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039 労働と試験

 四人のパーティになってから、二か月経ったか経っていないかぐらいの頃。依頼の消化は順調に進んでいた。

 普通なら石級から銅級に上がるまでは三か月かかるのだが、もう討伐依頼のほうは回数を達成している。ミーナとナツキが普通でないのは分かり切っていることだから、今更驚いたりはしない。

 俺とセレノは一か月ぐらいでランクアップしたけれど、それは後二か月分あったものを免除してもらっただけだ。正規ルートで二か月弱は相当ヤバいと思う。


 そして、今日受ける分で雑用依頼の回数は達成、残るは昇格の為の試験だけとなる。この二人なら楽勝だろと俺は全く問題視していない。……受けてないから何をするのかすら知らないが。


 

「はー終わったー!」

「やっと試験が受けられるね」


 戦闘メインの二人には、雑用依頼はつまらないだけのものだったらしい。実際腕が鈍らないように、とかお金は稼がないと、とか理由をつけて規定回数以上に討伐依頼を受けていた。相当つまらなかったのだろう。


 まあそれはさておき、ついに試験が受けられるとなってやる気が漲りだす二人。銅級への昇格試験なんだから、全力なんて出さなくていいんだからな……?


 試験の内容はランダムに決まるらしいが、今回は近くの洞窟を住処にしているゴブリンの群れの討滅、だった。ちょっと大きめの群れだが、焦りさえしなければ何とかなるとのこと。まあ逆に言えば、ここで焦ってしまうようであれば冒険者は厳しいかもね、ということだ。


 とにかく早く行きたそうだったので、明日朝一から出発することにした。今からとか言い出したが、安全第一だから休息はした方がいい。そこは幾ら強かろうが譲ることはできない。



「明日楽しみだなー」

「そんな遠足行くみたいに言わないでくれよ」

「遠足みたいなものでしょ、だってゴブリンじゃん」

「まあそうだけど……油断は禁物って言うだろ」

「油断はしてないよ。もしかしたら強いやつがいるかもしれないし」

「……ならいいけど」


 油断してないならいいんだが……あんまりフラグは立てないでほしい。油断するなと言っているところに、やっぱり気楽に行こうなんて言えないからな。


「じゃあ、今日はもう寝るよ。いつものあれ、お願いします」

「あいよ」


 睡眠魔法を使って、ナツキを眠らせる。初めて使った時にすごく感動されて、毎日使って欲しいと言われた。ナツキの場合夢を見たいというより、気持ちよく眠りたい、が強いようだ。俺は気にしないとは言ったが……ちょっとは遠慮する心を忘れないでほしい。……もしかして俺って面倒くさいやつなのかも?ふとそう思った。




 早朝、あまり美味しくない朝食を取った後、街を出て洞窟に移動した。大して遠くなかったから楽ではあったが、それは魔物も同じなので、街に流れてこないように近場に住み着いた魔物は討滅する。今回はそういう依頼だ。


「よし、さっさと終わらせるか」

「やっちゃおう!」

「……昨日も言ったけど、油断はするなよ」

「分かってるよ」


 意気込む戦闘メイン二人組に注意を促しておく。分かってるよっていうやつ、大体分かってない気がするんだけど……俺の偏見だろうか。


 気を取り直して、洞窟の中へと足を運ぶ。洞窟と言うと、やはりこの世界に来た時のことを思い出す。気が付いたら洞窟の中にいて、ゴブリン達に襲われかけた。何とかはなったが。

 まあこの世界の何の知識もなかった俺でも生還できているし、実力のある四人が揃っているから、はぐれない限り問題はないだろう。


「ん、なんかいるな。倒してくる」

「いや待て」

「なんで?」

「種類と数は見ておいた方がいい。ゴブリンでも群れを作っている場合、面倒なのがいる可能性があるからな」

「なるほど……じゃあそうする」

「ありがとう」


 俺が体験したゴブリンの群れは、ホブゴブリンがいただけで大したことはなかったが、後に調べたらゴブリンメイジという魔法を使うやつとか、ゴブリンウォーリアという戦闘特化のやつとかがいるらしい。大きい群れになれば、ゴブリンキングという優れた統率力を持つのもたまに現れるのだとか。

 そういうのが出たら、もっと上のランクの冒険者の出番となる為、引き返して報告する流れになる。この場合、その報告が本当なら、正しい動きができたということで試験は合格になる。


「何がいるか見えるか?」

「うーん、暗くて見えないな」

「……見えないです」


 俺が見えなくて誰かを頼ろうしたら、誰も見えなかった。どうしたものか……


「私、見えるよ」

「ん、ミーナは見えるのか」

「うん」


 瞳孔が大きく開いた目で、ミーナは頷いた。なるほど、見た目だけではなく、しっかり猫の特徴を持っているらしい。ミーナの頼れる部分を新たに知り、俺の心はまた密かに痛む。


「……じゃあ、どんなやつがいるか教えてくれ」


 しかし今は仕事中なので、自分のことよりパーティを優先する。


「うんとね……普通のがたくさんと、杖みたいな棒を持ったやつが数体、剣と盾を持ったやつが数体、後……一番奥に大きいやつがいる」

「……全部じゃねーか」


 恐れていたことが起こってしまった。……昨日ナツキが立てたフラグの回収だ。こうなった以上、この依頼は俺達の仕事ではなくなった。……まあ何もしないでいいから楽でいいな。


「じゃあ、どうやって攻略しようか」

「いや、倒さなくていい。撤退しよう」

「え、ここまで来たのに帰るのか?」

「うん、ランク的に危険だからな。そういう取り決めだ」

「えー……」


 やる気満々だったところに目に見えて落ち込むナツキ。倒すのは苦手とか言っていたやつは何処に行ったのだろうか。……いや、言っていたのは最初だけで、後は狂ったように倒しまくってたな。今回も楽しみにしていたぐらいだし。


「一回試してみようよ。無理そうなら諦めるから」

「そうは言ってもな……」

「私も試してみたい!」

「……ミーナもか」

「私は、危険だと思います……」


 セレノは俺と同じ撤退派についてくれるみたいだ。だけど、このパーティの主力って、ミーナとナツキなんだよな……普段なにもしていない組が危険って言っても、抑えが効くとは思えない。


「僕達の実力は知ってるだろ?あれぐらいはいけると思うんだけど」

「そうだよ!」


 ……慢心。俺にはそんな風に見えた。確かに二人は強い。だけど、ここまでの数、相手にできるのか……?この世界で負けるというのは、すなわち次はないということだからな。俺は戦う必要もないところで命を懸けてほしくはない。

 でもまあ確かにナツキが言うように、無理そうならその時点で撤退することはできる。ただそうすればゴブリン達は警戒態勢に入るので、次にやってきた高ランクの冒険者が苦戦する可能性が高まる。

 安全のためになんとか諦めてくれないかと二人を見たが……諦めてくれそうにないので、大きめの溜息を吐いた後、俺はこう告げる。


「仕方ないな。やるからには全力で叩き潰すぞ?」

「もちろんだ!」

「やった!」

「……大丈夫ですかね……」



 困ったら最悪俺の魔法がある。心配してくれたセレノには申し訳ないが……こいつらを信じてみよう。

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