のことばかり言っているが、二人も十分すごい。セレノの風魔法の威力は言わずもがな、フォリアの弓の精度も相当なものだ。たまに矢が曲がって魔物に当たっているのは、風魔法を併用しているからか。……矢に魔法を付与することも出来るのか?それはかなり興味深いが……


『ピギャァァ……』

『ギュイィィ……』

『ジジジジ……』


 ああぁぁ……ホント気持ち悪い……もう前すら見たくない。辛うじて前を走るエルフだけを視界に入れることで、何とか気絶せずに済んでいるが……慣れていそうなフォリアはいいとして、セレノは大丈夫なのか……?


「レーブ兄、素材取らないんですか?あれとか高そうですが……」

「……、素材は、後でも取れる。それより、急がないと」

「あっそうでした。すみません」


 なんだよ、すごく余裕そうじゃん。虫が無理なのは男の俺だけか……情けない話だ。


「あっもうここだ。大分近づいてきたよ!止まってないからかなりのペースで来てる!」

「おお……それは良かった」

「あとちょっと、頑張ろう!」


 俺には同じような風景が一生続いているようにしか見えないが……これ、エルフの案内無しで森に入ったら、俺確実にぶっ倒れてたな……危なかった。



 それから俺は無言で魔法を飛ばしまくり、気持ち悪い魔物どもを流れ作業のように眠らせ続けた。そして漸く……


「着いたー!」

「……お、おお……助かった……」

「助かった?何から?」

「いや……足、疲れたから……」

「私もです……こんなに走り続けることなかったので……」

「そっかー、私はまだいける!先に話してくるね!」

「おう……ちょっと休んでるわ」

「はーい」


 まさか一日中走り続けるとは思わなかった。でも、あんな魔物がうじゃうじゃいる中で一晩明かすというのも……寒気がする。それなら足が疲れるだけのこっちの方がいいと思える。



「おい、本当に人間がいるぞ……」

「髪の色が違う……」


 少しして、フォリアがまだ倒れていないエルフを連れてくる。……って、何驚いてんだよ。あんたらが人間に頼ろうとしたんじゃないのか。


「……すみません、体力がないもので……私は人間のレーブというものです。フォリアさんに事情を聞き、何とか助けられないかと思い、駆け付けた次第です」

「……セレノです」


 二人してペコッとお辞儀をする。警戒されるのは分かっていることなので、出来る限り向こうの指示に従う形で動くつもりだ。


「おお、それは……フォリア、大丈夫なのか……?」

「大丈夫だよ、あの子が私の傷を治してくれたんだ。だから、ここに戻ってくることが出来たの」

「では、街に行くことは出来たんだな?」

「街は……近くになかったから行けなかった。でも、森を出たところで運よくこの二人に見つけてもらったの」

「ほう……何か、されなかったのか?」

「何かって?」


 おい失礼だな、俺はそこまでクズじゃない。そっちから懇願されたって、怪我をしていたような子にそんな目を向けることはない。……いや、怪我をしていなくたって、そんな目は向けないが。


「……そうだな、こう、体を……」

「ああ、ご飯はもらったよ!あんな味のお肉、食べたことなかったなぁ」


 ほらもう分かっただろ、いい加減にしろ。


「……。君達は、悪いやつではないんだな?」

「……それ、私達に聞くんですか?……大丈夫です、言われたことだけをするつもりなので。妙な真似をしたら叩き出してくれていいですよ」

「……そうか、分かった。……ついてこい」


 何とか、用心深い女エルフを納得させることが出来た。


「レーブ兄……」

「……これくらいは言わないとな。郷に入っては郷に従えってやつだ」

「……どういう意味ですか?」

「あ……その場所のルールに従おう、ってこと」

「なるほど……」


 コソコソそんな話をしながら、エルフ達の後をついていく。


「ここだ、我等の家族は……家族を、助けてくれ……」


 一つの大木の前に案内された。入り口と思わしきところが葉っぱのついた木の枝で隠されている。中が空洞になっているらしい。


「失礼します……っ、これは……」



 部屋の中には、息の荒い者、もう呼吸するのもギリギリな者……そんなエルフ達が、所狭しと横たわっていた。

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