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055 疑問は発想

「普段からやってること……ねぇ」

「分かりそうで分からないですね……」

「だよなぁ」


 ギルドを出てから、俺達が普段からやっていることを思い出してみたが、これか?と思えるものがなかった。

 というのも、いつもの討伐依頼の流れが、睡眠魔法で眠らせて、風魔法でパパッと終わらせる、という感じなので、これで十分効率化出来ているつもりだった。そこからさらに効率化出来ると言われても、これ以上にどうすればいいかなんて分からない。


「ヒントをもらっても分からないものなんですかね……」

「うーん、やっぱりそう簡単にはいかないんだろうな。……止めだ止め、今日はもう考えないようにしよう」

「……そうですね、折角のお休み、ちゃんと休みましょう」


 この二年間、ほぼ休まずにきていた為、さすがにこのタイミングでしっかり休暇を取ることにしていた。なのにずっと研究の内容を考えていては、それは休暇と言えるのだろうか。答えはノーだ。



「今日の宿は、久しぶりに炎魔法のところにするか」

「はい!料理、本当においしいんですよね」


 魔法の属性によってテーマが変わるこの国の宿。炎魔法の宿では、その炎を料理に使う。繊細な温度管理を自らの魔法で行う事によって細かく味を追求できるため、美味しい料理になる、とかなんとか。実際美味いので本当なんだろう。


 早めに宿に入ってだらだらごろごろして夜になるのを待ち、食堂へ降りる。するとそこは既に美味いことを確信できる匂いに包まれており、無遠慮に腹を刺激してくる。

 さらには料理しているところも席から見える為、嗅覚だけでなく視覚も掴んでくる。


「俺も炎魔法があれば、料理上手くなれるのかな」

「どうでしょうね、この国の人が特別上手なのかもしれないですが」

「……たしかにな。普通の冒険者が魔法で料理するなんて聞いたことない」


 片手でフライパンを握り、片手で炎を出す。具材に直接炎を当てることで、火の通し具合とか水分量を調節するという、特殊な調理を可能にしている。そんな芸当、元々上手くないと出来ない。


「すごいな。……でも、ずっと魔法使ってて疲れないんだろうか。魔力枯渇起こしたらまずくないか?」

「あれ、技として使ってる訳ではなさそうなので、大丈夫だと思いますよ」

「え、そんなことできるの?」

「はい、微量なら出せますよ。……むーん……ほらっ」


 セレノが俺に手のひらを向けると、少しだけ風が吹いた。わー涼しい、じゃなくて。


「ああ、前にやってたなそういえば。それだと魔力あんまり消費しないんだ?」

「そうです、微量なのでその分の魔力しか消費しないみたいです。効率がいいですよね」

「へぇーそうなんだ……ん?効率がいい?」


 その呟きで、俺とセレノは顔を見合わせる。


「「あーーーー!!」」


 俺達は思わず声を上げたが……周りに変な目で見られてしまった。恥ずかしい。


 

ーーーーー



 効率的な魔法の使い方……その答えらしき方法に気付いた俺達は、その後美味い料理をまともに堪能できず、気になって夜も碌に休めずに朝を迎えた。……まあ俺は元々だが。


「もっと休まなくていいの?寝られなかったみたいだけど」

「色々試したいので……レーブ兄は休んでいてもいいですよ?」

「俺は、いつものことで慣れてるから……まあ試したいのは俺も同じなんだけど」


 そう言い合いながら今俺達が歩いているのは、街の外。この二年間、研究の中で試したいことがあれば、適当に依頼を受けて魔物相手に魔法を使うということをやってきたので、今回もそんな流れで試すつもりだ。


「セレノはどんなことを試そうと思ってるんだ?」

「私、一回一回集中しないと微風出せないんですよね……宿の料理人さんみたいに思ったタイミングでさっと出せるようになりたいので、まずはその練習をしようと思って」

「なるほどね……俺はそもそも微量に出すやり方から知らないんだけど……」

「あ……そんなに難しくないですよ。魔法を出す時の感じをイメージして、絞り出すようにすればできます、たぶん」


 意外とそんなもんなのか……いまいちよく分からんが。


「ちょっとやってみて?」

「え?はい……むーん……はい!」

「……ほう」


 正直なところ、セレノの可愛さしか伝わらなかったが……まあ自分でやってみないことには分からないだろう。


「よし。むーん……」


 魔法を出す時のイメージ、魔法を出す時のイメージ……


「……ふふっ」


 ……。魔法を出す時のイメージ……


「……ふふふっ」


「……ちょっと、笑わないでもらっていい?」


 集中しているのに、こそこそ笑うんじゃないよ。滅茶苦茶気になるじゃん。


「いえ……レーブ兄が可愛かったので、つい」

「なっ……そりゃぁ、そう見えてもしょうがない。だってセレノがやってて可愛かったんだから」

「え!?」


 俺の返しに顔を赤くするセレノ。せっかく俺が言わずに我慢したのに、そんなこと言われたら反撃するしかない。……くそ、結局ピンク色の空気を出してしまった。


「……笑われると集中できなくなるから、ちょっと離れて練習しよう」

「……はい……」


 そのままの意味と、俺の鼓動が早くなっているのを隠す為に距離を取る。……よし、冷静になった。


「じゃあ、再開……むーん……」


 魔法を使った時に体の中で動いているように感じるもの……恐らく魔力を感覚で探る。……たぶんこれだ。で、これを絞り出す感じで……手のひらを上にして、体から腕、腕から手のひらに移動させて……


「……ほい!」


 ……何も起きない。


「なんでだよ……絶対いけたと思ったんだけどな……いや、待てよ」


 随分と前のことだが、自分自身に睡眠魔法をかけようとした時は何も起こらなかった。それは恐らく俺に睡眠に対する耐性があったからで……でもセレノとか、魔物に対してかけようとした時は光が出た。

 支援魔法は、かける対象を決めないとそもそも発動しないのではないか?それも、対象に効果があることを前提に。


 何回か練習して、今日のセレノくらいのスピードで出せるイメージを掴んだところで、セレノに近づく。


「セレノ」

「はい……あれ、もう出来るようになったんですか?」

「うん、見てて……むーん……ほい!」


 俺の手のひらからは……光が出現した。ほらな。……と思いつつ、嬉しさで口角が上がる。


「おお、すごいですね!……って、眠気が……」

「おっと」


 ふらつくセレノを支える。


「……すごく眠いです……でも、意識がなくなる程では、ないですね……」

「おお……成功だな。そのまま寝てもいいよ」

「……はい、じゃあ……」



 セレノには夜寝られていなかった分、今寝てもらった。……眠気を与える、か。後はそれで寝た時にいい夢を見るかどうかだな。

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