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040 作戦と力量

「じゃあ、作戦を立てよう」

「正面突破でいいんじゃないの?」

「いや、ちょっとは考えよう」


 一応俺がこのパーティのリーダーである為、皆の統率を取っていかなければならない。ナツキもミーナも相手を舐めくさっているようなので、このまま無策で突っ込んでは、撤退すべき時に撤退できなくなるかもしれない。それだけは絶対に避けなければならない。

 とはいっても、実際ナツキとミーナの戦闘スタイルは正面突破一択なので、前にいるやつから地道になぎ倒していくのが早い気もするが……それだとゴブリンメイジの魔法が一方的に飛んできて気を取られることになる。ならそれの迎撃を……そういえば。


「……セレノって、今どれくらい風魔法使えるんだ?」

「風魔法ですか?」


 前にヘンデルさんの教会で風魔法を使っていたのは見ていたが、本格的に戦闘で使っているのは見たことがなかった。

 そもそもうちのパーティは、魔法使い的なポジションの人が居ないせいで、遠距離の敵でも一瞬で距離を詰めて瞬殺、というごり押し戦法を取ってきている。本当なら俺が使えればよかったんだが……このパーティに攻撃魔法、いわゆる遠距離攻撃ができるのは、セレノしかいないのだ。


「……やっと聞いてくれた」

「ん?」

「いやっ、……一応<風刃(ウィンドエッジ)>は使えます。お父さんに教えてもらったので」

「いつの間に。すごいな」


 なんかぼそっと言った気がするが、今は気にしないことにして……

セレノは俺が知らない間に、ロランさんから風魔法の特訓を受けていたらしい。なんで俺に教えてくれなかったのかは疑問だが……使えるなら、何とかなるかもしれない。


「それ使って、ゴブリンメイジを攻撃することはできる?倒せる倒せないは別として」

「多分できます」

「よし、なら――」


 思いついたことを、皆に伝える。



ーーーーー



 とりあえず簡単に作戦を決めたので、いよいよ突入だ。


「よし、気張っていこう」

「おう!」「うん!」「はい!」

「いくぞ!」


 ナツキのミーナが、いつも通り前線に駆け出していく。それを見たゴブリン達は……こちらに走ってきたりせず、集まって陣形を取り出した。俺達の存在がどんどん奥に知れ渡り、ゴブリン達がじわりじわりと出てくる。


「おらあああぁぁぁ!!」

『『『ギャアアア』』』


 ナツキの横薙ぎは衝撃波を出しているかのように、複数のゴブリンを吹き飛ばした。最近は剣道の動きを捨てて、威力を出すためにがっつり踏み込んで剣を振っている。そこまでしなくたってかなりの威力なんだから、そりゃ吹っ飛びもする。


「たぁ!てい!」

『ギャア』『ギャア』


 ミーナもしっかりゴブリンを倒している。俺が考えた作戦の一つが、やろうと思えば広範囲で高威力の攻撃ができるナツキが大部分を倒して、残ったのをミーナが確実に討つというものだ。まずは多すぎるゴブリンの処理が問題なので、ここはごり押すしかない。


「いっ……」


 ミーナが死角からゴブリンの攻撃を受けた。幾ら速くても、囲まれたら食らってしまうよな……


「ミーナ、下がって!ナツキ、少しの間抑えておいてくれ!セレノ、ミーナの回復を頼む!」

「分かった!」

「任せてくれ!」

「はい!……<治癒(ヒール)>」


 相手に後れを取らないように、素早く指示を出す。


「固まったら、捗っちゃうよ!」


 その間も一人前線で随分と楽しそうに、ナツキは剣を振るっている。それでも攻撃は受けていない。流石だな。



 そんな感じで耐久しながらある程度間引いたところで、次の作戦は……


「<風刃(ウィンドエッジ)>!」

『ギェアッ』


 ゴブリンメイジが見えたら、セレノの風魔法で抑えておいて後で近接組のどっちかが倒す、という流れになっている。

 ……のだが、鋭い風の刃は、ゴブリンメイジの頭をバターのようにすっと落とした。


「……え?」

『『ギ!?』』


 ゴブリン達が驚きで動きを止めているが……セレノ自身も止まっていた。いや、俺も驚きだわ。


「……やるな、セレノ。いっそその調子でメイジを全部倒せるか?」

「……やってみます」


 思わぬダメージソースを得たところで、今度は近接組。


「おらあああぁぁぁ!!」

『ギィ』


 ナツキが左に剣、右に盾を持ったゴブリン、ゴブリンウォーリアに攻撃を仕掛ける……が、ウォーリアは冷静に盾で受け、吹っ飛ばされても受け身を取って着地した。やはりただのゴブリンとは実力は段違いらしい。


「お前、やるな。なら――」


 ナツキは横目でミーナに視線を送ると、再度ウォーリアに攻撃を繰り出す。当然盾で受けられるが、吹っ飛んだ先には……


「てりゃあっ」

『ギィエッ』


 ミーナの正拳突きが置かれていた。なすすべなく背を強打されたウォーリアは、地面に崩れ落ち、絶命する。


「ナイス、ミーナ」

「うん!」


「……手慣れ過ぎだろ」


 いやいや、いつの間にそんなに連携できるようになっていたんだ……そこまでは計画してないんだが。



 皆俺の想定以上に強過ぎて、気づけば数体のゴブリンと、ゴブリンキングだけになっていた。確かにゴブリン達の動きは良いように見えるが……こっちがその数倍上をいっているらしい。


『グギャアアア!!』


「……後は実質あいつだけだね」


 ゴブリンキングの叫びによって、ゴブリン達の目が怯えから怒りに染まったが……ナツキは既に眼中にないようだ。


「ナツキ、やっちゃって」


 ミーナはナツキに近づき、肩に手を置いている。


「何してんだ?」


「<加速(アクセル)>。ん?補助魔法だよ。速くなるやつ」

「え、そんなの使えるのか」

「あれ、言ってなかったっけ」


 だからなんでみんなそんなにハイスペックなんだよ……そしてなんで俺は知らないんだよ……というかそれがあるなら最初から使えばよかったんじゃないか……?


「さて、行けるかな……?」


 そう一言残して、ナツキは消えた。……というより、速過ぎて見えなかった。それは俺以外も同じで、セレノもミーナも、ゴブリン達までも見失っているようだ。


『グ、グギャ……』


 握った右手を前に突き出したゴブリンキングが、そのままひとりでに倒れた。……いや、よく見たら身体中が切り刻まれ、首もしっかりと切断されている。こいつだけはかろうじて見えていたみたいだが、それでもこれだけの傷を、一瞬で……?


「……大したことなかったね」

「……お前がおかしいだけじゃないのか?」


 横のセレノとミーナもコクコクと頷いていて、内心ほっとしたが……まだこっちに来て一か月とそこらだというのに、センスありありなナツキに、俺はもう呆れるしかなかった。



ーーーーー



 残ったただのゴブリン達はミーナが片付け、颯爽と街へ戻った。報告は戦闘に参加できず、偉そうに指示を出しただけの俺が行う。リーダーだから。


「ゴブリンの群れの討滅が終わったので、報告に来ました」

「お疲れ様です。小規模だったんですね、良かったです」

「いや……ゴブリンキングがいましたが……彼が倒しました」


 戦利品を持ったナツキを前に出し、真実を言う。


「どうも」

「え?……ええーー!?ゴブリンキング!?」



 受付の女性が叫んだせいで、俺達はその場にいた冒険者の注目を浴びる羽目になった。……まあ、そうなるわな。

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