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049 実力は十分

ここから刀剣王国組の話になります。五話分あります。

「さて、レーブ達と別れたはいいけど、うまくやっていけるだろうか?」

「どうだろう、まあ頑張るしかないんじゃないかな?」

「うーん……そうだね、僕達なら何とかなるか。やることは同じだからね」


 刀剣王国行の馬車でそんな話をしているのは、黒髪の青年と、猫の特徴を持った橙色の髪の少女。レーブが不安に思っていたことは、本人達も気にしてはいたようだが……何とかなるの精神ですぐに考えるのをやめていた。

 こういう時は大体何とかならないのだが、この二人なら本当に大丈夫そうだ。何故ならそれは、彼等が十分な実力を持っているから。


 因みに今現在二人は並んで馬車に乗っているが、他に乗り合わせた冒険者達は二人を離れたところから注目している。その理由は、最初にこの馬車を襲おうと現れた魔物を、この二人が瞬殺してしまったからだ。

 青年は剣から衝撃波のようなものを出して吹き飛ばし、少女は目にも留まらぬ速さで敵を攪乱し、急所に一撃を入れる。それを余りにも自然に迷いなくやってのける姿に、冒険者達は尊敬の眼差しを向けていた。


「ちょっと居心地悪いな……」

「なんでこんなに見られてるんだろうね」

「さあ。……外に出よう」

「うん」


 鈍感な青年も、沢山の目がこちらに向いていることには流石に違和感を覚えたようだ。


「お、またやってくれるかもしれないぞ!」

「よし、少しでも勉強するんだ!」


 そんな風に言われているとは知らず、再び外に出て、襲い来る魔物をひたすら狩る。こうしている時の方が人目を感じずに済むようだ。それがさらに注目を浴びることであっても。


「「かっこいい……」」


 冒険者からは男女問わず、二人に対してそんな呟きが零れる。果たして勉強する気があるのやら。

 ……いや、はじめから自分にはできないということを皆気づいてしまっているのだろう。それだけ、二人の実力、戦闘センスはずば抜けている。



 他の冒険者が動かないせいで、二人だけで魔物を討伐し続け、一段落したところ。


「失礼、お名前はなんとおっしゃるのでしょうか?」

「え?」


 ついに声をかけてきたのは、腰に剣を下げた、壮年の男性。


「あなた方の戦いぶりに感動しまして……」

「そうなんだ、ありがとう。僕はナツキ」

「私はミーナだよ」

「ナツキ様とミーナ様ですね」


 男性は妙に礼儀正しく接してくる。冒険者ではないのか。


「様なんて大袈裟だよ」

「いえ、そんなことはありません。是非ともうちの冒険者ギルドに来ていただきたいですね」

「「……うちの?」」


 聞くと彼は……刀剣王国で活躍できる人材を他国から探す、冒険者ギルドのスカウトマンだった。



ーーーーー



 刀剣王国。正式名称グラディ王国は、その名の通り剣を得物とする冒険者達の聖地、そして剣の生産、加工を文化として行なってきた国だ。

 国の近隣の山岳地帯にはドワーフの里が存在しており、刀剣王国からは物資と冒険者の派遣を、ドワーフの里からは鉱石類と労働力(武具の生産が主)を提供することで共益関係となっている。

 刀剣とは言いつつ、もちろん他の武器も生産はされている。だがそれらは数少ないドワーフ達が売れるからと言って作っているだけであり、国の鍛冶職人は剣以外を作ろうとはしない。あくまで剣が中心の国なのだ。



「さあさあ、此方です」

「はあ……」


 刀剣王国に着いてもしっかりとマークされていた二人は、スカウトマンのエイジについて冒険者ギルドへと向かっていた。


「ナツキ、どうするの?」

「ん、まあとりあえずついて行けばいいんじゃないかな?」

「そう?」


 二人はまだ彼を信用したわけではないが、特に他に行くあてもなかった。後ろから彼にスカウトされてきた剣士達がついてきている為、本当であるというのは疑いようがない。ひとまずついていくことに問題はないとしたようだ。



「マスター、只今帰還いたしました」

「ご苦労、エイジ。おや、中々多いのではないか?」


 マスターと呼ばれて奥から出てきたのは、長い銀髪が映える、長身の女。腰には幾つもの剣が下げられており、長さ、大きさ、形が全て異なっている。それぞれを使い分けて戦うのだろうか。


「そうですね。運が良かったのか多くの優秀な方に出会うことができまして」

「そうか、それは良かった。……うん?」


 女は黒髪の青年に目を留める。


「僕がどうかしましたか?」

「……いや、なんでもない、失礼した。……自己紹介をしておく。私は刀剣王国冒険者ギルドマスター、トモエだ。ご足労頂き感謝する」


 トモエと名乗る女は青年に対して意味ありげな視線を向けたが、そのまま何事もなかったように話を始めた。


「聞いている者もいるだろうが、今回募集をさせてもらったのは、ドワーフの里付近に出没したある魔物の手によって本王国の冒険者に多大な被害が出ており、それの援護に向かってもらいたいからだ。私が行けば恐らく解決は出来るのだが、それだとギルドに残る者の負担が大きくなってしまう。実際動ける者も少ない為、他を頼る他なかったのだ」

「「……ある魔物って?」」


 集められた冒険者は口を揃えてそう言った。多大な被害が出るほどの魔物、それが何なのかを聞かなくては、話は進まない。


「その魔物は……」


 皆息を呑む。


「……ワイバーンだ」

「なっワイバーンだと!?そんなこと聞いていない!俺には無理だ!」

「俺はまだ銀級だぞ?」

「俺は見たこともない!」


 冒険者達は途端に狼狽え出した。ワイバーンとは、ドラゴンをはじめとする竜族の中でも最も下に位置する小型の魔物だ。

 とは言っても竜族ではある為、硬い鱗、素早い動き、多彩な攻撃と危険度は並の魔物を大きく上回り、金級適性となっている。銀級の冒険者では力量が足りないのだ。


「悪いが俺は参加できない」

「俺も降りさせてもらいます。先に言って欲しかったですね」

「俺も降りるぞ」


 皆参加しないことを表明する。仕方ない事ではあるが……これではスカウトしてきた意味がなくなってしまう。


「倒さなくてもいいんです、援護をしてもらえれば……」

「流石に魔法を使える奴を呼んできた方がいいと思うぜ」

「うっ……」


 エイジの説得も空しく、冒険者達は次々にギルドを出ていった。刀剣王国の悪いところは、剣が全てと思うあまり、それ以外の分野の協力すら得ようとしないことだった。実際、空を飛ぶことができるワイバーンに対して剣士を派遣していては、被害が出るのは必然と言えるだろう。それが分かっている他国の冒険者の判断は、正当なものなのだ。

 そしてエイジの目線の先、まだこの場に残っていたのは……黒髪の青年と、猫耳の少女だけだった。


「貴方達は……」


 青年は少女に目をやり、少女が頷いたところで、口を開く。


「僕等も銀級なんですが、行ってもいいですか?」

「……え、銀級?あれだけの実力があって銀級なんですか?」

「あれだけの実力、とは?」


 エイジの驚きに、トモエが食いつく。


「ああ、この方達なんですが――」

「――なんと、それは……期待できるな」


 エイジの説明を聞いて、トモエは顎に手を当て、何度か頷く。


「頼めるか?勿論二人だけで行かせることはない」

「分かりました、お願いします」



 そうして、二人はワイバーン討伐の援護に向かうことを決めた。

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